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一般店舗とは質感の違う歓迎の空気。進化する「福祉系カフェ」

さまざまな福祉活動に関わるジャーナリストの引地達也さんが、その活動の中で感じた課題や、得られた気づきについて伝えてくれる、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』。今回は、自身が編集長を務める季刊情報誌『ケアメディア』の特集で取り上げる「福祉系カフェの進化」を伝えています。さらに、実際に取材で訪れた、味の面でもオススメできる2店舗を特集号に先駆けて紹介してくれました。

進化する福祉系カフェとの関わりは「幸せ」の時間也

私が編集長を務める季刊『ケアメディア』は新春号の特集として「福祉系カフェの進化」と題して、各地で新たな展開を見せる福祉事業サービスで運営するカフェやレストランを紹介する予定だ。

私自身、日ごろから各地で訪れる機会の多い福祉系カフェだが、基本的に地域のコミュニティにしたい思いが強く、そこで働く支援者も利用者も客を迎えてくれるから気持ちがいい。この「歓迎すること」は生業を成り立たせているサービスの一部でもあるのだが、一般店舗とは違い、その施設=店の在り方として、人を快く迎え、そしてつながっていく、という考えのもとに発せられた歓迎の空気なので、質感は少し違う。

最近ではこの空気だけではなく、カフェで提供する商品が、本物の味を求めて高い品質なものも少なくない。今回の特集は紙幅の関係で数か所の紹介だが、各地での進化はめざましいようで、継続して各地で訪問し紹介したいと考えている。

今後、ケアメディアで紹介する福祉系カフェは基本的に福祉サービス事業である就労継続支援制度や自立訓練制度を使ってのものとしているが、企業の特例子会社として運営する例や、レストラン業務の一部を福祉サービス事業と協力して機能的に関わる例もあり、その姿も多様化している。これら福祉サービス以外の展開はまた別の機会に紹介したい。

福祉サービスの中でも、特別支援学校が学校の中でカフェを運営し地域の方々に開放し、来訪していただいているケースもあれば、一般大学の中で出店して運営している就労継続支援B型事業所の例もある。そして、味や品質、店の雰囲気で勝負するカフェやレストラン、地域の特産品を活かしたメニューが喜ばれる地域おこし型も少なくない。

最近私が訪れたのは、福祉系喫茶の発展を後押しする団体、全国喫茶コーナー交流会の兼松忠雄・事務局長から「ここは本物」と教えていただいた数か所の中の2か所だ。

一か所目は神奈川県藤沢市の「ミュージック・オブ・マインド」。そば粉を使った手作りのガレットやパスタ生地から手作りした手打ちパスタなどのカフェメニューに定評があり、利用者がこれらの料理を作る「職人」として役割を担う。

このメニューに合わせるコーヒーは鎌倉市の鎌倉小町通りにある20年の老舗「カフェ・ロマーノ」の直伝。ネルドリップで丁寧に落とした一杯は味わい深い。紅茶もダージリンやアールグレイのほか、白桃や巨峰などのフレーバーティー、季節限定のお楽しみの紅茶もある。

そして、最大の特徴は「ライブカフェ」であること。つまり、ライブ活動が中心であり、カフェはコミュニティとしての場所づくりのコンテンツとなる。私がガレットを食し、デザートの和風パフェを食べている時に、ライブが始められ利用者が横二列に並び、ピアノとドラム、パーカッションとギターの演奏とともにカバー曲とオリジナル曲2曲を演奏して盛り上がる。

ピアノやギター、歌のリードなど演奏の脇を固める支援者はプロの演奏家でもあり、それもまた本物だ。外でのライブも定期的に開催しており、利用者もタレント揃いで歌い手を楽しんでいる様子が幸せな気分になる。

東京都葛飾区の「ヴィゼ・ポレール」はパンを中心にしたメニューが特徴的だが、福祉系カフェといえば、食べやすい柔らかいパンと菓子パンを提供するのがこれまでの通例だったが、ここの商品の主力はヨーロッパで食べているような固めのハード系のパン。本物の素材と製法でしか出てこない味わい深さが本物だ。

東京都世田谷区の有名店「シニフィアン シニフィエ」の志賀勝栄シェフが技術指導を行うから品質の追究は福祉系を超えているかもしれない。このパンによく合うコーヒーは、コーヒー専門店「堀口珈琲」(本社・東京都世田谷区)が支援している。この組み合わせのパンのプレートはヨーロッパにいるような気分。

この噛めば噛むほどうまみが増すパンにうなりながら、これは是非多くの人に味わってほしいと思いつつも、福祉事業所であることから土日祝日は休み。営業は午前と午後の時間で、昼食時を除けば飲食店の「アイドルタイム」にしか営業できないとのこと。是非、この時間に合わせて、足を運んでもらい、素敵な福祉系カフェに出会い、幸せな時間を過ごしてほしいと思う。

image by: Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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