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ラノベ風ゲームも?再選を目指す台湾・蔡英文総統のユニークな秘策

いよいよ来年1月11日に迫った台湾総統選。一時は劣勢が伝えられていた蔡英文現総統ですが、香港でのデモの長期化で状況が一変、当選確実との声も上がっています。台湾出身の評論家・黄文雄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、アドベンチャーゲームをリリースするなど次々と新機軸を打ち出す蔡陣営の動き、そして相も変わらず展開される中国の揺さぶり等、選挙直前の「台湾の今」を紹介しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年11月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】中国の懐柔策をはねつける蔡英文

これが台湾の選挙! 蔡英文総統、再選目指しラノベ風ゲームになる『ええっ! 台湾高校3年2組の私が突然異世界に迷い込んで総統に出会うなんて!?』

台湾の総統選挙活動がそろそろ本格的になってきました。呂秀蓮元副総統が出馬を断念したことで、蔡英文と韓国瑜の一騎打ちだとマスコミは騒いでいます。

台湾・呂元副総統が総統選への出馬断念

民進党の党内予備選で戦った頼清徳も、蔡英文の応援に回り、蔡英文再選へ向けて協力体制にあることをアピールしています。

蔡総統と頼氏がそろって選挙活動 党内予備選以来初/台湾

中国からの横やりもあの手この手で登場しています。最近も、台湾人向けの様々な優遇策を提示して台湾人を懐柔し、中国派支持に結び付けようとしていました。優遇策についての詳細は、以下の報道をご参照下さい。

優遇策は26項目からなり、さまざまな分野で中国の企業や個人と「同等」の待遇を受けられるようにするというもの。台湾の企業に対しては、次世代通信規格「5G」の研究開発や通信システム建設への参入、航空業への投資などを認める。個人では、不動産購入などで中国人と同じ待遇が享受できるとされた。

 

個人については、「台湾同胞は中華人民共和国の在外公館で領事における保護や支援を受けることができ、渡航文書の申請も可能となる」と明記された項目もある。

中国の台湾向け優遇策、総統府「選挙干渉」強く警戒

しかし、これに対して台湾の外交部は、「中華民国台湾は主権国家であり、領事権は中国と無関係だと言明。中国政府が代わって行使する必要はないとの立場を示した」、とのことです。

こうして、中国からの余計なお世話をはねつける一方で、国際社会へのアピールも忘れていません。その方法として、様々な新しいことにチャレンジしています。例えば、外国人観光客を総統府台北市に1泊招待するイベントの開催です。これは、外国人のネット上の有名人を対象にしたイベントです。当選した人は、総統府に宿泊した様子のオリジナル動画を編集して、自身のSNSで流すことが参加の条件となっています。

すでに第一回目の当選者は発表されており、その中には台湾在住の日本人ブロガー石井三紀子さんも含まれています。石井さんは、すでにミッションである総統府宿泊動画を自身のブログでアップしています。第二回目の応募も準備中とのこと。民間の力を借りて総統府をアピールしようという意図のイベントです。

さらに、新しい選挙戦の方法のひとつとして、アドベンチャーゲームをリリースしました。日本のマスメディアでは、「これが台湾の選挙戦だ」などというタイトルで報道されています。まさに、新しい時代の選挙戦という感じです。

ゲームのタイトルは『什麼!台灣高中三年二班的我竟然掉入了異世界而且還遇見了總統!?』。日本語にすると『ええっ!台湾高校3年2組の私が突然異世界に迷い込んで総統に出会うなんて!?』。

ストーリーは、『台湾高校3年2組の生徒である主人公が校外学習で台湾総統府を訪れた際、ひょんなことから大冒険に巻き込まれていくというもの。

これが台湾の選挙! 蔡英文総統、再選目指しラノベ風ゲームになる『ええっ! 台湾高校3年2組の私が突然異世界に迷い込んで総統に出会うなんて!?』

このゲームは、携帯アプリのLINEの『小英日常』上でリリースされています。すでにリリースしているので、興味のある方はぜひお試し下さい。物語に出てくる主人公のキャラクターは、メガネをかけたおかっぱ頭の少女。どう見ても蔡英文をモデルにしています。物語に登場してくる猫は、蔡英文が飼っている猫『想想』がモデルだそうです。女子高校生の目を通して、台湾総統府を舞台に台湾の民主主義を知ろうというのが、このゲームの目的です。

さらに、蔡英文陣営では、台湾産の食材を使ったレシピ集や、外交や国防に関する英語が学べるコンテンツを公開しているとも報道されています。

携帯ゲームは台湾内の若者に向けたものです。政治をもっと身近に感じてもらうための手法でしょう。また、蔡総統が発信するコメントでは、英語や日本語がよく使われています。台湾は国際社会の一員であることの主張です。

中国が、台湾の蔡英文政権は「外国の助けを借りて自らの地位を高め、駒になることに甘んじている」と批判したことを受け、「中国の視野は狭い」と非難したことがニュースになりました。蔡総統は、「台湾は元々国際化を目指していて世界の全ての人々と友人になろうとしている」とも発言しています。

中国が民進党政権批判 蔡総統「視野が狭い」/台湾

こうした発言を見ても、蔡英文総統にとって重要なのは台中関係ではなく国際社会の中での台湾の位置づけだということがよくわかります。日本でも、マスメディアはよく来年の選挙は台湾派と中国派の闘いだと言っていますがそれは間違っています。蔡英文は台湾派ではなく、国際派です。蔡英文政権のミッションは、これからの中国を含めた世界各国と台湾との良好な関係を築くことです。中国との関係のありようで台湾の命運が左右される時代はとっくに終わっているのです。

夏休みの時点で、台湾から来た友人のベテラン記者に選挙情勢を聞いたところ、蔡総統の再選は難しいという見立てでした。しかし、香港デモの長期化で情勢は変わり、11月になってから関係者の意見を聞いてみたところ、蔡英文は当確だろうとの見立てに変わりました。逆に韓国瑜陣営のほうが苦戦しているようです。香港デモの長期化は確実に台湾に大きな影響を及ぼしています。

国民党陣営は、相変わらずカネの力で選挙を動かすという古臭い作戦しかできないようです。国民党候補が当選したら、すべての大学生を外国に留学させると公言しているわりには、財源については明言しない。こうした公約を乱発している時点で、国民党の迷走ぶりがよくわかります。

2000年に総統選挙が行われた際には、中国から恫喝の数々が寄せられました。「陳水扁が当選したら即戦争だ」「人民解放軍が南部(民進党の支援地域)から上陸するぞ」「中性子爆弾を落とす」などです。中国の言う通りにしないとひどい目にあうぞという恫喝は、日本政府には効果的かもしれませんが、台湾人はあまりに言われすぎて慣れてしまいました

しかし、「中国人が怒ると世界が震える」という見方もあるので、見くびることはできません。そういう意味でも、2020年の選挙は「中国の核心的利益vs人類の普遍的価値」の闘いだとも言われています。世界はこれを第三者として傍観することはできません。

image by: 蔡英文 Tsai Ing-wen - Home | Facebook

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年11月6日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。

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