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あおり、反社、電凸、カスハラ…新語BEST10は社会の「負ワード」

株式会社三省堂が、「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2019』」選考発表会を実施し、2019年を代表・象徴する新語ベスト10を発表しました。

「今年の新語」とは、あくまで「今年特に広まったと感じられる新語」ということで、必ずしも「今年生まれたことば」ではありません。その中から、特定のジャンルやコミュニティーに偏らないよう、使用者層や使用域の広がりと使用頻度の高さを考慮しつつ、来年以降も使われてゆくであろう日本語を、辞書を編むエキスパートが慎重に選定。つまり、辞書に載ってもおかしくない新語をバランス良く認定するのが「今年の新語」です。

ベスト10に選出されたことばには、実際の編者が腕をふるって国語辞典としての言葉の解説(語釈)が書かれます。今回は、この新語ベスト10に対する辞書編集部の解説(語釈)を紹介。

シャープな語釈でことばの本質をとらえる『新明解国語辞典』、シンプルな語釈で要するに何かがわかる『三省堂国語辞典』、高校生の自習を強力に支援する『三省堂現代新国語辞典』、いまの日本語を映し出す[国語]+[百科]辞典の『大辞林』。それぞれの編集方針で異なる語釈の切り口と面白さも見どころです。

大賞:「―ペイ」

ペイ (造語)〔←payment〕スマートフォンにインストールしたアプリを使い、キャッシュレスで支払いを行うサービス。経済産業省が進めようとしているキャッシュレス決済に伴い、さまざまな支払方法が広まっている。キャッシュバックキャンペーンやポイント還元、軽減税率などを有利にする方法として用いられている。〔消費税の一〇パーセントへの引き上げに際し、現金を使用しないことで、増税の実感を少しでも減らすための方法として広めた仕組みとも考えられる〕

『新明解国語辞典』編集部執筆

ペイ〔pay〕[一] (名)報酬(ホウシュウ)。賃金。「―は八千円だ」[二](名・自他サ)①割に あうこと。もうかること。「―しない仕事」②しはらうこと。[三](造語)〔—ペイ〕スマートフォン決済の名前に使う ことば。

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生執筆

ペイ〈造語〉[←payment]「ペイメント」の略。現金を用いない、スマートフォンなどによる電子マネー決済。[「…ペイ」のように、固有の電子決済名として用いられることが多い]

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生執筆

ペイ [1]〔ペイメントの略〕他の語に付いて、電子決済のサービス名称を作る語。「ペイ―」「グーグル―」〔特に、近年広がったモバイル決済サービスで多く使われる〕

『大辞林』編集部執筆

2位:にわか

にわか[(×俄か)]ニハカ[一](形動ダ)急に そう〈なる/する〉ようす。〔少し かたい言い方〕「―に空が くもってきた・―な空腹・―雨・―雪・―づくり・―じたて」[二](造語)〔にわか—〕その時だけの。かりそめの。「―勉強・―サッカーファン」[三](名)その時だけ関心を持つ人。関心を持って間もない人。

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生執筆

3位:あおり運転

あおり うんてん[4]アフリ─【〈煽り運転】道路を走行する自動車や自動二輪車などに対し、後方から高速で迫って異常接近したり 前方に急に割り込んだり、また、パッシングするなどして、相手を威嚇し恐怖を与えて、重大な事故を引き起こしかねない悪質・危険な行為のこと。

『新明解国語辞典』編集部執筆

4位:反社

はん しゃ[反社](名)①〔←反社会的勢力〕暴力団など、暴力や詐欺(サギ)といった方法で利益を得ようとする勢力。②←反社会。「―(的)勢力」▽二〇一〇年代に広まった ことば。

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生執筆

5位:サブスク

サブスク〈名〉[←subscription]会員となってある期間分の定額料金を支払えば、その期間内は提供されている製品やサービスをいくら使っても、追加課金がないというシステム。定額制。「―にない楽曲」[音楽配信や動画配信などのサービスをはじめとして、さまざまな分野に広がりつつある。subscriptionのもとの意味は「会費」]

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生執筆

6位:電凸

でん とつ[電:凸](名・自他サ)〔←電話で突撃(トツゲキ)〕団体などに電話して、暴力的に非難したり問いつめたり(した結果をネット上に公開)する迷惑行為(メイワクコウイ)。〔二十一世紀になって広まった ことば〕

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生執筆

7位:カスハラ

カス ハラ [0] 〔カスタマー-ハラスメントの略〕客が接客担当者などに対し、悪質で理不尽な要求や過度のクレームなどで、長時間の苦情の言い立て、暴言や脅迫、謝罪の強要、暴力行為などの迷惑行為を行うこと。

『大辞林』編集部執筆

8位:垂直避難

すいちょく ひなん [5] 【垂直避難】災害時に垂直方向に移動する避難方法。洪水や津波の際に自宅や近隣の建物内で上階に移動することや、地震や火災の際にビルの高層階から地上に移動することなど。離れた場所にある避難所への移動が困難な場合に、安全の確保のために行う。〔離れた場所に移動する「水平避難」に対していう〕

『大辞林』編集部執筆

9位:置き配

おきはい【置き配】〈名〉宅配する際に、品物を対面して渡すのではなく、指定された場所に置くことで配達すること。「―で玄関前を指定する」[再配達による時間や労力の無駄を防ぐために始められた]

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生執筆

10位:ASMR

エー エス エム アール[7]【ASMR】〔←Autonomous Sensory Meridian Response=自律感覚絶頂反応〕 聴覚や視覚への刺激によって、脳に快感を覚える反応・感覚。科学的根拠には乏しいが、多くはその人が経験し気持ちよいと感じられた音を耳にすることによって、気持がやすらいだり 快感をえられたり、また、痛みがやわらいだりするとされる。主にインターネット動画を通してひろまり、タイピング音や咀嚼(ソシヤク)音など様々なものがある。〔聞きようによっては雑音にしか聞こえないものも多い〕

『新明解国語辞典』編集部執筆

各社がなぜか使う「造語成分」の「—ペイ」が大賞

スマホ決済サービスは、日本では5年ほどで急速に一般化しました。「PayPay」「LINE Pay」「楽天ペイ」「Google Pay」などが乱立する中、今年は消費税率引き上げにともなうキャッシュレス・ポイント還元事業により、一躍全国区での関心事となりましたが、各社がなぜか、申し合わせたように「—ペイ」をネーミングに使っています。

こうしたことばの要素は「造語成分(語を構成する要素)」と呼ばれます。消費者の決済行動に大きな変化を及ぼすという意味で2019年を代表するにふさわしいことばです。

2位の「にわか」は、もともと、「にわかに雨が降ってきた」のような副詞用法や、「にわか勉強」のような造語成分の用法がありましたが、最近は「にわか」だけで「にわかファン」の意味を表すようになりました。従来のけなして使う用法から、初心者を歓迎する意味合いに変化しつつあります。

3位の「あおり運転」、4位の「反社」、6位の「電凸」、そして7位の「カスハラ」と、今年は攻撃的な行為や、社会の負の側面が現れたことばが並ぶ結果となりました。決して愉快なことばではありませんが、今後も使われ続けると予想され、避けて通ることはできません。

5位の「サブスク」は、居酒屋のサブスクや高級バッグのサブスクなど多方面に浸透して身近なことばに。8位の「垂直避難」は、近年の気候変動で水害が増え、今後も使われていく可能性が高くランクイン。9位の「置き配」は「泣き売(ばい)」や「やめ検」などと同じく語構成の面で特筆すべきことばです。10位の「ASMR」は、脳内幸福感を引き起こす音を総称した、ランキング中唯一のアルファベット語でした。

一方、今回最も投稿数の多かった「タピる」は、いつまでブームが続くか判断できず選外に。「ワンチーム」は、今後「一致団結」に代わって定着する可能性はあるものの、まだ流行語的な色合いが強く選外に。2番目に投稿数が多かった新元号「令和」は、この先も長く使われることは確実で、特別賞の枠を設けて授賞されることになりました。

source: PR TIMES

image by: PR TIMESshutterstock.com

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