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アップルのティム・クックCEOが来日時に「極秘面談」した人物

12月8日、3年ぶりに来日したアップルのティム・クックCEOは、短い間に精力的に動き、さまざまな人と会っていたようです。その中でも、毎日新聞だけが報じた菅官房長官との面談について、アップル側の狙いを解説するのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリスト石川温さんです。石川さんはさらに、先週のスマホ業界の動きとして、日本に上陸する中国のスマホメーカー「シャオミ」の戦略について、疑問符をつけています。

アップル ティム・クックCEOが3年ぶりに来日――極秘で40分間、面談していた「あの人」

先週、アップルのティム・クックCEOが来日していた。確認できたのは12月8日から10日までの3日間。その後、ティム・クックCEOはシンガポール、さらにはタイに移動している模様だ。

日本では8日午後3時にアップル表参道で、84歳のアプリ開発者である若宮正子さんらと再会したのち、夜には居酒屋でミュージシャンで俳優の星野源さんと談笑。

9日は慶応病院の循環器内科で不整脈先端治療学を専門にしている医学博士、木村雄弘氏のもとを訪れた。さらに2021年公開予定の映画「シン・ウルトラマン」の樋口真嗣監督と面会。カレンダーアプリ「TimeTree」の開発企業、Apple Arcade向けゲーム「ファンタジアン」の開発現場にも訪れた。夕方にはアップル丸の内で小学生向けのプログラミング教室に立ち会った。

10日には埼玉県蓮田市にある「セイコーアドバンス」でiPhone向けの塗料工場を視察したのだった。これらの訪問先にはメディアがいたり、ティム・クックCEO自体がツイートしていたので、一般に公開された情報となっている。

そんななか、ティム・クックCEOが訪問したにもかかわらず、あまり話題になっていない場所がひとつ存在する。実は毎日新聞だけが報じているのだが、ティム・クックCEOは9日に、議員会館で菅義偉官房長官と40分間、面会していたのだ。

菅官房長官は政府の「デジタル市場競争会議」で議長を務めている。11月にはアップル、グーグル、フェイスブック、アマゾンの法務担当幹部をアメリカから招集し、GAFAへの規制を強化しようと通達した。

もちろん、菅官房長官といえば昨年8月に「携帯電話料金が高すぎる。4割値下げできる余地がある」と発言し、キャリアに分離プランの導入を迫った。結果、端末割引が規制されたことで、iPhoneには逆風が吹きつつある。

ティム・クックCEOとしては、iPhoneが売れなくなれば、子どもからシニアまで幅広い年齢層がいるアプリ開発者、世界でアプリを売る開発企業、塗料やパーツなどの日本のサプライヤーにも影響が出るといいたいのだろう。アップルとしてはそうした日本への貢献を菅官房長官にアピールしたはずだ。

今週、企業の5G投資に対して優遇を行おうと2020年度税制改正大綱に「5G導入促進税制」が盛り込まれたが、インフラばかり優遇しても意味はない。5G端末を普及させるためには端末割引の復活が急務だ。5G対応iPhoneが出るまでに政府や総務省は何らかの「方向転換」が必要ではないだろうか。

世界第4位のスマホメーカー「シャオミ」が日本上陸――「口コミ」だけでブランドを浸透させられるのか

中国のスマホメーカー「シャオミ」が日本上陸を発表。「Mi Note 10」をアマゾンで発売するとした。発表会当日、中国出張だったため、発表会自体は取材できなかったが、その日の午前中、同社の東アジア地区ゼネラルマネージャーのSteven Wang氏に話を聞くことができた。

詳細は、すでにアップされているYouTubeのインタビュー動画もしくは今週掲載予定のアスキー連載に譲るが、個人的に気になっていたのが「どうやって、日本でシャオミのブランドを認知させるか」という点だ。

Steven Wang氏によれば「広告を出せば、その費用は価格に跳ね返ることにになる。口コミで広げていく」とのことだった。シャオミはいまのところアマゾンでしか販売しない。ネットだけで販売することでコストを下げ、安価なスマホとして売り出していくようだ。

ネット専売を不安視するのは別のメーカー幹部だ。ある幹部は「ネットで投げ売りし、サポートもイマイチとなると業界全体に悪影響を及ぼしかねない。そのあたりは日本の慣習にしたがって、きっちりとユーザーをサポートしてもらわないと困る」と不安がる。

シャオミとしては、ネットで売り、SNSの口コミによってブランド力を上げていきたい考えだ。しかし、中国ではネット販売でそれなりに台数が売れるのだが、日本では「ネットだけでスマホがバカ売れした」という話はほとんど聞かない。日本のユーザーはどちらかといえば「実機をキャリアショップや家電量販店で触って確かめてから、ネットで購入する」という傾向が強いようだ。そのため、実機を触れる場所がなくアマゾンだけでスマホを売るのは限界があるようだ。

また、かつてOPPOも「日本では広告ではなく口コミによってブランド力を上げていきたい」なんて語っていたが、今年、10月の改正電気通信事業法のタイミングでは、指原莉乃さんを起用したテレビCMを大量に投入。広告費をかけないどころか、莫大な広告予算を使って、力技でブランド認知を上げてきた。

シャオミも早急にMVNOと手を組み、さらにテレビCMや交通広告などをしないことには、日本でのブランド認知は難しいのではないか。シャオミとしては「法改正と5Gが日本参入の商機だと捉えた」と語っているようだが、5Gのスタートを狙い撃ちにするのであれば、早急に口コミだけではないブランド認知戦略を展開する必要があるだろう。

image by: Laura Hutton / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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