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成長は右肩上がり。少子高齢化でも熱い日本の「コンタクト」市場

視力が低い人にとってなくてはならないものといえばコンタクトレンズ。一昔前までだと、コンタクトレンズは特別なものというイメージでしたが、もはや誰にとっても当たり前の必須アイテムといえます。ハードレンズにソフトレンズ、2週間使用に1日使い捨て、そしてカラコン…でも思い出してみてください。その移り変わり、とても早いと思いませんか?そんなコンタクトレンズ市場をライターの本郷香奈さんが徹底取材。様々な市場の今を知ることができます。

成長スピードが凄い。日本のコンタクトレンズ市場

少子高齢化の影響で国内でモノやサービスが売れなくなっている昨今、日本のコンタクトレンズ市場が熱い。世界の中で日本はアメリカに次ぐ第2の大市場であり、国内勢と海外勢が入り乱れて大競争を展開している。国内市場シェアが大きいのは米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)であり、日本勢の代表はメニコンだ。このほかシード、ボシュロムなどの国内外メーカーがしのぎを削る。

コンタクトレンズは第二次世界大戦前後に現在の原型が欧米で開発され、日本では戦後に大きく普及した。ハードコンタクトレンズに続いてソフトコンタクトレンズレンズが開発され、1980年代に以降は使い捨て(ディスポーザブル)レンズが登場した。日本でのコンタクトレンズ消費は、2000年代前半に、一時踊り場を迎えた時期もあったが、おおむね右肩上がりの成長によって市場規模は拡大。これに伴ってメーカーによる競争も激化している。

市場調査会社GfKジャパンの調べによると、2018年のコンタクトレンズ小売市場の販売金額は前年比5%増の3130億円。販売金額の約7割を占める1日使い捨てレンズが前年比6%増と増えたほか、インターネット販売の伸びが市場の成長に寄与している。さらに大手メーカーの価格改定により、販売価格が上昇傾向になったほか、高単価の商品投入によって、コンタクトレンズ一箱あたりの税抜き平均価格が3050円と前年から上昇したという。

2019年も新製品の投入が相次いでいる。J&Jは、目に入る光の量を自動で調節するコンタクトレンズ「アキュビュー オアシス トランジションズ スマート調光」を12月12日に全国の一部店舗で発売開始した。

開発期間10年をかけたこの新製品は、光に反応する調光剤をコンタクトレンズに組み込むことに成功し、目に入る光量を自動調整することを可能にした。光が少ないとレンズの色が薄くなり、光が多いレンズが濃くなるため、室内でも屋外の双方で利用可能。装着にあたって視界に影響はなく、日本人の茶色や黒色の瞳の場合、レンズの色が変化しても外見上の違いはほとんどない。このため、周囲に気付かれなく光のコントロールができるのが特徴だ。技術的には世界初の試みだという。

進化を遂げ続けるコンタクトレンズ

日本勢もシードが、遠近両用の1日使い捨てソフトコンタクトレンズ「シード1dayPure EDOF(ワンデーピュアイードフ)」を12月に発売。レンズの性能と人の見る力を最大限に引き出す計算方法を用いて、レンズデザインなどを設計して製品化した遠近両用コンタクトレンズだ。老眼に悩む中高年層をターゲットにした戦略ともいえる。

コンタクトレンズ業界では、従来より高い酸素透過性で眼の負担を軽減する次世代素材「シリコンハイドロゲル」を用いた高付加価値レンズの販売が近年伸びている。さらに、レンズの縁にラインがあり、目を強調させる効果がある「ビューティーレンズ」の販売額も、GfKの調べで前年比5%増となっていた。従来の瞳を際立たせるレンズに加えて、瞳の中に溶け込むグラデーションや自然になじむ色合いなど、瞳を自然に際立たせるデザインのサークルレンズの発売が相次ぐなど、商品ラインナップが広がっている。

売り方にも工夫が見られる。メニコンは2001年に月額定額制サービスの「メルスプラン」を導入した。現在の各種サービスでのサブスクリプションを先取りしたイメージだが、入会金と月額の費用を支払うとレンズなどを定期的に交換、調整してくれるサービスだ。常に新鮮なレンズで目の健康を維持したいという顧客ニーズに応えたほか、中高生など「コンタクトレンズデビュー」をする世代の親たちが安心してエントリーできるなどの面からも関心は高く、2019年に会員数は130万人を超えた

このほか、コンタクト関連企業による合併・買収(M&A)の動きも活発だ。メニコンやシードは欧州やアジア地域などに展開し、海外向けオリジナルブランドの浸透を図るなど、海外での売り上げ比率を伸ばしている。

日本ではこれまで中高年になると眼鏡で生活する人の数が多かったが、団塊世代を中心に若い時からコンタクトに慣れ親しんだ人が多いほか、若年層のコンタクト利用も増えており、今後も需要増が見込まれる。商品面でも、日々のケアに手間がかからず、多少値段が高くても一日で使い捨てできる製品ニーズが、消費者の間に想定以上にあることも各メーカーがわかってきており、今後もメーカー同士の新たな戦略が注目されそうだ。

image by: Shutterstock / 文中写真: 本郷香奈、シード提供

本郷香奈

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