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シェアリングはBtoBへ。「シェアダイニング」で飲食業の課題解決

料理人の独立、店舗経営を支援するアスラボが、JR東日本との協業で「シェアダイニング」を今夏オープンすると発表しました。このサービスで提供する内容は、いままさに個人飲食店が抱えている課題を浮き彫りにしていると語るのは、メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんです。理央さんは、アスラボのビジネスモデルが広がることで、個人飲食店が提供するお客様への価値は大きく上がると、期待を寄せています。

対法人BtoBのシェアリングモデル

ここのところ、毎日のように聞く「シェアリング」。モノやサービスを、所有するのではなく、「共有」してみんなで使用する、というやり方です。シェアリングを最初にやったのは、AirBnB。人々が持っている自宅やマンションを、宿泊場所としてのシェアするビジネスですよね。2008年くらいから始まっています。

ここでも今まで紹介してきたように、Uberのようなライドシェアが有名ですし、さらにUber Eatsのような新事業も展開されてきています。エアクローゼットのような服のサービスが出たかと思えば、カリトケのような、時計などファッショングッズなんかにも、広がってきているのを感じますよね。ITの進化にともなって、人々の生活の中にも、かなり浸透してきました。

シェアリングに関して、今まで話題になってきたのは、タクシーや服など一般の消費者を対象に、モノやサービスをシェアするというものでした。ところが今、「アスラボ」という、飲食店の開業支援をしている企業が、面白いシェアリングを始めた、と話題になっています。

日経新聞の記事によると、アスラボは「複数の飲食店を1カ所に集める、“シェアダイニング”業態の展開」をJR東日本と協業して展開するとのことです。

飲食店をオープンするには、場所決めから、店舗設備に投資、メニュー決めや価格設定などやることが多く、それにともなう資金が必要です。厨房や会計システムなどを1箇所で行い、共有することで、人員や人件費などにかかるお金を頭割りして、1店舗あたりが負担するお金を減らしていくことができる、という仕組みです。

「独立して自分で店を始めたい!」というシェフや板前さんにとって、この仕組みで本業以外の会計や厨房での下処理などをやってもらうことで、自分の本来やるべきであるところの料理をする、メニューを考えることに打ち込むこと、といった重要なことができるようになります。

今の飲食業が苦戦している本当の理由

今の飲食業界は、とても厳しい競争の中にいます。私もよく相談を受けますが、その競争の中で明らかにうまくいっているお店と、苦戦しているお店が、はっきりと分かれています。

苦戦している理由は大きく分けて2つ。1つは「勝てる売り物」がないこと。いわゆる、目玉料理、とか、際立った特徴のことです。優位点が出せないと、お客さんは「そのお店に行く理由」を見出せず、客足も遠のいてしまいます。価格の安さだけでは「差別化ポイント」にはなりません。

値段の安さを売り物にすると、材料の値上がりによって利益が出なくなったり、他の店からもっと安いモノが出た時に負けてしまいます。中途半端な値決めでは、お客様の厳しい目にとまらないのです。

なので、その店ならではの「料理」や、温かい「雰囲気」を出すことが、他のお店との最大の差別化要因になるのです。この仕組みを使えば、そこに集中できます。

もう1つは「人手不足」です。この仕組みは、下ごしらえや会計など、間接的なジョブで共有できることをシェアするので、そこに費やす人員を共有できます。また1箇所に複数の店を出すので、サーブする人も共有できることになります。

このように、2つの大きな問題を解決できる、シェアリングの仕組みです。

IT時代に成否の分かれ目になるたった1つのこと

アスラボのサービスは、このシェアリングだけではなく、開業支援の際のメニュー決めや材料調達などの、「ノウハウ」も提供しています。いわゆる、インターネット・IT時代の今、最も重要だと言われている「コンテンツ」です。

なので、アスラボが提供するのは、「仕組み&コンテンツ」という両面での支援になり、アスラボの競合にとって、真似することが難しいビジネスモデルです。

私も食べることが好きで、私の事務所の周りにもたくさんの個人飲食店さんがあります。みなさん、とても熱心に料理に取り組んでいますが、料理の美味しさは料理そのものだけではなく、そういう熱意とかやる気からも伝わってきますよね。

シェアリングで便利になって、画一的なサービスばかりを求めがちですが、個人店や独立をしようとする、顧客志向で前向きな人たちに向けるサービスが広がるといい、と感じます。これから注目していきたいビジネスモデルです。

アスラボの事例に学ぶこと

アスラボの事例から学べることは、「勝てる売り物を作り出す時間を惜しんではいけないこと」それと同時に、「それ以外の作業の時間はできる限り効率化すること」というこの2点を同時にすべきだ、ということです。

飲食店の場合に、お客様の価値につながるのは、料理を作って、お客様に出し、食べていただいている時間です。会計の時間、下ごしらえの時間などは、その準備や事後のことですよね。

どちらも必要な時間ですが、前者に最大限の力を入れて、お客様にいかに満足して帰ってもらうか、で評判が決まり、リピートや口コミにつながります。

誰もが、1日24時間しか持っていません。これ以上でもこれ以下でもありません。限られた時間を、できる限りうまく使うことで、お客様への価値を最大化したいとことですよね。

image by: Shutterstock

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ビジネス・仕事に大事なのは、情報のキモに「気づき」どう仕事に「活かす」かです。トレンドやヒット商品には共通する「仕掛け」と「思考の枠組み」があります。このメルマガでは、AI、5G、シェアリングなどのニュースや事例をもとに、私の経験とMBAのフレームワークを使い「情報の何に気づくべきか?」という勘どころを解説していきます。現状を打破したい企画マン・営業マン、経営者の方が、カタくなっている頭をほぐし情報を気づきに変えるトレーニングに使える内容です。

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