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ドコモ代理店「クソ野郎」炎上騒動。スマホのプロが注目した文言

年明け早々大きな問題となった、千葉県内のドコモショップが客に渡した書類の中に、「クソ野郎」と書かれたメモが混入していたという「炎上」事案。ショップ店員のモラルを問う声が多く聞かれましたが、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが注目したのは、同メモにあった「ディズニーはべたづけ」という文言でした。今回石川さんは自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、オプション契約を勧める「レ点商法」に依存せざるを得ないキャリアショップの厳しい経営状態を明らかにするとともに、総務省がすぐにでも「メスを入れるべき点」について記しています。

ドコモショップで客に店員が「ディズニーはべたづけ」メモ――レ点商法依存から、サポート有償化を進めるべき

NTTドコモ市川インター店において、店員が客を侮辱したメモが客に渡るという騒動が勃発した。「親が支払いしている」「つまりクソ野郎」という内容だ。ショップ店員が客を侮辱するなど許される行為ではない。しかし、一方で、店頭で客がショップ店員を侮辱した発言で威嚇している様子も頻繁に見かける。客がショップ店員を恫喝まがいの罵声を浴びせられているのは日常茶飯事だろうし、そのストレスを侮辱したメモで発散させているのも、これまた当たり前の光景なのだろう。

今回のメモにはもうひとつ、客を侮辱した記載だけでなく「Disneyはべたづけ」という文言もあった。つまり、月額700円の有料オプションであるディズニー・デラックスは必ずつけろということだろう。ギガホであればディズニー・デラックスは1年間、割引になる。1年後にはオプション契約したことを忘れているはずなので(しかも、親の支払いなので、オプションを支払っている意識も希薄)、1年後には毎月700円の収入が期待できる。ショップとしては、有料オプションを契約することで手数料収入が見込めるはずだ。いま、キャリアショップは経営が厳しい。総務省の割引施策によって、スマホが売れない。結果として、オプション加入による手数料もいままで以上に貴重な収入源になっている。

今も昔も「レ点商法」がキャリアショップには欠かせないが、端末割引規制によって、さらにレ点が強化されているのではないか。総務省は、端末割引規制や店頭の広告表示に目を光らせるよりも、こうしたキャリアショップにおけるビジネスモデルのあり方にメスをいれるべきではないか。

いま、キャリアショップは客のサポートに時間を取られる一方で、サポートをしても収入につながらないと嘆いている。サポートを有料化したくても「隣の店が無料なら、客が隣に逃げてしまう」とサポートの有料化をしたくてもできない状態にある。NTTドコモでは昨年12月より、ショップではなく家電量販店やオンラインショップで購入した端末に対するサポートは有償化するという英断を行った。できることならば、総務省が音頭を取り、KDDIやソフトバンクにおいても、同様の取り組みをすべきだろう。すべてのキャリアショップで「サポートは有償が当たり前」という状況になれば、客からのクレームもなくなるはずだ。

そもそも、サポートを受ける客と、全く必要のない客で同じ通信料金を支払っているというのは「不公平」ではないか。サポートを受けたい人は、実費で負担すべきだし、その分、全体的に通信料金は値下げされるべきだろう。端末と料金プランの完全分離をしたところで、値下げなんて期待できない。サポートの有償化をすることで、キャリアショップの経営状態も改善し、ショップ店員の接客態度も向上するのではないか。

国民生活センターが「格安スマホ」に注意喚起――そもそもシニアに格安スマホを勧めるべきなのか

1月16日、国民生活センターが格安スマホに対する相談が増えていると発表。業界団体に対して、高齢者のユーザーに丁寧な説明をするようにと注意喚起したという。実際、2015年以降、60歳以上の高齢者ユーザーのクレームが増加傾向にあるとのことだ。「無料通話には専用のアプリを使う必要があることを知らなかったため、高額な請求を受けた」「使い方を問い合わせたいのに店舗でサポートが受けられない」などの苦情が国民生活センターに寄せられているというのだ。

そもそも、「なぜ、格安スマホは安いのか」という点を理解しないまま、安易に格安スマホを契約しようとしている状況がどうかしている。確かに、業界的にも、いまだにガラケーを使っているユーザーが多いため、シニア層の開拓というのは急務だ。さらに「3Gが停波する」という脅迫めいたメッセージが発せられ、「ケータイが使えなくなる」という誤解のもとに、ケータイからスマホへの乗り換えを促そうとしている業界も悪い。しかし、だからといって、シニアを格安スマホに導くのも無責任であるし、まともなサポートができないのであれば、シニアをターゲットにするのは間違っている。

もちろん、シニア側もサポートを必要としているのであれば、格安スマホを選ぶべきではない。まずは、3キャリアが提供しているシニア向けのスマホデビュープログラムからはじめて、スマホになれ、料金に不満を感じるようであれば、格安スマホに移行するのが現実的ではないか。

国民生活センターも、無責任に業界団体に「丁寧な説明を」と注意喚起するよりも、「初心者は格安スマホに手を出さない」というアピールをしてユーザーを守るほうが賢明ではないか。ただでさえ、経営的に苦しい格安スマホに対して、これ以上、サポート体制を強化させるというのはあまりに無理があると思う。

格安スマホに対しては、ネットワーク品質もサポートも割り切って使うからこそ、安価で満足できるものだといえる。ネットワーク品質も最高でサポートも申し分のない体制を選ぶのであれば、そこには出費も伴う。素直にキャリアを契約したほうが無難だろう。

一方、キャリア側も、高い通信料金であっても、満足して使ってもらうには、きちんとしたサポート体制が不可欠だろう。航空業界においても、多少、不便であっても節約したい人向けのLCCがある一方、快適な空の旅をしたいとフルキャリア・サービスのANAやJALを選ぶ人もいる。

自主的にサポート体制を強化する格安スマホが出てくることは歓迎だが、国民生活センターが頭ごなしに業界団体に対して、すべての格安スマホがサポート体制を強化しろと注意喚起するのは無理がある。もっと「格安スマホがなぜ安いのか」をユーザーに理解させることが重要だろう。

image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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