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日本から海外への勤務になったら、雇用形態や保険料はどうなる?

会社で働いていても、その違いがはっきりとわからない出向と転籍。『出向をしている彼は、いったいどちらの会社の従業員になるのか?』の記事の中で、その異なる点を紹介しました。では、ずっと行きっぱなしの海外勤務となる場合は出向と転籍どちらがいいのでしょうか?レアケースかもしれませんが、もし直面した場合はなかなか困る話です。そこで、無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』の中で、海外に新会社を作った経営者が考えるべき社員の雇用形態や社会保険などの税務処理について詳しく解説してくれています。

海外勤務者の扱い

先日、出向のことで相談にお越しになったG社の社長さん。今日は、その続きのお話が伺えるということで、またまた深田グループリーダーに同席させてもらった。


深田GL 「社長、この間の海外に会社をつくるお話、あれから、進んでいますか?」

G社社長 「あ~、先日は、出向について、いろいろと教えてもらって、ありがとう。やっとN国に会社ができたよ」

深田GL 「おめでとうございます。従業員さんが出向するかもとのことでしたが、具体的にはどのようにお考えですか?」

G社社長 「そうなんだよ。ちょっと考えているんだ。相談にのってもらえるかな」

深田GL 「そもそも今まではどうされていたんですか?いきなりN国ですか?」

G社社長 「いやいや、いろいろ準備はしてきたんだよ。この1年間は、Oくんに行ったり来たりの海外出張扱いで頑張ってもらっていたんだ。で、やって行けそうだなと判断をしたので、現地に会社をつくることにしたんだ。雇用形態としては、出向とか転籍といろいろきくけど、うちにはどれがあっているんだろうね」

深田GL 「出向は、就業規則に規定があれば、特段、従業員さんの同意がなくてもできます。今までは、行ったり来たりの海外出張だったそうですが、今後は、ずっと行きっぱなしになりますか?」

G社社長 「そうだね~。たぶんそうなると思う」

深田GL 「ということでしたら、転籍でも良いかもしれませんね。今の日本の会社を退職してN国の会社に入社しなおすという形です。転籍は、出向と違って就業規則に記載されていたとしても、本人の同意が必要なんです」

G社社長 「そうなんだね」

深田GL 「はい、そういうことになります。ところで、ご本人さんへのお給料はどちらからお支払するおつもりですか?」

G社社長 「半々くらいで考えているよ」

深田GL 「そうすると、社会保険は喪失しても良いかもですね。ずっと現地で、日本でお仕事されないなら、そもそも日本の健康保険って使わないですものね」

G社社長 「うん、確かに現地に行きっぱなしであればいらないね。経費も抑えたいし、やめることができるならそうするよ」

深田GL 「出向でしたら、本来は社会保険料の負担分も含めた人件費を現地法人から日本法人に移動させることになりますが、社会保険も喪失するなら、転籍にした方が経費の移動もないし良いのではないですか?」

G社社長 「ん??経費の移動?そんなことをしないといけないの?それは考えてないわー。それに、現地から日本に資金を移動させるのは難しいんだよね」

深田GL 「そうなんですか。でも、労働力提供の恩恵を受ける側が人件費の負担をするのが原則ですから、通常は、出向元が給与を負担しても、出向先が出向元に給与負担分を支払うことになるんですよ」

G社社長 「えー、そうなの??」

深田GL 「税務署の調査でも問われることもあるんですよ。経費は、何をどこでどう言う理由で使ったのかを明確にする必要がありますよね。他社のために経費を使っていることがあれば、否認されることも出てきますよ」

G社社長 「そうか、税務署はそういうところを見るんだね。転籍かー、転籍のことは本人にも言ってみたことがあるんだけど、実は、乗り気じゃないんだよね。どうも日本の会社に籍がある方が良いみたいなんだ。もともと、日本で働きたくて、就労ビザをとって、うちに入り、日本に来たという経緯があるからね」

深田GL 「そうなんですね。今後もずっと現地にいたとしても、日本の会社で働いている、籍があるということにしたいんですね」

G社社長 「そうみたいなんだよね。現地の通貨は不安定だから、日本の通貨がほしいってことも理由にあるようだよ」

深田GL 「現地の通貨が不安定…。そういうことも考えてお給料を払う必要もありますね」

 

G社社長 「うーーん、そうなんですよ。日本と現地の会社の両方から給料が出て、二社間の金額のやり取りが不要だっていう何か良い方法はないかね~」

深田GL 「うーーん、そんな都合の良い方法はないですよ」

G社社長 「え~、そうかい?」

深田GL 「でも、もともとは海外出張だったんですよね。ということは、日本の会社の仕事で現地に行っている…」

G社社長 「そうだね。日本法人に売上が上がる仕事だ」

深田GL 「現地法人の仕事は?売上って半々なんですか?」

G社社長 「今は、日本法人に売上が上がる仕組みはあるけど、現地法人の売上はこれからつくっていくんだよ」

深田GL 「そうですか、では、こうも考えられますよね。日本法人の仕事はこのまま続くなら、日本法人からは海外出張のまま、現地法人の仕事もまた別の業務できっちり住み分けできるなら、出向とせず二社との雇用も成立すると思うんです」

G社社長「そっか~、そういう方法もあったね。二社から雇用するってことだね。この場合、就労ビザの更新はどうなるの?」

深田GL 「日本には居住しないで、現地に行きっぱなしなんですよね。そもそも日本に住まないのであれば、就労ビザそのものが取れないので、更新もできないと思います。正確には行政書士の先生におたずねくださいね」

G社社長 「ふーん、就労ビザって、日本の法人に籍があったら更新しないといけないものじゃないんだね。もうひとつ、所得税はどうなるの?」

深田GL 「当分、海外在住(非居住者)で海外勤務、かつ日本法人の役員ではないといった場合、日本からの給与は国税庁タックスアンサーの通りと考えますと課税所得ではないため、扶養控除等申告書は不要ですし、源泉徴収がありませんので甲・乙もないってことになります」

G社社長 「え?所得税を徴収しなくて良いってこと?甲も乙もないし、扶養控除申告書も関係ないんだね。なんとなくイメージがついてきたよ。確かに業務の依頼先法人も別だし、二社に分けるそのやり方で整理できそうだ」

深田GL 「良かったです。また不明点が出ましたらご連絡くださいね」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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