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女子小学生暴行事件の酷すぎる顛末。学校も教育委も「加害者側」

2018年10月、愛知県豊田市で、小学1年生の女児が5年生の男児に背後から突き飛ばされ大怪我を負うという許しがたい事件が発生しましたが、加害者サイドや学校、豊田市教育委員会の対応は信じられないほど酷いものでした。現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんはメルマガ『伝説の探偵』で、この事件の全貌と顛末を詳細に記すとともに、改善されることのない教育界の体質を厳しく批判しています。

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豊田市小学生暴行事件の顛末

2018年10月25日、愛知県豊田市で、当時小学1年生の女子児童が、集団下校の際、小学5年生の男子児童に、突き飛ばされ大怪我を負った。

突き飛ばした理由は、小学1年生の女子児童が彼を追い抜かしたからという意味不明な理由であった。

女子児童は、全身の複数箇所に擦過傷、挫傷を負い、左手首捻挫、左腕骨折、右人柱外傷後瘢痕(いわゆる火傷の跡)、永久歯(前歯)欠損などの大怪我であった。

2018年10月25日、当時小学1年生の女子児童Aさんは、姉で当時小学5年生であったBさん、加害行為をした当時小学5年生C君などと集団下校をしていた。途中のマンションで他の子たちはマンションの自宅に帰り、AさんBさんC君の三人となった矢先、車道側を歩くBさんと街路樹側を歩くC君の間をAさんを走って抜いた。その際、C君が突如として激昂し、Aさんを両手で力一杯押したのだ。

そのままアスファルトの地面に身体を打ち付けるように倒れたAさんは血だらけの状態で全く身動きできなかった。

事件現場となった路上

ABさんの母によれば、当時、帰りが遅いと心配して通学路に出向くと、Aさんが大泣きして倒れて身動き取れない状態で、周囲には流血が広がっている状態であった。

Aさんは母親に気づき、すぐに「C君に押された」と発したが、C君はその声にかぶせるように、「俺やってねーし」と声を荒げた。

とにかく、病院に連れて行かねば、それが最優先だと思った母は、おんぶして病院に駆け込んだ。

怪我の状態は前述の通り、小学1年生の女児と小学5年生の男児ということで当然の体格差はあるものの、被害女児は小学1年生にしては身体が大きく、上級生だと間違えられることもあったという。現場を見るとわかるが、凹凸のないアスファルトに身体を打ちつけたのであり、C君がAさんを追ったという距離はわずかに3メートルから4メートル程度の範囲である。

軽く押したとか、危ないから(現場はガードレールの無い道路)走るのを止めて誤ってというレベルではここまでの怪我は負うはずもない。明確な意思を持って、相当強く押さなければ、これほどの怪我は負うことはないだろう。

加害児童の父「事故だ事故だ、うちの子も苦しんだんだ!!」

加害保護者は、翌日、被害者宅を訪問するも、明確な謝罪の意思は感じられなかったという。その後も、顔を合わせる機会はあるものの明確な謝罪はないままであった。

11月20日、学校にて保護者同士の話し合いが行われるが、加害保護者は、事前に自らを弁護する経緯書を立ち会った学校関係者に配り、自分たちは、事故なのに、誠意を持って謝ったが、受け入れないで被害側は怒ってばかりで困惑していると説明した。

しかし、事実は全く違うのだ。

例えば、加害児童の母が被害女児の母に送ったLINEは、絵文字だらけで謝罪の謝の字も感じるものではない。

さらに、ここに来て、加害児童は明確に押したことを認めているが、押す行為を加害児童の父は、「故意ではない」と主張し、これは事故だと論じた。

押す行為は、過失とはならない。もはやなぜかの理由も必要ないだろう。人が人を押すというのは、誰かに押されるなどして倒れそうになって誤って他人を押してしまった場合などは過失となろうが、この場合は、激昂して押したのであって、明確な意思に基づいているものだ。つまり、天地がひっくり返っても「故意」であり、事故ではない。

しかし、加害児童の父は、事故主張を曲げないのだ。目撃者がいない(被害女児の姉Cさんはその場にいたのだが)、息子のCは、わざとじゃないと言っているし、注意されて傷ついている。だから、もうこれは残念な事故なのだと言うわけだ。

学校は、この加害者側が主張を強弁し、被害者側がそんな無茶苦茶は受け入れられないというだけのやりとりを、半ば強引にお開きにして、このように結論付けた。

加害側は謝罪をしたが、被害側はこれを受け入れなかった。

記録には謝罪をしたいという言葉はあるが、その後の言葉はない。後は前述の通りだから、その内容は謝罪ではなく弁護、いや、強弁と言えよう。これを謝罪とする学校はどうしてしまったのか。

調子づいた加害保護者はこうも言っている。

「うちも謝らせるから、おたくの子も謝れ」

被害女児は「生きるのってつらいね」と苦しんでいるのに、どこまで苦しめるつもりなのだろうか。

被害女児がPTSDを発症

傷害事件後から体調不良が続いたAさんは、医師が関わらなければならないほどのPTSDだと診断された。彼女は、私が直接現場を見に行った2020年現在でも、深く傷ついていた。

多くのこうした事件は、身体の傷はいずれ癒えるというが、彼女の場合は、顔の傷も生涯残ると言われており、欠けてしまった永久歯ももう元には戻らない、そして、心の傷は深く残り、自宅から見える事件現場を通ることはもちろん、見ることもできないのだ。

結果、学校が対応できていないことから、被害側は警察に相談し、警察はこれを受件し、調査にあたることになった。豊田警察署の調べによれば、C君がAさんを後ろから押して転倒させる暴行を加えたと結論づけた。

こうした経緯もあり、本件は学校記録では傷害事件とあり、いじめ防止対策推進法でいうところの重大事態となったのだが…、適切な指導や被害女児らへの配慮はほぼ無い状況のまま時間が過ぎていった。

しかし、医師が関わらなければならないレベルのPTSDとなっているAさんは加害児童のいる学校に通うのがとてつもなく辛いわけだ。結果として、Aさんは越境して他校に転校する ことになったのだ。

姉のBさんもPTSD症状

姉のBさんは目の前で可愛い妹が暴行され血塗れになった姿をみた。彼女は、妹が死んでしまったのでは無いかと思うほどの衝撃を受けたのだ。

そこからずっと、痛みに苦しむ妹の姿を間近に見てきた。だからこそ、自分の心も壊れそうだということを我慢し続けていたのだ。そして、きっと学校の先生たちが、加害児童に注意して叱ってくれるものだと信じていた。正義は果たされると思っていたのだ。

ところが、それは根底から覆され、加害一家は謝罪もせず、のうのうと何もなかったかのようにして、加害児童は全く反省もしていないことを目にしていた。

学年が上がり、クラスこそ分かれたが、隣のクラスであるからその様子はどうしても目に入るし、学年の活動はひとまとめにされてしまうわけだ。

そうした無配慮無関心が彼女の心をどんどん破壊していったのだ。

少なからず、彼女の心を壊したのは、学校による不適切対応による二次的被害であり、加害側の一般的にあるであろう謝罪意識の欠如とその異常な家庭環境、加害児童の反省の欠落が引き起こしたといえよう。

警察が対応したので、もうしません

豊田市教育委員会も学校も被害側がしっかりとした謝罪をさせてくれ、被害の中で苦しんでいる子どもに適切な配慮をしてくれと申し出ても、すでに警察が動いた事案であるため、何もしないの一点張りであったと被害保護者は言う。

確かに開示記録を見ると、加害側の言い分ばかりが採用されていることは明らかで、警察判断には従う様子はない。

一方、事件当時の校長は「パルクとよた」に移動とあるが、ここはいわゆる教育センターのような機関であり、トラブルなどを学校と連携することになっている。当然、被害者側にはこの機関への相談が推奨されるというとんでもない提案までがなされたのだ。

面倒なことは警察に投げ、そこでやったから、もう教育的なアプローチや実態解明はもう十分というのは、教育機関としての怠慢に他ならず、事件に対する丁寧な対応とは到底言い難いだろう。

被害側を黙らせようとする一手

被害を受けたAさんは現在は転校をして、別の学校に通っている。顔の傷を含め心の傷は残ったままであるが、一応の安寧は確保した形だ。

しかし、この環境は今、破壊されようとしているのだ。豊田市教育委員会の見解では、越境による転校は期間限定であり、1年間ごとに、正当な理由をつけ更新しなければならないとしている。

彼らの勝手に作ったルールではあるが、越境を許可するのは、教育委員会なわけだ。

当然に、Aさんのところにも、再度更新せよという通知が届いたわけだ。

この被害に対する適正な指導と配慮を求め続け、何もしないと言われ続けてきた被害側にとっては、Aさんを人質にとられた口封じに感じるだろう。

被害保護者は、私にこう語った。

「もしも、今の学校から戻れと言われたら、Aはどう感じるだろう。折角、友達もできて、落ち着いてきたのに、それでも思い出せばすごく辛くなるのに…もう家を売りに出して、他所に引っ越した方がいいのでは無いか、すごく損をするけど、子どもの命にはかえられませんから」

多くの被害者を見捨ててきた学校

いじめ防止対策推進法に伴うガイドラインなどでは、警察などとの連携や刑事事件と考えられるものは通報するようにという記載はあるが、他機関が対応したから、教育機関が対応しなくていいということはその趣旨には無い。むしろ、より積極的にケアをして機動的に丁寧に対応していこうとされているのだ。

それに、一般的に考えて本件のようないじめというより傷害事件といった方が適切とされるような事件については、被害者のケアを含め、通例いじめでの対応よりもより高度な対応が必要だろう。さらに、本件のような加害側の反省の色が全く見えない者には、相応の対応対策を講じられなければならないのではなかろうか。

例えば、別室指導だ。なぜ暴力を振るってはいけないのか、一般には家庭でも行われる教育がその環境では絶望的であるならば、その加害児童の将来を考える上でも、反省の念を熟成させる教育的なアプローチは必要であろう。

こうしたことを怠り、いたずらに時間を引き伸ばして卒業させてしまう、その中で、ろくな謝罪もなく、むしろ誹謗中傷を浴びた被害者は学校という閉鎖的な小社会から弾き出されてしまう。

こうした被害者は無数にいよう。加害者はのうのうと学校に通える、しかし、被害者は心身の後遺症が残るほど傷つけられても、人権を著しく傷つけられても、加害者と同じ空間で我慢を強いられるのだ、ストレスは積み重なり、いずれ被害者は不登校となるか転校を余儀なくされる。

現行法では、いじめ防止対策推進法にある出席停止は学校教育法の範疇を超えない、懲罰では無い規定だとされているから、年間1~7件ほどしか実行されないわけで、加害者優位ともなり得る状況は法改正でも無い限り、変わらぬ現実なのだ。

つまり、多くの被害者は見捨てられる現実があるのだ。

この豊田市児童暴行事件、被害者は、そして被害家族はどう救われるのだろうか。

すでに学校も教育委員会も当事者と言える状況だからこそ、教育はどこまでできるのか、第三者委員会に検証させる必要があろう。中立・公平な第三者に。

編集後記

私はゾッとしました。

押す行為はどう考えても故意です。これを過失だと言えるその思考回路が全く理解できません。これは私の個人的意見に過ぎませんが、親の背中で子に物事を教えるのであれば、こんなときこそ、親だからこそ許しを乞うものでなければならないはずです。

謝罪をしたい人が絵文字まみれで、LINEを送って来るなど言語道断ですし、女の子の顔に一生残る傷をつけて、謝罪もなければ賠償もないというのも解せません。

このまま過ぎ去るものだとでも思っているのでしょうか…。想像力の欠如、大人としての常識不足、我が子を守るという真意の履き違えも甚だしい。

ただ、こういう常識で生きてきてしまった大人は修正つきませんから、もう白黒つけるしか無いでしょうね。

警察判断は被害者加害者となって、事実明白な暴力事件扱いですから、十中八九、加害側は負けるのに。

学校の対応も教育委員会の対応も感度不足というより、腫れ物に蓋をする対応です。ただ、教員の中には、「何で反省させないんだ!変じゃないか!」という人もいるようでした。そこは少し救いなような気がしますが、それでもその声が出せない環境は、やはり健全では無いのではと思います。

学校の文面を見ていると、多くのケースで、本件でも「寄り添う」とか「丁寧に対応する」などが散見されますが、その言葉通りしていたら、ここまで被害側が落とし込められるものでしょうか。言葉ばかりで行動していないというのが、現実起きていることのはずです。

いいですね、結果評価がされない一般社会とは異なる小社会で生きている方々は。甘い世界で生きてるな、と思います。

教職の中にはもはやサービス業だというものもいますが、一般事業者でこんな体たらくを晒したら、間違いなく潰れますし、会社員でもクビになります。お金ももらえません。当然に。

めちゃくちゃな教員間での犯罪をやっても刑事罰もまだされずに、給与差し止めは違法だと騒いでいる神戸の事件のように、一般社会と教育業界はどうも常識が乖離しているように思えます。

古くから変わらない日本型の詰め込み教育、一斉平均的な教育制度も含め、全てに時代との乖離、限界が来ているのでは無いでしょうか。これでは、被害者・加害者を量産しているだけのように感じます。

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image by: voyata / Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
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