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コロナ離婚を考える前に。年金の「離婚分割」双方の受け取り額は

もしも離婚となっても「離婚分割」を請求すれば、夫から年金をきっちり半分分けてもらえる…。そんな風に考えている方、注意が必要なようです。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、平成19年4月より可能になった年金の分割の「真実」について、具体例を上げつつ紹介しています。

離婚したら配偶者から年金を半分分けてもらうというイメージと実際は大きく異なる

年金は個人に与えられたお金ではありますが、離婚する時にこの年金を分けてもらえる場合があります。平成19年4月の改正から年金を分割できるようになって以来、もう10年以上になるので知ってる人も多くなってきました。ですが中身については「元配偶者の年金を半分(50%)貰える」という部分しか記憶にない事が多いですね^^;大体、自分にとって有利な部分は記憶に残ってるという事はよくある事ですよね。

しかし、実際は半分貰えるというのは老齢厚生年金の部分だけ(過去の給料の記録に比例して支給される報酬比例部分の年金)。そしてあくまで結婚していた期間の記録だけが分割される。たとえば、夫が30歳から60歳まで厚生年金に加入して厚生年金保険料を納めました。でも結婚したのは夫が40歳の時で離婚は59歳でしたとなると、40歳から59歳までの厚生年金期間の保険料納付記録が分割される。なお、国民年金(老齢基礎年金)は個人単位に与えられた最低限の保障だから離婚により分割されない。というわけで、実際に年金を分割してもらうぞ!となっても、期待外れになる事が多い。

そういえば、「離婚するつもりだけど年金を配偶者から貰いたい。どうしたらいいか」という相談は圧倒的に女性からが多いと感じます。離婚分割であんまり男性からの相談を受けた事が無い。ほぼ女性。離婚に関しては女性が積極的なんだろうなと感じますね。もう年金分割の相談になった時点で心に固く決めてるようなので、離婚しないほうがいいのでは?という余計な話は不快に思われてしまう。離婚に至るまでいろいろ考え抜いてきたと思うし。

男性からはどっちかというと、離婚分割した後の年金額の減額に驚いて、どうして年金がこんなに減ったんやo(`ω´ )oプンスコ!という原因を聞かれる事が多い。まあ…離婚する時に分割するという事は話し合ってるはずなんですけどね^^;合意しないと分割はできないから。なお、話し合わなくてもいきなり分割できるタイプもあります(3号分割)。

離婚分割したいと考えてる人は、まずは年金事務所に離婚分割の情報を提供してもらう事ができる。どのくらいの割合で分割するとか、離婚分割後の見込み年金額は大体このくらい、分割する期間の記録はこの期間というような情報を貰います。分割する割合が決まったら公正証書等の公文書を添付して離婚から2年以内に分割の請求をする。分割の話し合いが進まないなら家庭裁判所に頼んで、家庭裁判所から貰った公文書を添付して分割の請求をする。というわけで、離婚時の年金分割のやり方を簡単におさらいしましょう。

1.昭和27年8月17日生まれの男性(今は67歳)

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20歳になる昭和47年8月から昭和50年3月までの32ヶ月間は昼間大学生として、国民年金には任意加入して父親が保険料を支払っていた。昭和50年4月から60歳前月の平成24年7月までの448ヶ月間は厚生年金に加入。なお、昭和50年4月から平成15年3月までの336ヵ月間の平均標準報酬月額は54万円とし、平成15年4月から平成24年7月までの112ヶ月間の平均標準報酬額は60万円とします。

平成15年4月に元妻と婚姻したが、令和元年12月に離婚した。婚姻期間は平成15年4月から令和元年12月までの201ヶ月間。妻は平成20年4月以降に第3号被保険者になった事は無いとします。

元妻からは年金を分割してよ!お願いよ!頼むから!と迫られて話し合いの結果、年金を半分(50%)分割する事になった。


※参考

必ず50%分割にしなければならないわけではない。合意で40%とかそういう割合に決める事もできる。しかし、離婚した夫婦の約95%以上の人は分割割合50%で落ち着いてる。


その前に、夫が65歳から貰ってる年金総額を計算します。

年金額合計は

さあ、元妻はこの年金の半分が貰えると思っていたが、実際は婚姻していた時の厚生年金期間である平成15年4月から平成24年7月までの112ヶ月間の厚生年金記録を分割する。112ヶ月間の年金はさっき計算した368,323円なのでこの年金のみが分割される。この年金368,323円を最大50%分ける?という事は368,323円の半分の184,161円貰えるって事なのか。

ちなみに元妻は独身時代と婚姻期間中に厚生年金に加入していた時期があり、元妻自らも独身時代の記録に基づいて年額50万円と婚姻期間中の妻自身の厚生年金記録で年額10万円の老齢厚生年金が支給されていた(厚生年金期間は200ヵ月とします)。他に老齢基礎年金60万円と振替加算約7万円支給されてるとします。元妻自身の年金合計は

まず、婚姻期間中の厚生年金期間のみが分割されるので、独身時代の記録や基礎年金は省いて考える。で、元夫婦同士の婚姻期間中の年金を合わせると、夫368,323円+妻10万円=468,323円となり、これを50%で分割する。お互いの年金を両天秤にかけて、釣り合うようにしようねって事。そうすると468,323円×50%=234,161円となる。つまり、夫は368,323円から234,161円に下がって、妻は10万円から234,161円にアップしたという事。あくまで夫婦両者の婚姻期間中の厚生年金記録を合計した金額の50%という事。年金額は分割請求の翌月分から変更する。

なので、元妻の年金は独身時代の厚年50万円+婚姻時代に加入していた厚年と離婚時分割との年金234,161円+老齢基礎年金60万円=1,334,161円となる。

振替加算7万円が消えてしまったのは、この妻自身には2200ヶ月分の厚生年金期間があり、離婚分割によりさらに夫から112ヵ月間の記録を貰った事により312ヵ月の記録が有るとみなされて、240ヵ月以上の厚生年金記録となってしまったから。

自分の厚生年金記録と離婚分割記録と合わせて240ヵ月以上になった人を譲満了者(譲ってもらって240ヵ月以上になった人)といい、240ヵ月以上になったから振替加算が消滅してしまった。こういう不利益も発生する事がある。一方、夫は年金額合計が老齢厚生年金(報酬比例部分1,661,083円-分離婚割による減額134,162円+差額加算653円)+老齢基礎年金781,700円=2,309,274円(月額192,439円)となる。

まあ、今回の記事では計算は簡易にしてますが年金分割の正式な計算も知りたい方はこちらもどうぞ。

正式な計算過程はこちらの有料メルマガバックナンバー(2018年5月有料メルマガバックナンバー)

期待するほど増えたり減ったりしてはいないですね^^;こんなんじゃ納得いかない!という事で裁判起こしたりして、もっと年金から分けてもらうという事はできない。普通の財産分与とか慰謝料取るとかいうノリでやるものではない。あくまで年金の法律に従って、分割するという制度を行ってるものだから。

それでは今日はこの辺で。

image by: Shutterstock.comcom

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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