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【国際情勢】2015年、岐路に立たされる日本(2)「中国、驚愕の対日戦略とは?」

『ロシア政治経済ジャーナル』No.1144(2015.01.09号)より

第1回第3回

 

前号では、1991年から2012年までを振り返りました。

1、1991年末、ソ連崩壊で、「アメリカ一極時代」がはじまる
2、2008年、アメリカ発世界的経済危機で、「アメリカ一極時代」がおわる
3、アメリカの没落を確信した中国が凶暴化する
4、具体的には、資源確保と安全保障上の理由(=第1列島線)から、南シナ海、東シナ海支配に乗り出す
5、2010年、尖閣中国漁船衝突事件後、中国は全世界にむけて「尖閣は中国固有の領土であり、核心的利益である!」と宣言する
6、2012年、日本が尖閣を「国有化」すると、日中関係は戦後最悪になる

こういう流れでした。

中国、【驚愕】の対日戦略とは?

さて、日本の「尖閣国有化」で新たな段階を迎えた日中関係。中国は、(彼らから見ると)生意気な日本をぶちのめすために、驚きの戦略を構築していました。

中国の著名な専門家は、中国と同様、日本と領土問題を抱えるロシアと韓国に対し、反日統一共同戦線を組むことを呼びかけた。

この共同戦線は日本の指導部に対し、第2次世界大戦の結果を認め、近隣諸国への領土要求を退けさせることを目的としている。(The Voice of Russia 2012年11月15日)

つまり、
・中ロ韓は一体化して、日本に「第2次世界大戦の結果を認めるよう」要求しましょう。
・「第2次大戦の結果ってなんだ?」というと、「領土要求を取り下げろ!」と。

日本は北方4島と竹島をあきらめ、尖閣を中国に返せ!と。ここに、大きな「ウソ」があります。

北方領土、竹島問題は、たしかに第2次大戦の「負の遺産」ともいえるものです。しかし、中国が「尖閣」の領有権を主張しはじめたのは1970年代からで、第2次大戦とは全然関係ありません。

14日モスクワで行われた露中韓の三国による国際会議「東アジアにおける安全保障と協力」で演説にたった中国外務省付属国際問題研究所の郭●● (ゴ・シャンガン)副所長は、こうした考えを明らかにした。

郭氏は、日本は近隣諸国との領土問題の先鋭化に意識的に対応し、第2次世界大戦の結果を認めないことを見せ付けたと強調している。

郭氏は対日同盟を組んでいた米国、ソ連、英国、中国が採択した一連の国際的な宣言では、第2次世界大戦後、敗戦国日本の領土は北海道、本州、四国、九州4島に限定されており、こうした理由で日本は南クリル諸島、トクト(竹島)、釣魚諸島(尖閣諸島)のみならず、沖縄をも要求してはならないとの考えを示した。(The Voice of Russia 2012年11月15日)
※●●の部分は、変換できない漢字です。

どうですか、これ。

4島、竹島、尖閣のみならず、【沖縄】も日本の領土であってはならない!と。嗚呼、ここに中国の本音が出てますね。

さらに超衝撃の内容がつづきます。

こう述べる郭氏は、中国、ロシア、韓国による反日統一共同戦線の創設を提案している。

日本に第2次世界大戦の結果を認めさせ、近隣諸国への領土要求を退ける必要性を認識させるために、この戦線には米国も引き入れねばならない。(The Voice of Russia 2012年11月15日)

おわかりでしょうか?

中国は、「尖閣」「沖縄」を奪うために、「【アメリカ】とも手を組もう」と主張しているのです。中国、アメリカ、ロシア、韓国で反日統一戦線をつくろうと。

これが中国の対日本戦略です。

要するに、中国は、アメリカ、ロシア、韓国と組んで、日本を【袋叩き】にしよう!と決意している。日本を、第2次大戦時同様、孤立させ、破滅させようと。当然、少なくとも尖閣、沖縄は中国のものになるでしょう。

私は中国にこういう戦略があることを、RPE2012年11月18日号で取り上げました。つまり、安倍内閣が誕生する直前です。(安倍内閣誕生は2012年12月26日)

では、いったいどうやって「反日統一戦線」を構築するのか? これは簡単です。
・日本は右傾化している
・日本は再び軍国主義化している
・日本は歴史の修正を目指している
と大プロパガンダする。これは、中国・韓国がいつもいっていること。しかし、実をいうとアメリカもロシア(2次大戦時はソ連)も、嫌がることなのです。

では、日本が「軍国主義化」「右傾化」「歴史の見直し」をしている間接証拠になる言動とはなんでしょうか?

・憲法改正(アメリカ製憲法を直すので)
・靖国参拝(中国は、靖国を参拝するのは、軍国主義者だとプロパガンダ)
・東京裁判史観見直し要求(歴史修正主義でアメリカを敵にまわす)

強調しておきますが、私は、
・アメリカ製憲法を神聖視していません
・靖国参拝は、日本人として、当然よいことだと思っています
・東京裁判は、インチキだと思っています

しかし、中国がこういう戦略で攻めてきているときに、まんまと罠にはまれば

1、日米関係が悪化し、日米同盟が弱体化する
2、アメリカとの関係が悪化すれば、欧州やオーストラリアなどとの関係も悪化し、日本は世界的に孤立する
3、尖閣で有事が起こったとき、アメリカが日本を助けない口実を与える
4、日本は一国で中国と戦うことになり、最低でも尖閣、ひょっとすると沖縄までも中国に併合される

こういうことをすべて計算にいれた上で、「安倍新総理は、こういうことをやらないでください。これらをやると【中国の罠】にはまることになります」と、繰り返し繰り返し書いてきました。

で、結局どうなったの?

中国の罠にはまった安倍総理

2013年12月26日、安倍総理は、バイデン米副大統領の警告を無視し、靖国を参拝しました。

「小泉さんは総理時代6回も靖国に参拝している。しかし、アメリカ側からは何のリアクションもなかった。だから、今回も大丈夫だ!」と甘く見ていたのでしょう。

2012年11月から、中国が大金をかけて、「日本は右翼化している!」「日本が軍国主義化している!」「日本は歴史の修正を求めている!」と全世界でプロパガンダしてきたこと、知らなかったのだと思います。

で、結果はどうだったか?

総理の「靖国参拝」に反対したのは、果たして政府の見通しどおり中国、韓国だけだったのでしょうか? 総理靖国参拝後の各国の動きを振り返ってみましょう。

・2013年12月26日、安倍総理の靖国参拝について、米国大使館が「失望した」と声明を発表。
・アメリカ国務省も「失望した」と、同様の声明を発表。
・英「ファイナンシャル・タイムズ」(電子版)は、安倍総理が「右翼の大義実現」に動き出したとの見方を示す。
・欧州連合(EU)のアシュトン外相は、(参拝について)「日本と近隣諸国との緊張緩和に建設的ではない」と批判。
・ロシア外務省は、「このような行動には、遺憾の意を抱かざるを得ない」「国際世論と異なる偏った第2次大戦の評価を日本社会に押し付ける一部勢力の試みが強まっている」と声明。
・台湾外交部は、「歴史を忘れず、日本政府と政治家は史実を正視して歴史の教訓を心に刻み、近隣国や国民感情を傷つけるような行為をしてはならない」と厳しく批判。
・12月27日、米「ニューヨーク・タイムズ」、社説「日本の危険なナショナリズム」を掲載。
・12月28日、米「ワシントン・ポスト」は、「挑発的な行為であり、安倍首相の国際的な立場と日本の安全をさらに弱める」と批判。
・同日、オーストラリア有力紙「オーストラリアン」は、社説で「日本のオウンゴール」「自ら招いた外交的失点」と指摘。
・12月30日、米「ウォール・ストリート・ジャーナル」、「安倍首相の靖国参拝は日本の軍国主義復活という幻影を自国の軍事力拡張の口実に使ってきた中国指導部への贈り物だ」。
(つまり、「日本で軍国主義が復活している」という、中国の主張の信憑性を裏付けた)
・同日、ロシアのラブロフ外相は、「ロシアの立場は中国と完全に一致する」「誤った歴史観を正すよう促す」と語る。

これらを見ると、「反対なのは中国、韓国だけ」という日本国内での報道のされ方は、かなり強引であったことがわかります。実際には、中韓に加え、アメリカ、イギリス、EU、オーストラリア、ロシア、親日の台湾まで、靖国参拝を批判していたのです。

そして、この問題は長期化し、「日本はますます孤立化していく」兆候を見せていました。

たとえば、「ブルームバーグ」は2014年2月19日、「日本のナショナリスト的愚行、米国は強い語調で叱責を」という社説を掲載しています。

何が書いてあったのか、抜粋してみましょう。

悪いことに、日本は米国から支持を受けて当然と思っているようだ。バイデン米副大統領が事前に自制を求めていたにもかかわらず、安倍首相は靖国参拝を断行した。非公開の場でのこの対話の内容はその後、戦略的に漏えいされた。恐らく、安倍首相の尊大な態度を白日の下にさらすためだろう。(ブルームバーグ 2014年2月19日)

アメリカの本音は、「属国の長が、宗主国No.2の要求を無視するとは、なんと尊大な!」ということなのでしょう。

米国は反論すべきだ。それも通常より強い言葉で切り返すべきだ。

4月のオバマ大統領のアジア訪問は、中国政府の外交的冒険主義を容認しないことをあらためて表明する良い機会であると同時に、安倍首相の挑発がアジアの安定を脅かし、日米同盟に害を及ぼしていることをはっきりと伝えるチャンスだ(ブルームバーグ 2014年2月19日)

要するに、「オバマは4月に日本に行ったら、『ガツン』といってやれ!」と主張しているのです。

日本が何十年もかけて築いてきた責任ある民主国家として受ける国際社会からの善意を、安倍首相は理由もなく損ないつつある。

首相が自分でそれに気づかないのなら、米国そして日本国民が分からせてあげられるだろう(ブルームバーグ 2014年2月19日)

つまり、「尊大な」安倍総理が悔い改めないのであれば、アメリカが「わからせてあげよう!」と。これは、一種の脅迫ですね。

このように2014年2月、日本は、世界で完全に孤立状態にありました。そして、中国の、中米ロ韓による【反日統一戦線】戦略がみごとに成功する一歩手前まで来ていた。

ところが、ある【歴史的大事件】が起こり、安倍総理は救われたのです。

その【歴史的大事件】とは???

長くなりましたので、つづきはまたの機会に。

2015年、岐路に立たされる日本(3)に続く

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『ロシア政治経済ジャーナル』
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