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手厚さ、スピード感が日本と段違い。アメリカの支援金給付事情

ニューヨークに外出禁止令(ロックダウン)が発令されたのは3月22日。その1週間後の29日には、1人1200ドル日本円で12万円を超える給付金が振り込まれたと報告するのは、『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者、りばてぃさんです。アメリカでは、このほかにも職を失った人たちの失業給付に政府や州の補助が上乗せされるなど、早い上に手厚い支援があると紹介。同じような個人ナンバーの制度があっても効果的に活用されず、事業主への助成制度が決まっても審査や給付に時間がかかる日本との違いを明らかにしています。

我が家にも届いた経済支援金

日本でもニュースになっているとおり、今回の新型コロナ問題で一般市民には経済支援金として1人あたりおよそ12万円が給付されることが3月末に決定していたが、我が家にも4月29日付で給付金が振り込まれた。夫と2人分なので2400ドルだ。

せっかくなので、備忘録がてら経済支援金について整理しておこうと思う。

(1)高所得者ではない一般人の場合

まず、1人あたり1200ドルの給付金は、連邦政府が個人に支給する救済金。報道によると、1億2000万人以上が受け取ることになるという。対象となるのは、アメリカ市民または永住権(いわゆるグリーンカード)保持者。所得が、個人の場合で年収7万5000ドル(約810万円)までが満額の1200ドルを受給できるが、年収7万5000ドル以上は段階的に金額が減る。また、9万9000ドル(1060万円)以上は受給対象ではない。

子供なしの共働き家庭の場合、年収15万ドルまでが2人分の2400ドルを満額で受給。個人同様にその金額を超えると段階的に金額が減り、19万8000ドルを超えると受給対象外となる。さらに、17歳未満の子供には500ドル(約5万5000円)が支給されるため、例えば、小学生2人いるご夫婦の場合、3400ドルが支給されるということになる。

年収は2018年または2019年の確定申告を基準とする(今回の新型コロナで2019年の個人の確定申告期限は7月15日まで延長されている)。確定申告の際には追加の税金の支払い、または払い戻し先として銀行口座を入力しておくのが一般的。

今回の給付金はすでに登録してある銀行口座に振り込まれるだけなので比較的給付が早かったのだろう(それでも失業し、再就職もできない状況の人は経済的な不安があるため、給付日が不明な状態は精神的に大変だったと察する)。

日本の場合、こういった給付金は、低所得者や生活に困窮した人が受け取る印象が強いと思うが、上述したように、アメリカの場合は低所得者層は当然のことながら、我が家のような中間所得者にも支給されているのだ。

とはいっても世帯年収15万ドルないし、19万ドルあればそれなりの所得だけど、ただこれは住んでいる地域や州によって家賃や生活費は大きく異なるので、なんとも言えないのも事実。マンハッタンのど真ん中に住んでいれば年収20万ドルでも子どものいるご家庭の場合は足りないかもしれないのだ。

いずれにしても、今回の給付金は、失業された方にとっては非常に助かるだろうし、そうじゃなくても、新型コロナ問題で食品のセール品は少ないしオンラインオーダーの配送料など普段はかからない費用がかかっているので、たいがいの人にとって助けになるだろう。

ちなみに、いつ給付されるかは米国国税庁(IRS)のウェブサイトで確認可能。こういうところはアメリカは進んでいて非常に便利。国税庁のGet my paymentというページにいくと、ソーシャル・セキュリティ・ナンバー、誕生年月日、ストリート住所、郵便番号を入れて1クリックするだけ。名前は入れない。
Get My Payment

日本だとマイナンバーとか、ふんわりしたネーミングにしてしまっているけど、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーは不必要に気軽に他人に伝えてはいけない非常に重要な番号。税金管理から各種ローンやクレジットカードの申請、アパートや携帯電話の契約時にも使うもので目的は支払い能力レベルの確認だ。あとは病院でも使う。

万が一漏洩した場合、悪用されるかもしれないので、閲覧や利用状況を管理するサービスもあるほど。さらには就職時にも必要なものなので、この番号があって初めて連邦政府から人間として認識されるといっても言い過ぎではないものとなっている。番号で管理するなんて味気ない…なんて思うかもしれないが、番号で管理するからこそ、今回のような支援金の給付は迅速に行われるのである。

なお、確定申告もしていないなどの低所得者層もしくは確定申告時に銀行口座を指定していない場合は郵送で小切手が送られる。

(2)失業した一般人の場合

今回の新型コロナで失業者は急増。過去1ヶ月ほどで失業手当の申請数は3000万人超となっている。
For fifth straight week, number of unemployment claims soars
A Staggering Toll: 30 Million Have Filed For Unemployment

週の申請数も数百万人単位なので、これだけ失業者がいると失業保険の手続きも追いつかない状況で、多くの失業者が失業手当が入らない状況となっている。

そんな中、4月中旬頃からニューヨークでも徐々に支払いが進んでいる話を聞くようになり、過去分も含めてまとめて支払われているようだ。

なお、失業保険金はたいがいの場合、支払われていた給料の半分以下ほどだが、失業対策として連邦政府が毎週600ドルの補助を決定したので人によっては稼いでいた分以上の給付を受けていることもあるという。加えてニューヨーク州は週600ドルをさらに上乗せする補助を決定済みだ。

ニューヨークタイムズ紙が州ごとの受給金をシミュレーションしており、半数以上の州において、特に最低賃金で働いていた人たちは、失業以前より多い給付金を受け取る形となっているという。
The $600 Unemployment Booster Shot, State by State

今後、自宅自粛が解除され、雇用が戻っていく中で給料と失業給付金との狭間に企業が立たされることが予想され、このあたりの調整は今後必要なのかなと思う。

(3)個人事業主もしくは従業員500人以下の中小企業

中小企業に対する救済措置もある。連邦政府が決議済みの2兆ドル(220兆円)の景気刺激策の一部で(上述の個人給付金もここから支出)、米国中小企業庁(SBA)主導で支援されるものだ。

主に2種類あり、1つはEconomic Injury Disaster Loan Program(通称EIDL)。これ、細かい申請内容はあるけど、大注目された理由は最大1万ドルが承認後3日以内に支払われ、かつ返済不要という点。申請は早い者勝ち。しかもローンという名前なのに返済不要ということで、今回の新型コロナで何かしら収益減になった企業はこぞって申請している。

しかも申請時に必要な情報は、決済情報などは不要で、企業名や従業員数といった基本情報だけ。ローンなのに審査も何もない。多くのメディアやファイナンシャル・アドバイザーによる解説が出ていたが、当たり前のように問題発生。当然のことながら申し込みは殺到。早々に受付を打ち切り、SBAは、「申請多数のため資金が枯渇したので従業員1人につき1000ドルの給付にする」と4月なかばごろに発表し、大混乱となった。

そりゃそうだ。収入が激減し、従業員の解雇を迫られている企業にとって1000ドルで従業員を雇うことはできないし、オフィスや店舗家賃の少しの足しにしかならないのだから。結果的に一部の企業に支払いはあったものの、資金枯渇のため停止。

その後、4月20日に4500億ドル(約48兆円)規模の追加対策が決まり、支払いは再開。知人で申請したという会社にも支払いが入ったと連絡があった。
米、4500億ドルの追加対策発動へ 雇用維持へ財政第4弾

企業向けの支援策はもう1つある。通称PPPと呼ばれている、Paycheck Protection Program。これは主に失業者対策がメインの支援で、従業員500人以下の企業の場合、最大1,000万ドルのローンを提供するもの。しかも従業員を維持し、SBAが認めれば全額返済免除となる。

金額も大きいので、この申請には決算書など準備が必要。すでに準備している企業は多いようで、こちらもかなりの数の企業が申請し、早速、振り込まれている。

ただし、このPPPはいくつか注意点がある。承認から8週間以内でローン全額を使いきること。従業員を再雇用する費用にそのほとんどを充てること。それ以外の場合、例えば、賃料に充てる分は給付額の25%以内に収めること。さもなくば、全額免除にはならない。ただし、どこまで免除となるかは最終的にはわかっていないので、給付されたものの、慎重な使い方をする企業も多い。

もし免除されなかった場合、金利1%の2年間ローンとなる。金利1%は非常に低いが、2年間ローンがやっかいで、免除されなかった場合の月々の支払い額は巨額になるのではという指摘が出ている。

PPPに関しては不明な点が多い。そもそも自宅自粛期間が長引けばあっという間に8週間経過し免除か返済かが決定し免除されなかった場合、返済がはじまるのか?など専門家も懸念材料が多いとみているようだ。

それでも、今回追加支援が決定したように追加緩和やさらなる追加支援が出るかもしれないので、いずれにしても当座、必要なお金が必要なところに入りはじめているのは素晴らしいことだと思う。

なお、PPPの使い道としては、小売店の場合、コロナ後の対策として店舗改装にまわすため、再雇用対象は内装屋さんということもあったりするようだ。

以上みてきたように、細かい部分では問題はあるものの、段階的に支援金の給付は進んでいる。

※表記に間違いがあり、本文の一部を訂正しました。(2020年05月15日)

image by: shutterstock

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ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。

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