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コロナに勝つには「売る場」を変えよ。事例に学ぶ販路拡大のコツ

緊急事態宣言により店内での営業の自粛や営業時間の短縮が求められ、テイクアウトやデリバリーに力を入れる飲食店が増えています。また、飲食店などの営業縮小により、行き場を失った生鮮食品をインターネット経由で販売する動きもあります。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんが、厳しい状況でも工夫し、生き残りを図る事例を紹介し、成功のポイントや販路拡大のコツを伝えます。

売り方ではなく“売る場”を変えよ! 飲食店・食材生産の事例に学ぶ販路拡大のコツ

新型コロナウイルスの非常事態宣言から特に、お客様に来店してもらう飲食店さんのようなビジネスモデルは、営業時間の短縮要請や、外出自粛などの要請もあり、来客も減りますよね。こうなると、やはり家で食事をする、という消費スタイルになり、自然にイートインをしてもらうこと自体が難しく、テイクアウト、デリバリーのサービスを、新しく追加した飲食店さんも多く見受けられます。

このような状況の中でも、工夫をこらしているお店や会社があるので、まずは紹介していきたいと思います。

鍋料理をデリバリー?

飲食店での、イートイン、店内飲食が3密になるため、メニューを「テイクアウト」でしてもらおう、というサービスが目につきます。私はコーヒーが好きで、自分でも豆を焙煎してもらって、ミルで挽いてからコーヒーをたてたりしますが、それでは飽き足らず、よくお気に入りのカフェにいきます。

名古屋にオフィスがあった頃、その近くにあった、CAZANN(カザン)というカフェが好きでした。ここは、もともと自社でコーヒー豆を仕入れ、炭火で焙煎し、喫茶店におろしている会社ということもあり、自店舗でも出す、こだわりのコーヒーが美味しいのです。アイスコーヒーなんかは、溶けてきても味が薄くならないように、氷をコーヒーを冷やして作るというこだわりぶりです。そのカザンさんが、テイクアウトできる、「おうちコーヒー」を発売したと、SNSで告知していました。

また、東京の四谷に「どろまみれ」という居酒屋の名店があります。食べログの100名店にも選ばれるようなお店で、私もいきたくてしょうがないのですが、なかなか予約が取れず、まだいったことがないくらいの人気店です。

ここに名物の「草鍋」という料理があります。比内地鶏とタイのだし汁のスープに、やまと豚と農園野菜のしゃぶしゃぶ、そして締めの麺が絶品、という、聞いただけで美味しそうなメニューです。これをテイクアウトまたはデリバリーします、というチラシがオフィスのポストに入っていました。

鍋のテイクアウトやデリバリーも新しくて、なかなかなくて面白いですよね。当然、このメニュー以外の唐揚げとか、焼き鳥セットも注文できます。このような形で、店舗での名物メニューをテイクアウトや、デリバリーメニューにする、ということをやっているお店が増えてきました。

デリバリー、テイクアウトだけでは不十分

こういう試みはとても素晴らしいと思います。その時のポイントは3つ。まず、「名物メニュー」であること。当たり前ですが、どこにでもあるメニューだと、単なるテイクアウト品になってしまいます。

カザンのコーヒーの例でいえば、名物の炭火焼コーヒーだから、テイクアウトでもファンの方は欲しいと思います。これが単なるコーヒーのテイクアウトであれば、スターバックスやドトールでもいいし、コンビニにも100円くらいで買えるコーヒーがあります。「カザンのコーヒー」だから飲みたいのですよね。

どろまみれさんの「鍋」も同じです。スーパーにも鍋セットは売っていますし、もちろん自分で食材を買ってきても作ることができます。でもこの草鍋は、オリジナルのスープ、既に切ってあってすぐに食べられる材料、そして何より、予約が取れないお店の味、と、「ここだけ」の逸品になっています。やはり、市場で勝てる売り物だからこそ、デリバリーやテイクアウトでも買ってもらえるのです。

2点目は、店頭以外でも告知すること。分かっていそうでなかなかできていなかったりします。カザンさんは、SNSで、どろまみれさんは、近隣のオフィスや住宅にしっかり告知をしていました。当たり前のことですが「人は知らないものは買えません」。メディアを使って周知したいところです。

もう1つは、新型コロナの感染拡大がなくなった後にも、来店してもらえるように工夫をしておくことです。来店してもらえる時に使えるクーポンを用意して差し上げたり、テイクアウトやデリバリーで買ってくださったお客様に、「次回もお知らせをしてもよいですか」と許可をとり、お客様の名簿を作って、定期的に新作メニューや日替わりランチの情報を提供するなどです。今は、ラインなどで簡単にできますよね。

テクノロジーをフル活用する

次は、食材を生産、販売している方々の事例で、売り方、売る場所について考えていきます。野菜、肉、魚などの生鮮食材は、やはり消費期限・賞味期限がありますから、生産した食材を、“期限内”に卸売会社や、飲食店、販売店に卸売したいところです。

しかし、外出規制の中、営業を自粛される飲食店さんや、デパートなどでの物産展が中止になるなど、計画していた生鮮食材を、販売できなくなってしまうことが出てきています。そんな中で、「みんなで助け合っていこう!」という動きも出てきています。

フェイスブックに「コロナ支援 訳あり商品情報グループ」というコミュニティがあります。このグループは、「賞味期限切れ、在庫を抱えて廃棄しなければならない。廃棄するくらいだったら訳あり価格で販売したい。そんな方々の救済グループ」とのこと。

全国で、食材を生産・加工する方々の中で、コロナによる需要減少によって売り上げが減ってしまうため、少しでも多くの人たちに自分たちが丹精込めて作った、野菜や肉、魚を販売したい、という方々の集まりです。

フェイスブックのこのグループにアップされた投稿を見ると、とても美味しそうな食材が並んでいます。例えば、三重県の伊勢海老。通常だと、ゴールデンウイークなどの需要で、水揚げした伊勢海老は、ホテルや旅館で観光客の方に振る舞われるとのことですが、その需要が減ったため、相場が暴落しているとのことなのです。

そこで、この方は30%以上のオフで、販売します!とこのフェイスブックグループで、告知をしているのです。この方以外にも、沖縄のもずく、淡路島の玉ねぎ、大阪泉州のたけのこなどなど、全国各地の食材がアップされています。

「地域や業界を支えてきた人たちがいます。そんな方々の命の灯火を消してはいけない。そんな思いでこのグループを立ち上げました」という思いで発起人の方が立ち上げたとのことで、共感する方も多いのでしょう。私がこの原稿を書いている時点で28万人以上の人たちが、このフェイスブックグループに「いいね!」を押していました。

また、「こだわり農家に販路の選択肢を」という理念を掲げているビビッドガーデンという、IT企業が運営するオンラインマルシェ「食べチョク」では、「全商品の送料500円を食べチョクが負担する応援プログラム」を実施しています。

新型コロナウィルスの感染防止を目的とした、公立小中高の臨時休校要請を受けて、自宅での食事が増えると想定した施策ですが、家庭での料理の負担を減らすことだけではなく、全国の食材生産者さん達が登録されていて、このプログラムによって「コロナでお困りの生産者さんを応援できる」という、作る人も、買う人にもメリットがある企画です。

生産者さんは、このようにフェイスブックグループや、この食べチョクの運営者の方のように、美味しいものを作る生産者さんたちの心意気を理解して、新しい売り先を創り出してくれる動きも、出てきていることを知るとよいですよね。

インターネットは、やはりITでのことなので、合理的で冷たい感じもありますが、よく考えてみれば、便利なツールに過ぎません。やはり商売は人と人がするものなので、これらの便利なツールをうまく使うことができると、いいですよね。その意味でも、今のような危機の時も、人としての温かみを感じる2つの事例です。

まとめるとこうです。「売り方ではなく売り場を産め」です。前にも書いたように、コロナ危機のような「不確定要素」が多い状況下では、これまでのやり方では“ダメ”です。かといって、安易な値引きや値下げでは、利益は減り、ブランド価値も下がります。

飲食店のデリバリーは、もちろんイートインの時よりは安い価格で提供しますが、ポイントはそこではなく、「お客様が買える場所を追加した」ことに着目してください。

顧客視点でいることで、「お客様が便利に買えるにはどうすればいいのか?」と常に考えていると、今回のようなピンチの時にも、アイディアが閃きます。

image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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