MAG2 NEWS MENU

科学者が論破。「添加物まみれのソーセージ」の危険性を煽る困った人たち

一部からは「悪の権化」「健康の敵」のような扱いを受けている食品添加物。声高に叫ばれるとその安全性が気になってしまうものですが、専門家はどう見ているのでしょうか。今回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では著者で科学者のくられさんが、「亜硝酸ナトリウム」を例に取り、食品添加物の真実を解説しています。

「添加物は危険」というミスリードに騙されるな

添加物は危険…実際に発がん性があるんじゃないの?着色料なんか毒じゃないの?

そう考えている人は意外と多いかと思います。

添加物が使われるには相応の理由があります。香料や酸味料は分かりますが、乳化剤やpH調整剤、防腐剤なんていわれると、なんだか得体の知れないものが入れられている気がします。

多くの食品添加物が危険…とされる本の筆頭で紹介されている、亜硝酸ナトリウムを例に話をしましょう。亜硝酸ナトリウムというのは「防腐剤」や「保存料」として表記される指定添加物で、かなりの毒性があり、成人男性だとたった2gで死に至る可能性がある毒物です。

添加物が恐いといった類いの本では必ずといって良いほどこの化学物質が「発がん性有り」と書かれていて、絶対に摂ってはいけないとさえヒステリックに糾弾する論調が見られます。

たしかに亜硝酸ナトリウムは毒です。成人男性がたった2g(2,000mg)で死に至る可能性があるものが添加物として使われている…こう聞くとそんなものを食べ物に入れるなよと思いますね。特に食品添加物の中では唯一に近いはっきりと毒であると言えるものなので、当然やり玉に挙げられます。

逆にこれが安全であるという確信がもてれば、添加物はコワイと思考停止することもなくなるわけですよね。

「買ってはいけない」系のフードホラーを煽る本では常套句に書かれている、彼らの意見は本当に正しいのでしょうか?

なぜそんな毒物が添加物として使われるのか?「それは消費者のため」だからです。

最近何かと話題の世界保健機関や国際連合食糧農業機関といった機関が連携して決めた、世界中の多くの科学者が様々な実験をしてその結果を踏まえて、それによって得られるメリットが大きいから認められているのです。

亜硝酸ナトリウムは、私たちの命を守っている

亜硝酸ナトリウムに関しては使用するにあたっての明確な理由があります。

何万分の一の確率で起きる、ボツリヌス中毒を可能な限りゼロにするために使っているからです。

すべての添加物には理由があります。理由が抜け落ちると、なにやらよくわからない得体の知れない化学物質を入れているという話になるので、非常に大切なところです。

何万分の一の確率のために毒を入れるのか…と思う人もいるかと思いますが、毒というのは、あくまで一定量を超えた場合にのみ毒として作用します。詳しくは後述になりますが、塩だってコーヒーだって発がん性毒物とも栄養源とも言えるのです。

生産者としては商品として何十万、何百万個と出荷するにあたって、何万分の1程度の食中毒の危険性も避けなければいけないのは当然です。

ハム、ソーセージの類いは肉を一旦粉々にしてそれを固めるものです。そこに外気などからボツリヌス菌が入り込むと、これはかなりの確率で人を死に至らしめるボツリヌス中毒が起きます。

なのでソーセージから亜硝酸ナトリウムの使用を無くすということは、人が死ぬかもしれない危険性があるけどそれでもいいか?という話になります。結果的にハムやソーセージには1キログラムあたり最大70mgもの亜硝酸ナトリウムを使って良いことになっています。

亜硝酸ナトリウムのADI(生涯毎日摂取しても大丈夫な量)は「0.06mg/kg体重/日」となっています。つまり0.06mgの体重倍なら毎日口から入っても問題ありませんという量です。

しかし、商品によってはこの公式を当てはめると、50g程度でADIに達してしまうので、危険だ!危ない!亜硝酸ナトリウムは体を蝕む!とある本には書いてあります。

毎日ソーセージを1キロも食べる人はいない

一見正しそうに見えますが、まず最大容量で亜硝酸ナトリウムを使っているハムやソーセージがまずあまり売っていません。

より安全な別の添加物に代替され、その上で安全性を確保するためにどうしても必要な量を使っているため、実際は、市販のソーセージを袋一杯食べてもこの量には届かないようになっています。

それでも万一超えてしまったら?それも問題ありません。これも詳しくは後から説明しますが、ADIという安全を考えた基準というのは、「生涯・毎日」という部分を完全に読み抜かしていることになります。

ADIはたまの2、3日、ADIの10倍や100倍いったところでまず影響が出るとは到底考えられないレベルで安全域を設定しているから何も問題ありません。むしろ1年間通して毎日ハムやソーセージを1キロも食べる方が圧倒的に不健康です、たぶん、食塩と油の取り過ぎでなんらかの病気になるはずです。

まだ気になりますか?

「岩塩で作ったソーセージは健康的」という勘違い

じゃあ岩塩で作ったソーセージと亜硝酸ナトリウムを添加したソーセージ。どちらがいいでしょう?

実は多くの岩塩には硝酸ナトリウムがけっこうな分量で含まれており、そもそもこれがボツリヌス菌のような嫌気性細菌を押さえ込む働きがあることが研究の結果分かったからこそ、硝酸ナトリウムより安全で効果の高い亜硝酸ナトリウムを使うようになったわけです。

今回は添加物の毒性の一面を少し紹介しただけですが、ちゃんと冷静に判断すればこういう話なのです。

逆にこんなことも理解できないで科学者を名乗ってフードホラーを煽っているなら、とんでもない確信犯か、基本的常識も判断できない超アホかどちらかだと言えます。どっちもだめですね。

故に相手にする必要はないわけです。

【関連記事】

世界における添加物の取り扱い
腐らないポテトの都市伝説
食品添加物は悪者ではない
人工甘味料と飲み物

アリエナイ理科ポータルのこの記事をお読みになりたい場合は、こちら

image by: Shutterstock.com

くられこの著者の記事一覧

シリーズ15万部以上の不謹慎理系書「アリエナイ理科ノ教科書」著者。別名義で「本当にコワい? 食べものの正体」「薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬 」などを上梓。学術誌から成人誌面という極めて広い媒体で連載多数。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 アリエナイ科学メルマ 』

【著者】 くられ 【発行周期】 週刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け