香港デモ活動の中心的人物で「民主の女神」と言われた周庭さん(23)らが10日、香港国家安全維持法に違反したとして相次いで逮捕され、翌11日に釈放された事件は日本中に衝撃を与えた。日本語を流暢に話し、日本のサブカルチャーにも精通している周さんが逮捕された当時、日本のネット上では、彼女の逮捕に抗議する声がSNS上に多く寄せられた。
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そんな彼女とともに、香港デモの中心人物として活動していた香港民主化活動の元リーダー、黃之鋒(こう・しほう、ジョシュア・ウォン)さん(23)が、いま日本のネット上で話題となっている。そう、いつも周さんの隣にいた、あの好青年だ。
image by: VOA / Public domain(右:黃之鋒さん、左:周庭さん)
しかし話題は、どうやら「香港デモ」関連ではない模様。一体、どういうことなのか?
香港デモ元リーダーを日本のSNSが「チーズ牛丼」呼ばわり
事の発端は13日、Twitterに投稿された一つのツイートだ。
周庭の隣にだいたいいつもいるチーズ牛丼が気になってしょうがない
— 涼宮 遙 (@SuzumiyaHaruka) August 13, 2020
「周庭の隣にだいたいいつもいる」とは黃之鋒さんのことだが、「チーズ牛丼」とは何のことだろうか?
ここで言う「チーズ牛丼」とは、
- メガネに子どものような黒髪
- 覇気のない童顔(大人なのに中学生みたい)
- 陰キャ(陰気なキャラクター)
の男性ことを指すネットスラングで、チーズ牛丼、略して「チー牛」と呼ばれることが多い。
元々は某巨大ネット掲示板に投稿された、上のような特徴と、以下のようなイメージイラストが元ネタとなっている。
スクリーンショットを自分のFacebookに投稿して黃之鋒氏本人まで届いた。めっちゃいいね伸びてて草 pic.twitter.com/QxFWq9ZMmS
— 芋圓豆花 (@m1kachan_) August 13, 2020
た、確かに見た目は黃之鋒さんに似ている…と言えなくもない、かもしれない。このイラストの男性は「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします。」と、牛丼チェーン「すき家」の名物メニューをイキって(?)注文している。ネット上では、2018年頃からこのイラストのような男性のことを「チーズ牛丼」「チー牛」と呼んで、煽ったり揶揄しているのだ。
ちなみに、この絵を書いた方のツイートは以下のとおり。特にこういう男性を煽る目的ではなく、昔の自分自身を描いただけで、どうやら偶然の産物だったようだ。
昔自分を描いた絵が、まとめブログで気持ち悪がられて笑いが止まらない。
まあ確かに、あれは気持ち悪いわな。
三色チーズ牛丼は大盛りなんて今はくえないよ。— いびりょ (@ibiryo_sun) October 24, 2018
こういう事なんスわ… pic.twitter.com/fffh9S3Tar
— いびりょ (@ibiryo_sun) October 22, 2019
ではなぜ、日本のネット上で「チーズ牛丼(チー牛)」と黃之鋒さんが話題になっているのかというと、先の「周庭の隣にだいたいいつもいるチーズ牛丼」ツイートに、黃之鋒さん本人が気づいて反応したからだ。
「チーズ牛丼食べたことないんだけど…」黃之鋒の器のデカさ
どうやら、この騒動に気づいた(誰かに教えられた)黃之鋒さんは、自身のフェイスブックに以下のような投稿をしている。
なんと、黃之鋒さんは香港にある「すき家」のチーズ牛丼の画像とともに「まだチーズ牛丼食べたことないんだけど」と投稿したのである。自身が日本のネットで「チーズ牛丼(チー牛)」と呼ばれていることを認識したのだ。
さて、そう呼ばれていることにまんざらでもない様子の黃之鋒さん。「チー牛」の特徴である「メガネ男」というイメージについて投稿された日本人作成の画像を引用して、以下のようなツイートも投稿。
— Joshua Wong 黃之鋒 (@joshuawongcf) August 13, 2020
実は黃之鋒さん、周さんに負けず劣らずの日本オタク文化好きで、ガンダムマニアとしても知られているようだ。
Freedom gundam pic.twitter.com/jwsR6Kg6cV
— 月蛾天衝 支解 (@carrielamkoros) August 13, 2020
❤️ 俺がガンダムだ@oichanmusi pic.twitter.com/P82QsQXyqh
— Joshua Wong 黃之鋒 (@joshuawongcf) August 13, 2020
日本では「チー牛」などと揶揄されてしまうメガネ童顔黒髪男子だが、香港や台湾ではよく見かける容姿だし、しかも一連の香港デモを周さんと率いて、中国共産党や香港政府から、香港市民の「民主主義」を守ろうした元リーダーである。彼に限って言えば「陰キャ」だとか「イキって牛丼食ってそう」ということはないのだ。
とかく童顔やメガネ男子に厳しい日本だが、他人をルックスで判断してはいけないということを、今回の「チー牛」騒動は教えてくれたのかもしれない。
しかし、黃之鋒さん、今回の「チー牛」騒動を楽しんでくれたようで、日本人としては更に親近感が増してしまった。香港の未来や、彼らの安否も含めて、これからますます香港民主化運動に目が離せないのは間違いない。
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image by: Honcques Laus / CC0