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台湾侵攻の準備整いつつあり。景気回復で再び始まる中国の大攻勢

新型コロナウイルス感染症の流行蔓延からいち早く立ち直り、劇的なスピードで経済回復を果たしつつある中国。未だコロナに苦しむアメリカを尻目に覇権奪取に向け攻勢を強めていますが、中国経済の恩恵を受ける我が国は、米中の間でどのような立場を取るべきなのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、日本が今後明確にすべき「立ち位置」について考察しています。

中国の景気回復で世界は

中国の景気回復は目を見張るものがある。その中国は世界の覇権を取るために世界に働きかけている。それを検討する。

中国の経済・軍事面での攻勢

中国の景気が回復して、自動車販売も増加してきた。この中国市場で売れているテスラが黒字化して、株価は今年1月に比べると2倍になっている。中国での製造業の生産は前年比4.8%増加である。

この恩恵で、トヨタなど自動車メーカーの業績回復も中国市場での販売が好調なためであり、中国市場に進出している自動車メーカーは回復してきている。

しかし、中国の小売販売は1.1%の減少となっている。ここに国務院は、景気対策をするとしている。

経済は戻り始めて、購買平均単価で比較したGDPでは、既に米国を中国が抜いている。米海軍の艦艇数でも中国海軍の艦艇数が仰臥してきた。艦艇350隻の目標を中国海軍は達成しているが、米海軍は達成できていない。

これにより、中国は第1列島線を越えて、第2列島線まで進出していたが、とうとう第3列島線(ハワイ諸島)まで攻撃演習範囲を拡大してきている。

台湾攻撃の準備も着々と進めている。海軍陸戦隊などの部隊構成を変え、武器弾薬の備蓄、食料の備蓄を着々と進めている。台湾上空にも爆撃機を侵入させて、台湾の戦闘機の応戦体制を見ている。

というように、経済・軍事的には、米国を抜かす勢いになっている。中国の弱点は、ドル基軸通貨制度であり、ドルに世界貿易決済を押さえられていることである。それを武器に米国は、中国に圧力を掛けている。

これに対して、中国は米国債を売ると脅しを掛けるが、米国は「どうぞ」と対応。FRBが売り出した米国債を全て購入することになるだけで、金融緩和の現在、何でもありなので、恐ろしくない。

しかし、限定的な通常戦争が起これば、当初は中国軍が勝ち続けることになりそうである。

そして、インドとの国境紛争は、ロシアの仲介により、中印でヒマラヤの国境係争地帯から即時撤退と緊張緩和で合意した。これでインドを米国の陣営から外すことを狙っている。

また、中国は、欧州を味方に引き込む方向で、王外相を欧州に派遣して、習近平主席が次にドイツ訪問する予定を立てている。

ドイツの自動車会社も日本と同様に、中国市場での売り上げが50%以上になり、無視できない市場になっている。

インドと欧州を米国から引き離して、中立化させることを目標としているようである。

一方、豪州は、反中国で突き進んでいるが、中国の景気回復で、鉄鉱石などの輸出が増えている。これに対して、中国政府は難癖を付けているが、豪州は物ともしない。それは日米など同盟国が中国から輸入先を豪州に変えることで、中国への輸出減少分を埋め合わせるとみているからだ。

世界の景気回復とともに、資源国通貨の豪ドルが上昇していることでもわかる。徐々に米中の経済分離が進む、それぞれの陣営内だけでの輸入輸出を行うことになる。インドを米国陣営に引き込むことを豪州が努力しているのも、反中陣営内での輸出を増やせるからである。特にレアアースの輸出が中国から豪州に転移するはず。

この米中経済分離(デカップリング)で、それぞれの陣営内で相手陣営輸入品の代替が進むことになる。韓国が中国陣営に行くなら、日本は韓国・中国が強い半導体とAVの代替国になるしかない。

そして、米トランプ大統領は、米国には新型兵器(宇宙兵器か)があり、通常兵器で優勢な中国やロシアに負けないと強がりを言っているが、どうであろうか?

中国強国化での日本の針路

ドイツのメルケル首相は、米国のトランプ大統領が大嫌いであり、米国の次期大統領がトランプ氏なら、日本と欧州の連合を作り、米中のどちらにも味方しない中立的な位置を目指すことになる。

日本も難しい選択を迫られることになる。二階自民党幹事長、今井秘書官は親中派として、米国は警戒している。その二階俊博氏が菅官房長官を首相にすると、二階氏の意向が外交にも反映されることになる。非常に心配な状況だ。

米国は、日本をファイブ・アイズ諸国にはなれないが、それと同様な米同盟国化することを目指しているが、それは豪州と同様な反中国家化することである。

EU離脱した英国も日本とのFTAを急ぎ締結した。日本をアングロサクソン陣営に引き込む必要があるからであるし、英国は、TPPにも参加すると言っている。対中包囲網への参加である。

米中はハイテクなどの経済戦争に入ることは確実であり、もし、日本が親中的な対応をするとなると、日米安保協定にも大きなダメージとなる。中国は、尖閣列島は勿論のこと沖縄などにも手を伸ばし始めている。これを阻止できるのは日米同盟しかない。

しかし、現状の経済力からすると、中国の方が米国より上で、日本は中国経済の恩恵を受けている。中立的な立場が一番良いことになる。欧州と日本は利害が一致している。

バイデン候補であれば、同盟国との協調的な立場を取るが、トランプ大統領は米国第一主義であり、米国の利益を最大限図ることになる。日本にも容赦がない。どんどん、要求を出してくることが予想できる。

一番大きいのが、ドルの棒引き、米国債の価値半減などの処置であろうか?円高ドル安の金融為替政策が、日本にとって、一番脅威になるだろう。

しかし、米中の選択を間違えると、日本の将来は暗いことになる。親中的な政策だけはしてはいけない。米国の要求をかわしながら、親米と言う姿勢を変えないことである。

米国との安保条約を優先して、その中で中国とも親しくすることであると見るが、それをどこまで、米国が許すのかが外交課題でしょうね。トランプ氏よりバイデン氏の方が日本にとってはやりやすい事だけは確かである。

菅政権の政策

討論会を見たが、一番首相に相応しいのは、岸田政調会長であり、日本の現状を的確に見て、その上で政策を建てようとしている。私の政策提言とも一番、近い。

菅官房長官は、実行力があるように見える。しかし、個々の政策を述べるだけで、日本全体の現状を述べていない。将来的には、消費税を増税するというのは、1つの見識だと思う。

石破さんは、経済復活に農業や観光・サービス業を上げていて、産業構造上での付加価値を見ていないようである。日本の現状を把握していないように感じる。

大規模農業が今後、農家の所得水準を上げるためには必要であるが、そうすると地方の人口は減少することになる。農業だけでは地方創生はできない。地方にも、付加価値の高い工業的な産業を興す必要があるが、それを述べていない。

菅さんが、携帯電話料金が高いというのは、納得する。規制緩和、特に省庁間の縦割り組織での壁を崩すということは賛成である。デジタル庁での省庁間の壁を取り払い、一本化したシステムを作れば、日本の発展に寄与することになる。

個々の政策は納得するが、全体的な日本の構造変革という構想がない。それと弱点なのが、外交分野(特に対米交渉)だと見る。ここを強化する必要があり、これのできる人を側近に入れる事だと思う。

もう1つ、心配していたことが起き始めている。生活困窮者の増加だ。失業リスクのある休業者数は220万人で、前年同月に比べ34万人多い。7月の有効求人倍率は東京都0.97倍、大阪府0.99倍と1倍を割った。雇用情勢は悪化の方向だ。

このため、解雇された非正規労働者、フリーランスだけではなく、ベンチャー企業や飲食業界の経営者などでも同様に生活困窮者が出ている。

コロナ不況の景気後退が生活を直撃し始めている。自殺者も8月だけで例年より250人も多くなっているという。

そして、11月から予測されている第3波が襲うと、この生活困窮者は益々増加することになる。この医療対策は勿論、経済対策も今から準備して、法整備を進める必要がある。巷で噂される総選挙より前に、法の整備だけはしておいてほしいものである。

コロナ不況での自殺者の方が、コロナ感染死者より多くなることが見えてきた。こちらに重点を移した対策が必要だ。菅首相なら、その腕力で、できるはずだし期待値が高い。

米大統領選挙

トランプ大統領の暴露本が出て、今年3月に著名な記者ボブ・ウッドワード氏とのインタビューで、新型コロナウイルスの脅威を当初から認識しつつ「軽く見せたかった」と語ったという。

この発言から批判が殺到したが、トランプ氏は防戦に躍起で、「大騒ぎしてみんなを恐怖に陥れるわけにはいかない」と述べている。

先日も第1次大戦で死亡した米軍人を「馬鹿者」としたことなど、この頃、トランプ大統領が不利になる暴露が多発している。その上に軍人たちの非難に、ペンタゴンの住人は、戦争をしたがっていると発言。軍人票の多くを失いかねないことになっている。

そして、追加経済対策5,000億ドルの予算が米上院で否決された。特別給付が無くなり、失業者は失業手当だけの支給になるので、手取りが大幅に落ちる。今まで投資していた株を売り、生活費をねん出する必要にもなる。このため、株価が落ち景気は悪くなる。それ自体がトランプ大統領には不利だ。

その上、トランプ大統領は8月に過去最高2億1,000万ドルの献金を集めたものの、大統領選史上最高をたたき出したバイデン陣営の8月分(3億6,450万ドル)の6割程度しかない。最終局面のCM費用がバイデン候補に負ける事態になっている。

ということで、トランプ氏を落とそうと、民主党、共和党保守本流と軍産学複合体が束になって、トランプ氏に襲い掛かっているような感じになってきた。

しかし、トランプ氏には、熱烈なトランプ支持者がいる。それと隠れトランプ支持者がいるので、勝敗を予測できない事態になっている。世論調査でも4ポイント差までトランプ氏が追い上げている。

さあ、どうなりますか?

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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