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菅義偉新首相と検察が裏取引?「安倍夫妻は不問に」談合政権の行く末は

14日に行われた自民党総裁選で予想通りの圧勝を収め、16日招集の臨時国会で第99代内閣総理大臣に指名される見通しとなった菅義偉氏。その菅氏については、首相就任後すぐに解散総選挙に打って出、長期政権化を目論んでいるとも囁かれていますが、はたして思惑通りに事は進むのでしょうか。ジャーナリストの高野孟さんはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、菅氏が首相の座を手中に収めることに成功した「ウラ事情」を記すとともに、「談合で生まれた政権は長続きしない」とバッサリ斬っています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年9月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

どうも短命に終わりそうな菅義偉政権――10月解散・総選挙はいくら何でも無理筋では?

安倍晋三首相が辞任表明した直後に内閣支持率が急上昇したことを以て、自民党の一部には「勢いのある早いうちに解散・総選挙を打つべきだ」という声が出、マスコミもそれを囃しているが、これは勘違いも甚だしい。

共同通信で8月23日の36%から30日の57%へ1週間で21ポイントも跳ね上がったこのアップ分には、安倍支持者の「今回はみっともない投げ出しじゃなくてよかった」「でも安倍さん、かわいそう」といったねぎらいや同情の念だけでなく、むしろそれ以上に安倍批判者の「あ~あ、ようやく辞めてくれたか」「明日からあの顔を見なくて済む」といった安堵感のようなものも含まれていて、いずれにしても次を狙う菅義偉官房長官に対する積極的評価や期待感を表す数字ではない。

菅氏自身が「国民が一番やってほしいのはコロナを1日も早く収束させ安心して生活できるようにすることで、こういう状況で解散などということではない」と常識論を述べ、また総選挙となれば要となる二階俊博幹事長も「いま早急に国民に問わなければいけない課題が存在しているわけではない」と珍しく正論を吐いているのは、おノロケではない。多くの国民の生死が懸っているコロナ禍への対応責任は権力を握る者にとっては岩よりも重く背中にのしかかっているのであって、軽々に「解散」など口にしているのは河野太郎氏のような脳天気なボンボンだけである。

メディアもそれを面白がって煽るのは止めたほうがいい。首相が国民の切実な関心事とは無関係な自分勝手な政局運営上の都合で解散を弄ぶから、選挙の度ごとに投票率が下がっていく。こんな馬鹿なことはすべきではないと諫めなければならないはずである。さらに突っ込んで行くつもりなら、石破茂元幹事長が今回の討論の中でも持論として主張したように、憲法第7条を曲解し、天皇を政治利用して首相が好きな時に解散を打てるという吉田茂以来の悪弊を止めるべきだという議論を、大いに沸騰させなければならないのではないか。

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どうにもタイミングが難しい総選挙

そうは言っても、今の衆議院議員の任期は21年10月21日までなので、いずれにせよそれまでには総選挙を行わなければならない。菅氏としては、21年9月までの自分の任期中に解散を打って勝って、1年後に再選を果たして長期政権を目指したいのは当然である。しかし、日程的にはなかなか難しく、解散を打てないまま9月総裁選を迎えて他の誰かに席を譲ることになる公算もかなり大きい。

いまマスコミが取り沙汰している10月中もしくは11月初旬にかけてのいわゆる「早期解散・総選挙」は、その時期がまさにコロナ禍の現在の第2波が抑え込めるかどうかの瀬戸際で、国民の苦しみと、それが収まらないのではないか、再拡大するのではないかという不安とが、おそらく最高潮に達しているという最中に、お遊びに等しい約1カ月間の政治空白を作り出すことができるのか、ということになる。

もう1つの要素として、10月はかねてIOCが東京五輪を来夏に開催するか中止するかの判断を下す期限と設定していて、これまたもう1つの瀬戸際である。JOCはじめ日本側は、その決断期限を1月くらいまで延ばしてくれるよう裏から働きかけているようだが、参加予定の選手やチームにとっては、他の競技大会の日程と折り合いをつけながらコンディションを整えていくにはこの10月がギリギリだとも言われていて、決断の先延ばしが可能かどうかは分からない。そういう微妙な時に首相以下の政治家が選挙に夢中になっているのはどういうわけかということになるだろう。

来年前半もほとんどチャンスはない

その先、年末・年始になると、コロナ禍が少し収まってくる可能性はないとは言えないが、逆に秋から冬にかけてインフルエンザの流行と重なってくる危険があるし、何よりもいよいよ持ち堪えられなくなった企業や店の倒産・廃業や失業がどんどん増え出すのがこの頃で、政府も自治体も経済破滅を食い止めることに全力を注がなければならないだろう。7月は都議選があり、これを重視する公明党はその前、春の総選挙は絶対に認めない。そして、やるかやらないか五輪……。となるともう9月が来てしまって、限りなく任期満了に近い「追い込まれ総選挙」ということにならざるを得ない。

その直前の自民党総裁選は、今度こそ派閥ボスの談合でなく地方党員の投票も含めた本格的なやり方で行わなければならない。その時に、どう考えても何もいいことはなさそうなこの1年間を終えて菅氏の人気が上昇していれば彼の再選ということになるが、それは相当難しく、むしろ「菅では総選挙は戦えない」という党内世論となって菅氏は去っていくことになる公算大である。

「暗い」「冷たい」という印象がまつわりつく菅氏

一国の指導者は「華がある」のがいいに決まっているが、菅氏はその正反対で「暗さ」「冷たさ」しか感じられないのが不幸である。それは表情や物の言い方という外面的なことだけではなくて、彼の心情のもっと深いところに根差しているのではないか。

例えば、ずっと前から岸田文雄政調会長に事実上の禅譲をするつもりであったはずの安倍首相が、この5月あたりから菅氏にシフトしたのは何故なのか。マスコミに行き渡っている解説は、「しばらく前からどうも頼りないなあと思っていたところ、岸田がまとめた『特定世帯に30万円給付』方針が二階と公明党の連携プレーで『一律1人10万円』に引っくり返されてしまって、存在感を失った」というものだが、そんな生やさしい話ではない。

消息通によると、安倍首相が菅氏に傾き始めたのは、それ以前のモリカケやサクラなどの疑惑を抑え込むのに貢献したのみならず、河井克行・案里夫妻の巨額買収事件、秋元司衆議院議員のカジノ汚職・証人買収事件が安倍首相及び昭恵夫人に波及することを菅氏が体を張って阻んだことへの感謝の念からのことである。

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2つの案件をもみ消した闇工作

案里氏の事件は、買収資金を受け取った100人以上もの地元議員ら関係者が片端から法廷証言に呼び出されるという異例の裁判となりつつあるものの、肝心のその買収資金1億5,000万円の出所については不問に付されることになったようだ。同じ選挙区のもう1人の自民党ベテラン候補には1,500万円なのに、なぜ案里氏に10倍もの金が注がれたのかについては、克行氏の後ろ盾の菅氏と、案里氏のような感じの女性議員を増やしたいという趣味がある安倍首相とが意見一致して、自民党から出る正規の選挙資金を上回る分を官邸機密費から拠出したのではないかという疑惑が囁かれており、検察もそれを承知していた。それを確かめるには、自民党本部と首相官邸を捜査するという前代未聞の事態となるため、成り行きが注目されていた。

また、秋元氏のカジノ疑惑に関しては、共犯者として逮捕された淡路明人氏が問題で、淡路氏は「クローバーコイン」販売のマルチ商法で安倍首相と2人で並んだ写真を餌に3万5,000人を騙し17年に取引停止命令を下され、その後に経緯不明ながら秋元氏の事件に関わっているが、安倍マルチ商法への協力のお礼で昭恵夫人が下関に開設したバー&ホテルUZUのスポンサーになっている。

河井夫妻の事件をこれ以上広げないことは菅氏と安倍首相の共通利害であり、秋元・淡路の事件を安倍首相と昭恵夫人に波及させないことは安倍首相の最新の関心事である。そこで菅氏は、何としても検事総長に押し込もうとしていた黒川弘務前東京高検検事長を「賭け麻雀疑惑」で失脚させると同時に、無理やりだった検察庁法改正案を取り下げることで検察を宥めると共に、その代わりに上の2つの事件に関して菅氏や安倍夫妻に及ばないよう手加減してもらうことを了承させたと言われる。

官邸忍者集団を操る菅氏の隠微

安倍首相は大いに感激して「こういうことは菅ちゃんじゃないとできないよな。岸田には無理だ」と漏らしたそうで、この安倍“有終の醜”のもみ消しのお礼として後継を菅氏でまとめるよう計ったとされる。

黒川氏の賭け麻雀疑惑が表沙汰になったのは、警察庁出身の杉田和博官房副長官を頂点とする官邸の忍者集団の仕掛けと見られている。

16年に日教組の岡本泰良委員長が池袋のキャバレー通いをしていて馴染みの女性がいるという話を週刊誌に書かせて失脚させたのも、17年に文科省の前川喜平元次官が新宿の出会い系バーに出入りしていることを読売新聞にリークして辞任に追い込んだのも、官邸御用の元TBS記者が強姦容疑で逮捕されそうになったのを救って相手の女性に罪をなすりつけるような情報操作をしたのも、すべて菅氏の采配の下での官邸忍者集団の仕業で、これこそが菅氏が地位を上り詰めてきた過程での最も得意とする隠微な技なのである。

こういう陰謀工作が菅に纏わりついて離れない「暗さ」の根源であり、それは昨日今日に身に付けたことではなく、どこにいても常にトップにとって重宝な参謀役というポジショニングから身についたものなのだろう。

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「談合」で生まれた政権は長続きしない

さらに「暗さ」とも関連するが、談合で生まれた政権は初めから公明正大な正統性を欠いて「隠微さ」を抱え込むので、長続きはしないというのが一般法則である。

典型的なのは森喜朗政権で、2000年4月に小渕恵三首相が脳梗塞で倒れると、幹事長だった森氏が青木幹雄官房長官、村上正邦参院議員会長、野中広務幹事長代理、亀井静香政調会長を赤坂プリンスホテルの一室に召集し、その席で森氏を後継とすることを決めたので、後々これが「赤プリ5人男」と揶揄されることにもなった。森氏は01年2月の「えひめ丸」沈没事故への対応のお粗末をきっかけに支持率が8%まで下落して行き詰まり、1年余で総辞職した。

今回は5人ならぬ5派閥の談合で、総裁選を行うまでもなく菅氏に決めていた訳で、これを密室と言うにはややためらいもあるが、自民党の国会議員の多くや地方の党員・支持者にとっても国民にとっても全く見えないところでの決定であったことは同じで、こういうやり方はそれによって生まれる政権に勢いを与えることにはならない。

もし菅氏が、自分の最大弱点が「暗さ」の印象にあると自覚していれば、ここは敢えて正々堂々、党員投票を含む本格的な総裁選を自ら希望して実施して最初からそれを払拭することに賭ければよかったのだろう。それをしなかったのは、彼が小心者である証拠である。

閣僚・党人事にサプライズはあるのか

菅政権の本質は「安倍なき安倍政権」だから(本号FLASH 参照)内閣の骨格は大きく変えられないだろう。第1次森内閣が小渕政権をほとんど居抜きで引き継いだのと同じである。

具体的には、麻生副総理・財務相、茂木敏充外相、西村康稔経済再生相、二階俊博幹事長は留任だろう。官房長官は安定感のある森山裕国対委員長が本命で、河野太郎防衛相という説もあるが、口の軽い奴はスポークスマンには向かない。

総務相に橋下徹日本維新の会代表をサプライズ的に迎えて「自公+維」政権への布石とするのではないかという説もあるが、橋下氏のような目先の利く者が短命で終わりそうな菅氏に将来を託すかどうかは、かなり疑問である。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年9月14日号より一部抜粋)

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