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いじめや不登校を隠ぺいすれば出世できる法則も。いじめ探偵が抱く「この国はどこを向いて教育を行っているのか?」という疑問

巧妙かつ悪質化する教育現場でのいじめ。しかしながら我が国の対策は常に後手後手に回っていると言っても過言ではありません。そんな現状を取り上げているのは、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。阿部さんは自身のメルマガ『伝説の探偵』で今回、3月22日の関係府省庁連絡会議で話し合われたという、いじめ防止対策の強化に向けた「14の検討項目」を誌面で紹介するとともに、誰よりもいじめの現場を知る立場からその問題点を指摘しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:いじめ対策、国は何やってる?

いじめ対策、国は何やってる?

ニュースや各省庁の発表によれば、2024年3月22日、いじめ防止対策に関する関係府省庁連絡会議が開かれたとある。

ここでは、「14の検討項目」を話し合っているというが、ニュースや新聞社の記事ではせいぜい3項目程度しか表記されず、目立つ大臣の言葉くらいが紙面に載る程度だ。

では、この14項目とは何なのか?

  1. 犯罪行為が疑われる場合の警察連携の徹底など、関連機関との連携の強化
  2. 被害児童生徒・保護者のへのケアと加害児童生徒への指導・支援方策
  3. 保護者と学校がともにいじめ防止対策を共有するための普及啓発方策
  4. いじめの重大事態における総合教育会議の活用等・文科省による厳格な指導
  5. 重大事態の認知から調査開始までの迅速な処理に向けた検討
  6. 専門家による重大事態調査等に関する助言方法
  7. 重大事態に関する国への報告(任意)による状況把握の仕組み
  8. 重大事態調査における課題抽出に向けた報告書の分析方法の検討
  9. ネットいじめについて対策強化に向けた方策検討
  10. リスクマネジメント力のある教育長の確保方策
  11. いじめ対応における「第三者性確保」の方策
  12. 学校外からのいじめ防止対策アプローチの確立方策
  13. 被害児童生徒のケアの方策
  14. 学校教育におけるいじめや犯罪についての学習の充実

挙げられている14項目は以上の通りだ。

こうした14項目に関する資料は文科省やこども家庭庁HPで公開されているので、興味のある方は目を通してみると良い。

見方や立場によって、様々な意見が分かれるところだろう。

例えば、全体的に見れば、これまで治外法権的に扱われてきた、学校内での犯罪行為=いじめが、しっかりとここでは犯罪行為等と表記されているということは、声を大にして、「それ犯罪行為だから」と言えることに繋がるだろう。

一方で、小中高生が2023年度いじめで補導や摘発された事件は、いじめ防止対策推進法施行以降、過去最多で292件となったとニュースがあった。

それによると、暴行が102件、傷害60件、児童買春児童ポルノ46件などがあり、小学生が過去最多で小学生では強要が多く、中高生では児童ポルノが目立ったそうだ。

確かに292件はだいたい30時間に1件だから、多いと感じる方もいるかもしれないが、いじめの認知数はおよそ68万件(2022年)ほどだから、0.0004%に過ぎないわけだ。そして、学校が警察に通報した件数はおよそ2,000件ということだから、14.6%が事件となり残りは事件とはなっていないと見ることもできる。

連携は進んでいるのだろうが、本当に進んでいるのかと言えば疑問が残る数値が出ているということもできる。

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被害者ケアは進んでいるか?

2項目目に挙げられている「被害者ケア」「加害者指導」だが、現場にいて、そうしたケアが行われているのを見たことはほとんどない。

例えば、湖西市いじめ隠ぺい事件の被害側は高校受験において必要な情報を隠され進学に支障をきたしたという。これについては現在取材を行っているところだが、不利益処分の一種とも言えるだろう。

【関連】暴かれたウソと壮大な開き直り。中2女子生徒が助けを求めた手を払いのける静岡県湖西市いじめ隠蔽事件の絶望

大島商船高専いじめ自殺未遂事件の被害者は、被害を訴えたことで不当処分をされたし、その証言をした同学年の生徒も不当処分の対象となっている。

【関連】探偵が暴露。あまりにも酷い大島商船高専いじめ自殺事件の実態

前回取り上げた町田市立の中学校では、いじめの聞き取りの際に聞き取りに当たった教員から「将来に影響する」と脅迫されたという。

【関連】また町田市か…隠された「中3いじめ自死」事件。LINEで送られた「死ね」の文字、死去の前日まで続く難癖、校長が隠ぺい“陣頭指揮”か?

例えば、いじめ自死事件が起きた後、在校生などに対して、週1回くらいしか来ないスクールカウンセラーが一定期間毎日学校にいるようになったり、窓口が開設されることはあるが、被害者にスクールカウンセラーが、ソーシャルワーカーが付き添うというのは、あまり目にしないのだ。

ある被害保護者の団体の方々が言っていたが、「スクール○○」というのは学校の味方か子分組織のようなもので、仮に学校と敵対、対立する様相になると、途端に対応が悪くなるという。

相談した内容が全て校長に報告されて、それを切り貼りされて都合よく編集され、教育委員会に報告されたという被害保護者もいた。

こうなってくれば、相談するのが怖くなる。

一方で、過去に、スクールカウンセラーの方々から相談を受けた事があるが、その雇用が異常なほど不安定で、一般の非正規雇用より過酷なんだという。それに伴い、結局、校長の意見に異を唱えようものなら翌年は職を失うこと覚悟しないといけないそうだ。問題を共有して対処しなければと思って報告したところで、結局共有されずに児童がその後不登校になって連絡すらできないと嘆いていた人もいた。

東京都のスクールカウンセラーが一斉に雇止めにあったというのも報道されていたが、何か困ったことがあれば、カウンセラーにと決まり文句のように政治は言葉に出す割りに、その処遇はブラック労働の斜め上を行くものなのだ。

それはまるで、交通整理しか習ってない警備員を丸腰で警察の役割を果たせと犯罪現場に送り出すようなものだ。最低賃金で保障もない割に責任だけは何よりも重い。

どうやら国は小さな予算をつけて推進しているようにも見えるが、焼け石に水なのだろう。

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最も項目として多い重大事態

重大事態いじめとは、いじめにより児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。いじめにより児童生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。という極めて深刻ないじめ事件のことである。

ほとんどは、犯罪行為が確認されるというものだが、第三者委員会が設置されるのも、こうしたいじめの場合だ。

正直なところ、各省庁が話し合う項目として、重大事態についてを挙げるのは、もっともだ。しかし、資料を見る限りもっともではあっても、その内容をみると、人選の確保や職能団体への説明などとあるから、未だに大臣クラスの会議でこれをやっているのですか…とアニメで言えば頭にトンボがとんでいるような(表現古い)あっけにとられる状態だ。

そして、私が資料を読んでいて違和感が残ったのは、一点。

学校や専門家の意見を求める一方、被害側の意見を求める一文は一つも確認できなかったことだ。

一応書籍も出している専門家の端くれとして言うならば、専門家同士で話してもせいぜい出るのは学校のオペレーション的な問題と法解釈の問題程度だ。当然、改正期に改正できずに座長試案で空中分解したいじめ防止対策推進法は改正すべきなのだが、専門家とAIがコネコネと問題をブラッシュアップするのであれば、被害側にインタービューした方が早いし確実なのだ。

一方で、いわゆる御用学者の中には、いじめ問題に出てくる保護者に敵対心を抱き、第三者委員会の設置を求める保護者に対して「後付けいじめ」「いじめ利得」を求めるものとして問題提起するものまでいる始末だ。

仮にこうした意見に省庁が毒されれば、いじめ対策はもはや後退する一方で、声にならない被害者のか弱き声は、権力におもねいた御用○○の方々の大きな声にかき消されてしまうだろう。

まあ、だから対策が、全く効果がないというのは、各統計の数字を見れば明らかなのだが。

会社に置き換えるのはどうかと思うが、効果がない対策しか打てないコンサルタントは、秒でクビになる。結果を出せない探偵は、どんなに良い学歴で親が偉い人でも、「ヘボ探偵」「無能」の烙印の元、依頼は来なくなる。

偉ければ黒でも白になるのは、『タイムボカン』の歌にだけにしてほしいものだ。

被害側の意見に耳を貸さないのであれば、結局延々にこの問題は解決しないであろう。

被害に悩む方、いじめ問題に関心がある方、専門家の皆さんには、改めて、今、国が、自治体が、何をしているのか、新聞やテレビと言ったメディアフィルターを通さずに、自らの耳と目で確かめてみて欲しい。

人生ゲームで言えば、今は、ピンを指す車の色を決めているところだ。

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編集後記

こういう活動をしているので、取材をよく受けます。商店街の書店やコンビニでは並んでもいない教育関係専門誌さんからも意見を求められることもあり、その都度、雑誌をもらったり、その後、最新号を送り続けてくれる編集さんもいたりします。

ですので、そういう本の誌面はかなり読んでいます。

その上で思うのは、うーん、何か後退しているなということです。

そして、これまであった様々な取り組みも中止になったり、再編されているところもあります。

新たな取り組みが過去失敗と評価されたものに戻っていくような状態です。

麹町中の奇跡も今戻しているみたいだし。

また、高知県南国市のように、第三者委員会を開催しますと大々的にやって、そのまま放置し、4年近くたってもまだやらないという大問題もあります。神戸市18年いじめ隠ぺい事件もそうですが、これを問題と捉えるのであれば、責任問題はきちんと追求しないと、処分されないならこれでいいんだとなってしまいます。

【関連】テレビ局に「放送するな」高知小2水難事故の関係者が送りつける悪質な“嫌がらせ”の手紙
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まあ、いじめや不登校は隠ぺいすると出世するの法則があるので、頑張って隠蔽して、こどもたちの命を削り、将来に不安を残させてわが身のみ出世して、「僕偉いんだ!」と言いたいのかもしれませんが、それから学ぶものって不正と隠蔽はバレても認めなければいいという反面教師と社会の理不尽さしかないと思います。

どこ向いて教育してるのか疑問しかありません。

そんなに予算があって偉い人が考えているなら、私が自らの知識と経験を全て注ぎ込むので、「いじめ探偵」を先ずは100人くらい増やしませんか?国が彼らの給与とか面倒見てくれるなら、もう言うことなしです。ただ不正隠ぺいもいじめ探偵は暴く上、一切忖度しないので、対応は大変かもしれませんね。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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