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江戸時代からの常識!?「お客様のLINE」を知らないお店が潰れるワケ

インターネットでのショッピングが主流となっている現代において、顧客データは重要な販促ツールです。しかし、楽天やヤフーなどのECモールでは、顧客データを出店者には渡さないルールになっており、そのことを当然だと受け入れているお店も多いようです。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、顧客データを集めることに注力しているお店を例に出しながら、顧客データというものの重要性を語っています。

ネットショップは楽天に騙されている?

インターネットは、この20年間で大きく世の中を変えました。小売業も懸命にその変化についていこうと頑張っています。しかし、小売業の基本は変わってはいないのではないでしょうか。顧客データのことから、それを考えてみます。

あるお店のコンサルティングをした時のことです。そのお店はECショップだけで商売をしているお店でした。店主に「顧客データを見せてください」とお願いをすると、「顧客データは持っていません」と言います。

私はビックリしました。EC専門のお店ですよ。お客様の情報が無くて、どうやってお客様とのコミュニケーションをとるのでしょうか。どのお客様が、いつ、何を、どれだけ買ったかということが分からなくてもいいのでしょうか。

「どうして顧客データがないのでしょうか」と尋ねますと、「当店は楽天やヤフーに出店して販売しているだけなので、顧客データをもらうことはできません」。そうなのです。楽天やヤフーのECモールは、出店者に顧客データを渡しません。渡せば、そのデータを使ってお客様にお店独自のプロモーションや販売をするところが出てくるからです。

顧客データはECモールにとって、命綱でもあります。店主は、顧客データをもらえないことを当たり前のこととしていました。それで店主は大丈夫だと思っています。不特定多数のお客様を相手にしているのだから、個別のお客様の情報は必要ない。また、お客様は商品を始めとする情報をショップ内で十分に知ることができる。それに、ECモールからお店のメルマガも発信しているので、お客様には情報は届いている。さらに、お客様の商品レビューやツイッターなどのコメントで、お客様のニーズはつかめる。モールの解析機能を使えば、顧客の分析やリピート率などが分かる。だから、顧客データは必要ないということです。

このお店は、出店以来右肩上がりの売上を示していました。ところが、ここのところ売上が伸び悩んできたので、私に相談をしたというわけです。私は、顧客データを活用すれば、売上は回復すると考えました。そこで、私は顧客データの重要性を説明しましたが、残念ながら分かってはもらえません。今までの考え方を変えることに抵抗があったようです。やむなく、別の手法で問題を解決することにしました。勿体ない話です。

メールアドレス1万件、LINE会員数7,000件で大成功

その一方で、顧客データを集めるのに一生懸命なお店のことを知りました。飲食店コンサルタントの三ツ井創太郎氏のコンサルティング先である、黒毛和牛焼肉店「うしくろ」です。このお店は、現在お客様のメールアドレスを1万件持ち、LINE会員数は7,000に達するとのこと。

どうしてこれだけのものが集められたのでしょう。自然に集まったわけではありません。このお店では、お客様のデータを集めることがスタッフの仕事になっているからです。スタッフの全員が、お客様からメールアドレス、LINEアカウント、SNSのアカウント、それに携帯電話番号をいただくことが目標となっています。そして、毎日その結果を全店で共有しているそうです。アドレスやアカウントの情報取得が下手なスタッフには、マネージャーが指導をしているとのこと。

では、何のためにお客様の情報を集めているのでしょう。このお店では、集めたアドレスやアカウントに対して、メールマガジンやLINE配信でお店や商品の情報を流します。それだけのことで、お店の売上が上がるからです。ですから、この新型コロナで苦しんでいるお店が多い中でもこの顧客データが活躍したことでしょう。

これがお客様のアドレスやアカウントを集める大きな目的です。顧客データ活用の最初の入り口と言っていいでしょう。さらに、お客様の年齢や購買履歴がわかれば、もっと活かせます。お客様の特性に合わせた情報を提供することが出来るからです。そうすれば、情報を受け取ったお客様が、行動を起こしやすくなります。

また、ネットの世界ですから、口コミで宣伝をしてくれるお客様も現れることでしょう。顧客データはお店にとって大きな武器となるのです。ECモールだけに出店して商売をしているお店では、この武器が使えません。しかも、ECモールでは、配送時にお店独自のプロモーション案内を入れることも禁止されているそうですから、大変です。一刻も早く、別の方法で顧客データを集めることが必要でしょう。

江戸時代からの常識。火事で何よりも先に持って逃げたモノ

あなたのお店にとっても、これは他人事ではありません。この重要な武器となる顧客データをしっかりと集めて活用しているでしょうか。

実は、この顧客データの重要性は、今に始まったことではありません。「大福帳」をご存知でしょう。江戸時代の商家が作っていた顧客データです。大きな福をもたらすということで「大福」とつけられたとのこと。「大宝恵(おぼえ)帳」や「日加栄(ひかえ)帳」とも言われたそうです。お客様ごとの販売商品の価格や数量などの取引が記載されています。火事の際には何よりも先に大福帳を持って逃げる、というほど大切なものです。大福帳がなければ、お店がつぶれてしまいます。

現代では、顧客データがなくてもつぶれることはありません。しかし、顧客データがあれば、商売を伸ばすことが出来るのです。インターネットのなかった時代の小さなお店ならば、店主や販売員の頭の中にある顧客データだけでも大丈夫だったかもしれません。今はもう違います。必要なデータはデジタルなものが中心です。それらは、店主や販売員の頭の中には納まりません。ですから、しっかりと顧客データを管理しておかないといけないのです。

そして、そのデータを使って、お客様に情報を流したり、コミュニケーションをとることでお店のファンが増えます。これがマーケティングです。中には、こうした作業を面倒だと言ってやらないお店もあります。また、顧客管理ソフトを入れているのに、全く活用していないお店もあります。それではいけません。顧客データは「大福帳」なのですから。

あなたのお店も顧客データを集め、そのデータを活かすことで大きな福を手にしましょう。

■今日のツボ■

・顧客データの重要性が分からないと、データが集まらない
・顧客データを集めることを仕事にすると、集められる
・顧客データは江戸時代の大福帳というべき存在である

image by: Jakkapan maneetorn / Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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