一方、飲食店のほうも大変です。東京商工リサーチの最新のデータによると、今年2月から10月7日までの「新型コロナが原因の倒産」がとうとう600件を超えてしまったのですが、ダントツのワースト1位が飲食業なのです。以下、事業別の倒産件数です。
飲食業 90件
ホテル・旅館 50件
建設業 33件
食品卸 31件
アパレル小売 30件
食品製造 27件
アパレル卸 20件
アパレル製造 13件
食品小売 9件
※ 2020年10月7日付
2位と3位以外は、すべて飲食関連とアパレル関連です。注目すべき的は、飲食業が数多く倒産したことによって、食品卸や食品製造が連鎖倒産している点です。同様に、アパレル小売が数多く倒産したことによって、アパレル卸やアパレル製造も連鎖倒産しています。ようするに、飲食店だけを見れば倒産件数は90件ですが、連鎖倒産した食品卸や食品製造も加えると148件、食品小売まで加えると150件を超えるということです。
新型コロナが原因で倒産した飲食店の中では、客単価が低く回転率で稼いでいるラーメン店が多く、今年のラーメン店の倒産件数は、9月末の時点で過去20年の最多件数と並んでしまいました。このまま行けば、過去最多を更新するのは時間の問題です。ここで気になるのは、横浜家系ラーメン「六角家本店」や豚骨ラーメン「長浜将軍」など、根強いファンを持っていた人気ラーメン店までもが複数倒産していることです。
行列ができる人気ラーメン店でも、新型コロナ対策で使用できるカウンターの座席が1つおきにされれば、それだけで売り上げは半減します。ポイントなど付与されなくても、多くのファンが行列を作る人気ラーメン店。こうした店舗までもが倒産しているのですから、消費者にポイントや割引券をバラ撒くだけの「Go To イート」は完全に片手落ちだと思います。
毎日新聞の9月30日付の「『Go To イート』開始も不安消えぬ飲食業界 重い「送客手数料」負担、広がる困惑」という記事によると、指定されたグルメサイトを通じて予約した客が来店しても「グルメサイト側に『送客手数料』を支払わないといけないので儲けの大半が持って行かれてしまう」(東京築地の海鮮丼店の店長)とのこと。ようするに、儲かるのは指定されたグルメサイトなのです。
「Go To トラベル」しかり「Go To イート」しかり、恩恵を受けられるのは大手ばかりで、中小・零細の旅館や個人経営の飲食店には、ほとんど支援が届かないシステム。こんなものに1兆3,500億円もの莫大な予算が投じられているなんて、あたしは真面目な納税者の1人として、溜め息しか出てきません。こうしたキャンペーンを行なうのであれば、政権に近しい企業や人物を優遇することなく、本当に困っている人たちに支援が届くようにしてほしいと思います。
そんな最中(さなか)、この原稿を書いている12日、「台風19号による記録的大雨から今日12日で1年」というニュースが配信されました。キーボードを叩く指を止めて読んでみると、1年前の台風19号で甚大な被害を受けた宮城、福島、長野の3県では、今も7,000人を超える被災者が仮設住宅などで不便な避難生活を続けているとのこと。こうした人たちは、莫大な予算を投じて「旅行だ!」「外食だ!」と大々的にキャンペーンを張る今の政府を見て、一体、どんな思いをしているのでしょうか?
(『きっこのメルマガ』2020年10月14日号より一部抜粋)
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