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二十代で配偶者を亡くした妻に支払われる遺族年金はいくらになるか

若くして配偶者を亡くしてしまったら─。考えたくもないことですが、こういった場合には遺族年金を貰うことになります。しかし、そこでさまざまな条件が付与される場合が多いので注意が必要なのですが、年金に興味が薄い年代でもあるので、なかなか普段の生活で調べることもないですよね。そこで、今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、30歳未満で遺族厚生年金が支給される場合を事例を用いてわかりやすく解説しています。

30歳未満の単身妻に遺族厚生年金が支給される場合は5年の有期年金になるが、終身年金に変化する場合

遺族厚生年金というと終身で支給されるものというイメージが強いです。終身といっても途中で再婚などのような事があると、その時点で遺族年金の支給は終わります。

なぜ再婚で遺族年金は消滅してしまうのかというと、結婚する事によって新しい配偶者との間に新たな生計維持関係が生じるからです(配偶者を失った事による所得保障が遺族年金ですが、新しく配偶者が出来たらそれは必要ないから)。なお、正式な婚姻でなくとも最近増えてる事実婚でも遺族年金は消滅する。

婚姻届け出してない状態だから遺族年金は消滅するとは思ってなかったという人も時々いて、後になって事実婚だった事が判明すると事実婚が始まった時にまで遡って年金を返済してもらう必要が出てくる事もある。年金の時効である最大5年分まで返済する事になる。

年間50万円貰っていたなら、5年分なら250万円返してもらわなければならない。「過払いが発生してるので年金を返してもらう事になります」と言うのは…本当に気が重かったものです^^;

本来なら年金を再婚や事実婚という時点で遺族年金を消滅させなければならないのに、ご本人様の届け出が遅れたりしてそのまま年金を貰い続けると年金の過払いとなってしまう。過払いとなれば貰いすぎた分は年金機構に返済しなければならない。

このように遺族年金が途中で完全に消滅してしまう事もあるので、終身で貰えますとは限らない。遺族年金には割と年金の消滅に至る条件があるので、気を付ける必要はある。

さて、それはともかく遺族年金は非常に若い人が受給するようになった際も気を付けなければならないです。特に30歳未満で遺族厚生年金が貰える場合。30歳未満で遺族厚生年金が貰える女性は終身年金ではなく、5年間という有期年金になっています(子供が居ない単身の場合)。まだ若いから収入を得る機会は多いし、再婚という事も十分考えられるからですね。なのでたとえば28歳で遺族厚生年金を貰えるようになった人は33歳までの支給という事です。

ちなみにそのように5年間の有期年金となったのは平成19年4月以降に遺族厚生年金を貰えるようになった人からです。平成19年3月31日までに遺族厚生年金の受給資格を得た人は終身で支給されている。

なお、遺族厚生年金は夫が貰う場合は55歳以上でなければならないので、55歳前から貰える人は妻もしくは18歳年度末未満の子が主という事になります。族年金は男性には条件が厳しいが、女性には手厚い制度です。

さて、今回はまだ年齢的に非常に若い妻が遺族厚生年金を貰えるようになった場合の事例で考えてみましょう。

1.平成6年10月4日生まれの妻(今は26歳)

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20歳になる平成26年10月時点では大学に通っていたが、20歳になると国民年金には強制加入なので国民年金保険料(平成26年度は15,250円だったが、令和2年度現在は月額16,540円)を支払う必要があった。学生だから毎月1万円を超える国民年金保険料は負担が大きかったので、学生専用の免除制度である学生納付特例免除を利用して、保険料を全額免除とした。

なお、20歳(平成26年10月)に到達してから何も免除の手続きをしてなかったため、平成26年10月のみ保険料を納め、平成26年11月と12月分はまでの保険料は滞納した。実際に免除の手続きをしたのは平成27年1月になってからだった。

国民年金保険料の免除を申請すると、過去直近2年分の保険料と翌年6月までの保険料が免除になる。なので平成26年10月まで遡って免除になる。滞納していた11月分と12月分も未納期間ではなく免除期間となる。

ところが、平成26年10月に1ヵ月だけ保険料を納めてるがこの保険料はどうなるのか?この保険料は納付したままとなり、免除期間にはならない。保険料を納めた後で、免除申請をして免除期間になったとしても「免除申請する前にすでに保険料を納めた期間分」はそのまま納めたものとする。

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※ 参考
国民年金保険料は半年とか1年分、2年分などまとめて保険料を納める前納制度がありますが、前納した後に免除制度を使った場合は免除申請した月分以降の保険料は返還する。

たとえば令和2年4月から令和3年3月まで1年間前納した後に、仮にですが令和2年8月に免除申請すると令和2年8月から令和3年3月までの前納保険料は還付の対象となる。

逆に、前納制度を使わずに単純に保険料を令和2年4月から令和3年3月分までいっぺんに支払ったあとに、さっきの令和2年8月に免除申請をしても令和3年3月までの保険料は還付しない。

この違いは注意する必要がある。
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というわけで、平成26年10月の1ヵ月は国民年金保険料納付済み期間となり、平成26年11月から平成29年3月までの29ヶ月間は学生納付特例免除とした。この免除期間は一般の免除期間と違って将来の老齢基礎年金には反映しない。

平成29年4月からは民間企業に就職し厚生年金に加入して、令和2年現在も加入中。月給与は23万円。

さて、この女性は令和元年5月にサラリーマン男性と婚姻したが、令和2年6月に夫を亡くした。死亡した夫の平均給与(平均標準報酬額)は35万円とします(夫は厚年期間はまだ100ヵ月しかなかったとします)。

・遺族厚生年金→35万円×5.481÷1,000×300ヵ月(最低保障月数)×3÷4=431,629円(月額35,969円)

よって令和2年7月分から年額431,629円(月額35,969円)の遺族厚生年金を請求により貰える事になった。

遺族厚生年金というと終身年金というイメージがありますが、この女性は令和2年6月時点ではまだ25歳だったので、5年間の有期年金となる。なので令和7年5月分まで遺族厚生年金年額431,629円(月額35,969円)が貰える事になる。よって月収入としては給与23万円と遺族厚生年金35,969円の合計265,969円。

そういえば夫が厚生年金加入中の死亡であれば遺族厚生年金には更に定額の586,300円の加算が付くって以前メルマガで言ってなかった?と思われた方もいるかもしれませんね。この定額の586,300円の加算金は原則として妻が40歳以上で夫が死亡して遺族厚生年金の受給権が発生した人に加算されるので、今回の若妻のケースは貰えない(例外はありますが後述します^^;)。

さて、30歳前に遺族厚生年金を貰える事になったので、遺族厚生年金を貰えるのは5年間の有期年金となりました。すべてのケースが5年間の有期年金になるのか…というとそういうわけではありません。

この女性は夫死亡時の令和2年6月時点で妊娠していて、令和2年11月に出産予定だったとします。夫死亡時点で妊娠していた場合は国民年金からの遺族基礎年金の対象とされる(年金自体の支給は生まれてから)。そうするとどうなるか。

令和2年11月に出産すると、翌月の令和2年12月分から国民年金から遺族基礎年金が貰える。

・遺族基礎年金→781,700円(令和2年度定額)+子の加算金224,900円=1,006,600円

さらに遺族基礎年金受給者には遺族年金生活者支援給付金年額60,360円(月額5,030円)が貰える。よって、令和2年12月からの年金総額は

・遺族厚生年金431,629円+遺族基礎年金781,700円+子の加算金224,990円+遺族年金生活者支援給付金60,360円=1,498,589円(月額124,882円)

なお、国民年金からの遺族基礎年金は子が18歳年度末までの給付となる(子に2級以上の障害がある場合は20歳になるまで)。遺族年金生活者支援給付金も遺族基礎年金が支給されてる間のみの給付。

令和2年12月というとまだこの妻は26歳なので30歳未満ですが、この場合も遺族厚生年金は5年の有期年金なのか?この場合は5年の有期ではなくなり、もし30歳以上になっても遺族基礎年金が貰えるようであれば遺族厚生年金は終身年金となる。

30歳前に発生した遺族厚生年金が5年間の有期年金となるか、終身となるかは18歳年度末未満の子が居る事で遺族基礎年金が発生するかどうかで変化する。

令和2年12月分から遺族基礎年金が貰えてるので、何事もなく遺族基礎年金が貰えるとすれば子が高校卒業する令和21年3月まで遺族年金年額1,498,589円(月額124,882円)が貰える。

ところで令和21年4月分からは遺族厚生年金431,629円のみとなるが、この令和21年の時の妻の年齢を考えると44歳ですよね。という事は40歳時点では遺族基礎年金をまだ貰っていた事になる。

それがどうしたん?と思われたかもしれませんが、40歳時点で遺族基礎年金の受給権があった人が、子が18歳年度末を迎えて遺族基礎年金が消滅すると、その後の遺族厚生年金に定額の586,300円が加算される。そうすると子が高校卒業後の妻の年金総額は遺族厚生年金431,629円+中高齢寡婦加算586,300円=1,017,929円(月額84,827円)となる。

※ 追記
30歳前に18歳年度末未満の子が居る事で遺族基礎年金が発生しても、30歳前に子が死亡したとか、子と一緒に暮らす事が無くなった(生計同一でなくなる)など遺族基礎年金が消滅するような事があると、遺族基礎年金が消滅してから5年間が遺族厚生年金のリミットとなる。

30歳超えた時に遺族基礎年金が消滅したら遺族厚生年金は原則として終身となる。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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