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若者と老人が殺し合う国、日本は「科学と軍事と現実主義」で復活するか?

金融緩和に頼る経済政策も奏功したとは言えず、新型コロナウイルス感染症の流行も加わり、もはやどん底に沈みかけていると言っても過言ではない日本。私たちはこの危機的状況をどう抜け出すべきなのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、日本の衰退を招いた原因を分析するとともに、経済復活のために打つべき手を考察しています。

日本の復活戦略

日本の衰退はコロナという疫病で明確化したようである。非正規社員が解雇されたが、その非正規社員が増えた原因は、日本の中に高収益な企業がなくなり、日本全体が貧困化したことによる。このため、日本の復活戦略を検討する。

今の日本は、経済社会が衰退する危機的な状態にある。その状況を国民が認識し始めているように感じる。その原因は主に3つある。

1つは、日本が優位にあった利益率の高い、付加価値の高いAV産業、電子産業、半導体産業の衰退で日本経済の脆弱性が増し、非正規雇用が全労働者の35%に拡大している。

その上、コロナ禍で非正規社員を企業は解雇しているので、女性の自殺者が増えている。この原因は非正規雇用に占める女性の割合が多いことによる。そのうち、母子家庭も多くあり、子供の自殺も増えている。由々しき問題になっている。

このように日本社会の貧困化は、産業育成政策をしないで、経済政策を金融緩和政策中心にしたことで、経済の脆弱性を高めてしまったことによるし、日銀のETF買いが株価を支えているが、いつまで続けられるのかわからない。

長期に続けると、経済実体とはカケ離れた株価になり、株式市場も国債市場と同様に投資家がいなくなり、崩壊させることになる。

このように、日本経済は衰退して労働賃金も下がっているので、ベトナムや中国からの出稼ぎ労働者もいなくなる。少子化対策としての移民もいなくなる危機にある。

もう1つ、製造業を疎かにしたことで、コロナ感染拡大で、マスクも医薬品も中国依存で、日本の品不足を起こした。地産地消経済を、このコラムでは、何べんも主張しているが、それを裏付ける事態になった。

2つ目は、中国の周辺諸国に対する領土拡張要求が増してきて、軍事的、外交的に圧力を高めている。この軍事的脅威である。

このための中国包囲網を日本が中心で構築するべきであると、このコラムでは、何べんも主張してきた。それがコロナ禍で中国が一層の圧力を増したことで、せざるを得ない状況になっている。

日米豪印の準同盟関係が成立しそうである。ASEAN諸国、英国やフランスなども仲間にする努力が必要である。一方、韓国は明示的に米国から中国にシフトするようだ。

3つ目は、70歳以上の理想、理念と若者の経済的な要求とが相反していることによる社会的な混乱である。リベラル的な理想が、現実的な経済的、安全保障的な要求と相いれない事態が起きている。その中には、日本学術会議が研究者に軍事研究の禁止を宣言したが、それも含まれる。

日本学術会議の構成者は、裕福な高齢者であり、その若い時代の理想はそうであったかもしれない。しかし、現時点の社会情勢では、それは日本の軍事力をダメして、引いては中国の侵略を許し、中国独裁政権の下で、日本語を禁止される事態もあり得る。

このため、日本人の大多数が不満を持っていたようだ。よって、左翼的な人の任命拒否を歓迎する論調が多い。

しかし、菅首相は、それを説明しないのはよくないが、任命拒否は当然であり、日本への侵略を助ける日本学術会議を民営化するほうが良いとも思える。敵を利するような宣言する組織を国民の税金で運営する必要はない。というより、おかしい。

と、この問題ではリベラルからリアリストに日本社会の雰囲気を変える必要を感じる。

というように、このコラムで主張していたことが、コロナにより、現実になってきた。

今後、コロナ感染再拡大が起きる可能性が高い。企業活動は低下するので、株価も下がることが想定できるし、それに輪をかけて、米国大統領選挙の混乱も追い打ちをかける可能性もある。

というように日本の状況は前途多難である。

この解決は、今までの資本の効率化を推し進めた新自由主義的な資本主義から全国民の命を守る自衛的・地産地消的な資本主義にすることである。グローバリズムは資本の効率化の方法として生まれたが、それでは疫病などの災害には弱いことを思い知らされたはずである。

国民の命を守るためには、エネルギー、食糧、材料はなるべく自国で生産することである。自国生産を企業に保証するためには、保護主義も必要になる。どの部分が国民生活に重要かを決めて、その部分は最低でも、自国生産を優先することである。

しかし、日本はエネルギーと材料面では資源が乏しいが、それを解決するのが太陽光や風などと植生の利用になる。これもこのコラムでは、植生文明化をするべきと述べてきた。

そして、全国民を守るにはデジタル化も重要なことになる。セーフティー・ネットの網をホームレスになった人たちにも広げることができる。マイナンバーカードとスマホの電話番号があれば、現住所を必要としないので、救える人を増やすことができる。

そして、マイナンバーで銀行口座や企業給与の把握ができれば、収入がない人を識別もできる。

給付付き所得控除(ベーシック・インカム)などで、収入がない人には給付をすることもできる。これができると経済的理由で命を絶つ人は、大幅に減ることになるはず。

同一労働同一賃金で、非正規社員と正規社員の給与差がなくなるが、これは正規社員の給与が下がることを意味する。世界的な競争に負けた企業の利益が減り、給与を上げる余裕をなくしているのが、今の日本企業の状態であり、金融緩和などで円安にして、価格競争力を上げていたことで、競争力の衰退を隠していただけである。

このため、少子高齢化の対策として、移民を受け入れてきたが、低賃金でベトナムや中国からの移民はいなくなる。ということで、日本の抜本的な経済立て直しが必要になっている。

日本衰退の原因は、NTTや国鉄の分割民営化で、研究開発費が大きく下落して、米国巨大企業とベンチャーキャピタルや中国の国家補助の研究開発力に負けたことによる。日本全体での研究開発力が落ちたことで、日本は世界的なデジタル産業の競争から脱落したのだ。この復活なくしては、日本の衰退を止めることはできない。

NTTが光ファイバー、半導体、通信機器やコンピューターなどに多額の研究資金を出して、その研究成果をNEC、富士通、日立などが吸収して、世界的な企業になっていったのであるが、NTT民営化後に日本全体としてもデジタルにかかわる研究資金が不足したことで、世界的な競争に負けてしまったのである。

この研究を復活させないと、デジタル化で日本を復活させることはできず、世界的な企業を育成もできない。再度、日本を輝かせるには、本格的な研究開発投資をするしかない。

そして、現時点では、一流な技術者・研究者も少なく、追い付くためには、世界から技術者や研究者を集めてくるしかない。どこが、それを主導するかであるが、NTTしかないとみる。このためにもNTTを再度、まとめる必要があり、ドコモを非上場化することにしたのであろう。NTTを中心にして、NECや富士通などの製造会社をまとめて研究開発して、再度、日本企業を世界的な位置に持っていくしかない。

ソフトウエアでは、各企業がそれぞれに努力するよう期待するしかないが、クラウドやAI、5Gなどの基礎技術は、NTTやソニー、富士通など大企業がかかわる必要がある。

そして、日本は、経済力では人口12億人いる中国にはかなわないことは、明白である。経済力の差は兵器などの数に現れ、その部分では、中国にかなわない。同じ能力の兵器では日本の勝ち目はない。

このため、軍事研究も拡大して、新兵器で中国の侵略を防ぐ必要がある。その軍事研究を禁止する日本学術会議を国家機関から外し権威をなくして、軍事研究もできる学問の自由を確保して、軍事研究者を増やす必要がある。

戦争というだけで禁止しようとする高齢者の理想や理念と現実世界が齟齬をきたしているので、このような理想や理念を掲げる政党、報道機関や組織を、国民は自己防衛の意味からも、つぶしていくしかないと思う。

日本にあり、日本の敵に利得を与える組織や政党は、敵以上に敵であるからだ。そう思えるほど、中国の軍事圧力は厳しくなっているし、日本で中国援助依存の組織が増えている。

デジタル化の問題点

デジタル化というが、諸手続きはスマホがベースになるために、問題が出る。

問題点としては、スマホを使えない70歳以上の高齢者が何もできなくなることである。このため、一部今までの窓口を設置することは必要になる。紙ベースの申請も残す必要がある。

もう1つが、ホームレスの人たちがスマホを持たないと、申請もできず仕事を探せなくなることであるが、このスマホを持ってもらうことが支援の大きなポイントになる。

それと、個人情報を政府が集めるので、監視社会になる危険性もあり、この部分では、個人情報の利用制限が設ける必要がある。

それと国民が監視社会になるのを未然に防ぐことを心掛けるしかない。

さらに大きな問題が、紙媒体のメディアが衰退していくことや、ネットでの買い物や大学等の教育などに移り、既存ビジネスに大きな試練をもたらすこと、それとAIの発展により、法律家、税理士、運転手、企画職などの専門的な職業の必要性がなくなり、その職業が失われることである。しかし、企業的にはコストがなくなる。

それと、オフィスをクラウド上に持てば、それでサービスができるので、必要な現場以外のオフィスが必要なくなり、不動産ビジネスも大きな影響が出てくる。オフィス賃料がなくなりコストが軽減されることになるし、個人で大きな会社を運営できるようになる。

などの問題と利点があるが、企業は今から問題点を解決することが必要であるし、それさえできれば、コスト効率が飛躍的に高まることは確実である。

このことで、中産階級がいなくなり、経営者や少数のシステムエンジニアと末端労働者と2つの階層に分かれてしまうことになる。この時の社会的な仕組みも考えていく必要がある。竹中さんのベイシックインカムの提案も、そこから出ているような気がする。

さあ、どうなりますか?

image by: StreetVJ / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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