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人気マンガ『チェンソーマン』から考える、人間が最も恐れるもの

『鬼滅の刃』を生んだ週刊少年ジャンプで連載中の『チェンソーマン』という作品をご存知でしょうか。独特の世界観で展開されるストーリーが『鬼滅の刃』同様、幅広い層から支持されている本作、戦いを繰り広げるのは「銃の悪魔」や「コウモリの悪魔」といったさまざまな「悪魔」たちなのですが、では一体、この世の中で最強なのは「何の悪魔」なのでしょうか。そんな疑問に、無料メルマガ『セクシー心理学! ★ 相手の心を7秒でつかむ心理術』著者のゆうきゆうさんが、現役精神科医ならではの視線での回答を試みるとともに、「人生において重要なもの」についても解説しています。

『チェンソーマン』での心理学的に「最強の悪魔」とは!?

こんにちは。ゆうきゆうです。

自分は『マンガで分かる心療内科』という漫画を作っていまして、当然ですが漫画好きです。そのため、普段からいろんな漫画を読むようにしています。

最近またいろんな漫画が増えていますね。今までの発信の場といえば雑誌にしかなかったのが、ネット上の漫画メディアにも掲載されるようになっています。

あるとき大手メディアの出版社さんのパーティーへ行ったんですけども、漫画家さんがめちゃくちゃいらっしゃって、日本の人口より多いんじゃないかと本気で思いました。デジタルコンテンツ化することにより、漫画雑誌の数も、漫画家の人数も、ものすごく増えているのではないかと感じます。

マンガ『チェンソーマン』

マンガコンテンツは非常にたくさんあるわけですが、その中で、最近特に自分が面白いなと拝読させていただいているマンガがあります。ジャンプですと、有名なのが『鬼滅の刃』ですね。こちらはとてもポジティブで、まっすぐな漫画だと思います。

そしてもう一つ個人的に大好きな漫画に、鬼滅の刃の逆を行くようなと言いますか、いい意味でネガティブ・ひねった感じのマンガがあります。それが、『チェンソーマン』という漫画です。こちらは現在のところ、9巻まで出ています。

チェンソーマン 9
藤本タツキ 著/集英社

予想もつかない展開ばかりで、非常に面白いです。語り尽くそうとすると、1回では終わらないくらいなのですが、知らない方のために一言でまとめますと「いろんな悪魔が出てきて、他の悪魔と戦う漫画」です(一言でまとめ過ぎですけども)。

登場する悪魔たちはとてもバラエティ豊かです。銃の悪魔・コウモリの悪魔…というように「名詞」に対して悪魔がだいたい存在する、という世界観になっています。

その名詞が恐れられるほど、その悪魔は強いと言われています。そのため、先ほども出てきた『銃の悪魔』はめちゃくちゃ強いです。普通の悪魔が人間と同じくらいのサイズとすると、銃の悪魔は一人だけすごい巨人みたいな雰囲気です。そして、主人公にかかっているのは「チェンソーの悪魔」です。チェンソーも危なくて怖いので、主人公も結構強いです。

このように、このマンガの中では悪魔の強さ弱さが決まっている、という設定があります。

そんな中で、今のところラスボスといえる悪魔がいるのですが、それが「支配の悪魔」だというのです。確かに「支配」、怖いですね。みんな支配されるのはイヤですし、強そうなイメージがあります。支配の悪魔は問答無用で人を従わせていて、恐ろしく強い悪魔として登場しています。

ただ、個人的な感想では「支配って怖いか?」と思うところがあるのです。なぜなら、支配を望む人も、世の中には多いと考えられるからです。これはマゾヒスティックな人だけではありません。

人間は、「カリスマ」に従いたいという心理があります。つまり、強い人間に従いたい・支配されたいと望んでいるとも言えるでしょう。そう考えると、支配はそこまで恐れられない=恐れの法則に従って考えると、支配の悪魔はそれほど強くない、とも考えられます。

名詞から考える「最強の悪魔」とは?

では実際、名詞で考えたときに最強の悪魔=最強に恐れられる名詞とはなんだろう、と疑問に思いました。

代表的に考えられるものといえば、やはり「死」でしょうか。確かに登場する「銃の悪魔」や「コウモリの悪魔」「ヒルの悪魔」「暴力の魔人」などは、人に害を与えるので恐れられており、力も強いです。

でもよく考えてみてください。「銃」を恐れるのはなぜでしょうか。それで撃たれたら、「死んでしまうから」です。こう考えると、「コウモリ」「ヒル」「暴力」…いずれも「死」に近づくから恐れられているのだと気づきます。

つまり、総合的に強い悪魔たちを通じて恐れられてるものは結局「死」ではないかと思うのです。もちろん、作中には「死の悪魔」などというのは出ていないのですが。

しかしながら、話はここで終わりません。「死」を恐れない人というのも、ときにはいます。もうやけになって「死んでもいいや」と思う人もいれば、「死してなお、義のために戦う」みたいな人もいいます。「自分の死が何かの役に立つならそれでいい」と思う人は、きっと死を恐れていないでしょう。そう考えると、実は「死」は最強な悪魔ではない、と思うのです。

もっと最強の悪魔がいるのではないか…そこで自分が思い至ったのが、「無意味の悪魔」です。

人が生きる「意味」

一見、特に恐ろしい印象もないワードかもしれません。しかし精神学者フランクル先生は、次のように言っています。

「人間には意味への意志がある」

人は「自分は意味がある存在なのだ」と思って、そのために生きていくことを望んでいるそうなのです。すなわち、意味を持つことが最大の目標であり、生まれてきた意味や使命を考えて行動することが人間の生きる価値なのです。確かにそう考えると、

「毎日がつまらない」
「死にたい」

と思う人は、今まさに生きてる意味をなくしていると言えます。ここから先どう生きていくか・どんな人生を送ろうか、というのが見えていないのですね。

しかし、どんなに希望がない人でも目の前に死にそうな人がいて、それを助けたとしたら「自分は生きててよかったんだ」と感じるはずです。または、パートナーや子供・孫ができたとします。自分が死んだら、パートナーや子供・孫など大切な人が生きていけなくなってしまう。そんな状況になれば、その人は絶対生きようとしますよね。あるいは死に直面したと人が、自分が死ぬ代わりに体の一部を他人にあげて、その人が生きながらえることができるとするならば、死を選ぶこともあります。

なぜ上記の人たちは生きようしたり、死を恐れなかったりするのでしょうか。自分の意思・行動・命に「人のため」という意味が生まれたからです。意味というのは生きるエネルギーになるだけでなく、時として死より強いものなのです。でももし、臓器などを残すこともできずただ燃えて死んでしまうとしたら、その人は死を恐れると思います。自分の命に意味がなくなるからですね。

このように、意味がなくなること=無意味こそが最大の恐怖であり「支配」よりも「死」よりも強い、それが「無意味の悪魔」ではないかと思うのです。

でも『チェンソーマン』の中に「無意味の悪魔」が出てきたとしたら、これもあくまで想像ですが、出てきたとしてもぼやーっとしていて怠惰な雰囲気で、「もう人生無意味~」とか言ってダラダラしてそうですね。それって全然怖くないんじゃないかと思いました。

『チェンソーマン』を通して、人生の重要なものについてお話しました。重ねてになりますが、人間というのは「意味」のために生きています。僕は今日〇〇のために頑張ったんだこれが好きだから、追求することが私の意味なんだそう思えるものを見つけていくのが大切なんですよ。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

image by: Amazon.com , StreetVJ / Shutterstock.com

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【著者】 大和まや・ゆうきゆう 【発行周期】 週に1度、宝石が届きます。

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