街宣車等を用い自らの政治信条を声高に主張する、いわゆる「右翼」と呼ばれる人々。彼らは一体どこからその活動資金を得ているのでしょうか。今回そんな疑問に迫るのは、精神科医にして映画監督でもある和田秀樹さん。和田さんは自身のメルマガ『テレビでもラジオでも言えないわたしの本音』で、彼らが中国や韓国を叩くことにより誰が利を得るのかを考察しつつ、その資金源を推理しています。
ウヨクの資金源にまつわる妄想
さて、今回のメインテーマは、ウヨクと言われる人たちを陰であやつる人だ。
朝の情報ワイドをみていると、大谷という医師がPCRをもっと受けさせろという主張をしたら、「国の批判をするな」とネット上で炎上し、クリニックにまで押しかける人がいるという話をしていた。
こういうのを警察がまじめに取りあわない。
中国は政府が警察を使って言論弾圧をやるからわかりやすいが、日本の場合は、ウヨクと言われる人を使って言論弾圧や思想弾圧を行い、彼らがいくら法に触れるようなことをしても警察が動かない(これが政府の意向でないと言えないはずがない)という間接的なやり方の弾圧だ。
海外も批判しづらいし、政府も知らないで済ませるだろう。
中国でさえ最近はやらない関係ない家族まで被害にあうのだから、はるかに言論封殺には有効だ。もちろん、警察は知らぬ存ぜずだ。
騒音も許され、日本の将来のためになくてはならない赤ん坊の眠りを妨げても警察はなんの手出しもしない。
こっちのほうがはるかに性質の悪い思想弾圧、言論封殺と言える。
かつての資金源は「アメリカ」
問題はその資金源だ。
かつて右翼の資金源はどうもアメリカだったらしい。
CIAの重要な仕事に相手国の世論を親米的にするというのがあった。
ただ、CIAも心理学者を雇っているので、一般大衆に嫌われている右翼に「アメリカ万歳」と言わせると逆効果になる。
だから、CIAは保守言論人を使って、いかに共産主義が怖いかを書かせたり、反共の街宣車に金を出したらしい。
もちろん、その流れは続いていて、日本会議などは日米同盟の大切さを訴え、親米集団と化している。しかし、堂々と親米と言えないウヨク(アメリカのイメージダウンになるので金を出してもらえない)は、これまでは「反共」で済んだが、いまや共産主義国は中国と北朝鮮くらいになってしまった。
しかも、中国はもはや半分資本主義で「共産主義国」とはいえないありさまだ。
そこで、中国と韓国をセットでたたくようになってきた。
ただ、これにアメリカが金を出すのかという疑問はある。
右翼は日本を中国や韓国からなめられる国にしたいのか
これは私の妄想かもしれないが、実は中国や韓国を叩くウヨクのスポンサーは中国や韓国そのものなのではないかと思えてきた。
この10年、20年、中国と韓国の台頭は目覚ましい。
2018年のOECDのデータで韓国の一人あたりのGDPが日本を抜いたらしいというニュースも入ってきた。
2018年の最低賃金の大幅引き上げで、最低賃金でも韓国は日本を抜いている。
これによって中小企業が人件費で圧迫され、韓国経済がボロボロになったとウヨクはほうぼうで論じたが、確かに経済成長率はわずかに落ちたが、2018年の経済成長率は日本の2倍以上だった(アメリカ人なのに、むしろ愛国者のデービッド・アトキンソン氏がこれを指摘している)。
格差を是正し、一般大衆の所得を増やしたほうが、経済は成長することはケインズ以来の基本原則だ。
日本だって、アメリカだって、その形で高度成長をしてきた。
ウヨクは日本を購買力のない国にして、中国や韓国になめられるように仕向けたいようだ。
日本人を油断させて中韓に勝てなくするウヨクの弊害
トランプとの経済戦争に懲りて習近平は内需拡大を打ちだし、最低賃金の引き上げを指示した。
これで中国の経済がさらに強くなり、モノを買える国になったら、世界はさらに中国に従うことになる。
しかし、日本のウヨクはトランプの中国制裁を全面的に支持した。さらに、この制裁のために、中国は半導体の自国生産に舵をきり、3兆円もの補助金を企業につけるという(これができるのが社会主義の強みだ)。
ついでに言うと、製品の性能でかなり中国や韓国が力をつけてきたのに、まだまだ韓国はダメ、中国はダメと言い続ける。
昔は、中国の新幹線は日本のものを丸パクリと言われても仕方ない状態だったが、今では日本のものより早く、振動も少ないという。
そういうことは報じられず、ウヨクは中国ダメ論を唱える。要するに、日本人を油断させて、中国や韓国に勝てなくなるという結果がウヨクによって起こっている。
それをやめようとしない。
見えてきた、右翼を影で操る勢力と資金源
私は妄想かもしれないが、ふと思いついた。
要するに彼らは中国や韓国から、日本人を油断させて自分たちが勝てるような記事を書き、ネット世論を作ってくれと言われて、金をもらっているのではないだろうか?
日本人と違って、中国や韓国の企業トップたちは心理学も勉強している(CIAが日本人の学者やジャーナリストを使って日本人を洗脳していったのと同じ構図だ。たとえば受験競争批判は、おそらくCIAの陰謀と考えられる)。
何が有効かがわかっているのだ。
ゆとり教育で一般大衆の学力が低下し、90年代半ばから中国沿岸部や韓国の子どもたちに学力で負けだした。
ただ、東大生などエリート層の学力は維持されている。
彼らにやる気をなくさせることを考えた中国や韓国のスパイはウヨクを使って、世襲のバカ殿に東大卒の官僚がヘコヘコしたり、みんなの見ている前でうそをつくような恥をかかせるようなことをした。
これで多くの日本人の子どもたちは一生懸命勉強しても世襲には勝てないと感じたはずだ。
しかし、この姿をウヨクは絶賛し、バカ殿はやめた後でもすばらしい首相ということになっている。
ウヨクによる亡国と闘おうとすると命さえ狙われかねないから、誰も国を守ろうとしない。
私は、昔『正論』などの保守メディアに原稿を書いていたので、その原稿料の安さを知っているが、ウヨクジャーナリストはレイプを裁判で認定された山口氏をはじめ、意外にリッチな暮らしをしている。
彼らの資金源が、実は中国や韓国という妄想が妄想ならいいが。
image by: English: Abasaa日本語: あばさー, Public domain, via Wikimedia Commons
※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2020年11月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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