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500万円受領疑惑の吉川元農水相、新聞報道から炙り出された後手後手の過去

鶏卵生産大手の「アキタフーズ」の元代表から現金500万円を受け取ったとされる、自民党の北海道連の会長で元農水大臣の吉川貴盛衆院議員。現在は「不整脈」で入院中とのことですが、あまり印象にない吉川議員とはそもそもどのような人物だったのでしょうか? メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、東京新聞の過去のデーターベースから吉川議員に関する記事をリサーチ。そこから浮かび上がってきたのは、コロナ感染拡大が続くなかGo Toをゴリ押しした菅政権にも似た、過去の「豚熱」への後手後手対応でした。

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500万円受領疑惑の吉川貴盛元農水相とはどんな人物か?

きょうは《東京》から。

各紙、大きく取り上げているのが、吉川貴盛元農水相の500万円受領疑惑。このニュース、東京地検特捜部のリークであることがバレバレで、「続報」もあるでしょう。河井克行・案里夫妻の事件に絡んで捜査が行われている過程で浮上した「副産物」のようですが、ただ、吉川氏が二階派の議員であることもあって、どこまで伸びるか、当面注目です。

ですが、当の吉川貴盛氏について私たちはあまり知りませんので、ここは《東京》の検索を使って、過去、どんなことで紙面に登場していたかをチェックしておきましょう。

というわけで、「吉川貴盛」で検索するとこの5年間に61件の記事がありました。最初は2016年。最新はこの10月(今回の記事を除く)でした。

まずは《東京》1面記事の見出しから。

吉川元農相 現金受領か
東京地検捜査 鶏卵大手から

鶏卵生産・販売大手のアキタフーズ前代表が、自民党衆院議員の吉川貴盛元農水相の大臣在任中、3回にわたり現金計500万円を渡していた疑いが浮上。東京地検特捜部は昨夏の参院選広島区の河井夫妻による買収事件でアキタ社を関連先として家宅捜索していた。

《東京》によれば、東京地検特捜部は既にアキタ社の関係者を任意で事情聴取しているとのこと。吉川氏の事務所はマスコミ各社からの問い合わせに対して明確には答えていない(「政策秘書から回答がなければ、それが回答です」と言っているらしい)。また他紙に対しては吉川氏が「あるわけない」と現金授受を否定したとも(《朝日》)。

吉川氏は2018年10月~19年9月に安倍政権の農相を務めた。

鶏卵を巡っては、国際獣疫事務局(OIE)が18年10月に劣悪な環境での鶏飼育を防ぐアニマルウェルフェアの基準として、止まり木や巣箱の設置を義務づける案を加盟国に提示していた。日本の鶏卵業界はこの案に反発し、反対する要望書を農水相に提出するなど、反対運動を活発化させていたもよう。その甲斐あってか、OIEは止まり木の設置などの義務を案から削除した経緯があった。

アキタ社は業界団体の役員企業。「きよら」ブランドで知られ、広島、千葉、愛知に拠点がある。

●uttiiの眼

国際獣疫事務局(OIE)は国連よりも古くから存在する国際組織で、パリに本部を置く。BSE問題の頃、注目を浴びた組織でもあり、私にはちょっと懐かしい。そのOIEが突きつけた飼育方法改善の提案は、ケージ飼いが通常の日本の鶏卵業界には受け入れがたく、政治家を動かして潰そうとしたということだろうか。この背景の上に、実際に500万円が動いたということが事実と分かれば、裏献金という可能性が高くなるだろう。政治資金報告書に記載のない500万円は決定的かもしれない。

【サーチ&リサーチ】

《東京》が伝えてきた、吉川貴盛氏に関係があると思われる61件の記事。最初に出てきたのはTPP絡み。

2016年3月25日
衆院TPP特別委員会に西川公也元農水相が委員長に就任したとのニュースの中で、「自民党の吉川貴盛元農林水産副大臣と民主党の近藤洋介元経済産業副大臣が与野党双方の筆頭理事に就任した。」とある。

*その後はTPP関連の国会質問など。また自民党北海道連の会長代行として参院選の応援に来た安倍氏に同行など。17年の総選挙で当選後、道連会長として要望書を安倍氏に渡したり、北海道を訪れた首相と会い、また東京には道議を引き連れて首相に面会に行ったりしている。そして…。

2018年10月2日付
第4次安倍改造内閣に農水相として初入閣する。二階派の「入閣待機組」のひとりだった。

2018年10月5日付
大臣就任に当たってのインタビューで、いくつかの質問に答えているが、一番具体的だったのは、北海道の地震で生乳の廃棄が発生した問題についての次の答え。「廃棄した生乳への補助はできないから、別の形で取り組む。乳房炎関連や非常用電源を確保する費用など農林水産省がとりまとめた対策を具体的に知らせていく」と。

*農家が困っている具体的な点について知識がある人なのだろう。だがこのとき、日本農業には大問題が降りかかっていた。それがトランプ政権との貿易交渉。吉川氏と農水省は、過去にEUと結んだEPAの水準を落としどころにして、それ以上の要求を撥ねつける作戦を採っていた。

*豚コレラ感染の問題、末松広行農水事務次官のパワハラ疑惑を経て大きな方向転換が行われる。

2018年12月26日付
「政府は26日、クジラの資源管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、来年7月から約30年ぶりに商業捕鯨を再開すると表明」した。吉川氏は自民党の会合で「厳しく険しい道のりだった。商業捕鯨の再開は地域の活性化につながる」と述べている。

*19年2月、豚コレラが5府県に広がり、ワクチンを使うべきだとの声が出たが、吉川氏は、ワクチンをいったん使うと清浄化に時間が掛かり、輸出再開が遅くなるとして応じず、感染を拡げているとみられる野生のイノシシにワクチン入りの餌を食べさせる作戦に出る。

2019年2月22日付
吉川農相は、「岐阜県や愛知県で相次いでいる豚(とん)コレラへの新たな対策として、野生のイノシシにワクチン入りの餌を三月から散布すると発表」した。

*2020年になってからは記事らしい記事がない。10月21日時点で北海道連会長であることは間違いない。

●uttiiの眼

自民党北海道連の会長だから当然とも言えるが、一連の行動は、吉川氏が「北海道の代理人」という性格を帯びていることを示しているように思う。とくに農業の実際に比較的詳しく、農産物輸出に熱心な議員という印象。独自の政策と言えるようなものは、記事を見る限りなさそうだ。

気になったのは「豚コレラ」(人のコレラとは無関係なので、現在は「豚熱」と言い換えられている)への対処の仕方。豚コレラの感染が広がり、養豚農家は苦しい状況に置かれ、たとえ輸出ができなくなっても、ワクチンで感染を収束させて欲しいと強く願っていたにもかかわらず、吉川氏と農水省はなかなか接種に踏み切らなかったが、結局19年の9月28日に感染発生府県で豚にワクチンを接種することを決める(12月20日には未発生の都県についても、接種することに)。

丁度、感染の第3波が襲っている最中にGo Toトラベルを停止しもせず、無症状の感染者を探し出すための「社会的検査」に後ろ向きであり続けている菅政権の新型コロナ対策と、発想に似たところがある。まず感染の広がりを押さえるために全力を尽くすことが、いち早く病気を収束に向かわせるために必要だったのではないか。この点で、人間の新型コロナと豚の豚熱に対する対応は同じ発想に立っていた。

さて、典型的な農水族であり、北海道の自民党の中心人物でもある吉川氏を巡るスキャンダル。続報として、どんな事実が出てくるのだろうか。

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image by: 吉川貴盛ホームページ

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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