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設立するなら株式会社と合同会社どちらが得?人気税理士が徹底解説

前回の記事『実は怖くない。人気税理士が紹介する税務調査リアルドキュメント』の中で、実際に税務調査の予告から、実際に行われる日の中身やスケジュールについてこまかく紹介した、チャンネル登録者数17万名超の人気YouTuberヒロ税理士。今回は自身のメルマガ『ヒロ税理士のYouTubeでは喋れないお金と税金とYouTubeの話!』の中で、会社を設立するなら「株式会社」と「合同会社」どちらが良いか、そのメリットとデメリット、判断基準などについて徹底解説しています。

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株式会社と合同会社、どっちがいいの?その判断基準とは?

今日のテーマは、『株式会社VS合同会社』です。個人事業から法人成りをする場合や起業の際、いきなり法人組織でスタートする場合等、この法人の形態をいずれにするか、悩まれる方が非常に多いのです。まずはそれぞれの定義を確認しましょう。

株式会社とは?

まず、株式会社とは『株式を所有する株主から有限責任の下に資金を調達して委任を受けた取締役等の役員である経営者が事業を行い、その事業から得られた利益を株主に配当する『法人格』を有する会社形態であり、営利を目的とした団体』のことを意味します。

これが株式会社ですが、あくまで基本的な定義であり、不特定多数の株主から資金を募るとか経営者を募集するといった大そうな組織イメージを持たないで下さいね。

実は、世の中に沢山存在するオーナー企業や中小企業の多くが、社長である自分自身が株主も兼ねているオーナー企業であるケースが一般的なのです。あなたが起業して会社を立ち上げる際には、ベンチャー企業として上場を目指す場合等を除き、自分自身が全額資金を出資してかつ社長に就任すればいいだけなのです。

合同会社とは?

合同会社は、現在では株式会社と並んで最もポピュラーな会社形態の一つ。米国で認められている『LLC (Limited Liability Company)』 をモデルとして導入されたこともあり『日本版LLC』とも呼ばれています。

最大の特徴は株式会社とは異なり、出資と経営が一体であること。基本的に『株主=代表取締役』なのです。そのため意思決定手続き等が非常にシンプル。なお、合同会社では代表取締役や取締役と言った言葉はなく『代表社員』や『社員』と言います。

また、合同会社のすべての社員は、株式会社の株主と同様に会社の債務について有限責任となります。株式公開して上場することが出来ない点や信用面が少々不安に思われることもありますが、設立コストが非常に安いこと等のメリットもあり、新規設立が認められなくなった有限会社に代わって小規模事業の法人化に活用されることが多いのです。

さて、この両者、株式会社も合同会社もそれぞれメリットやデメリットがあります。それぞれの項目について確認してみましょう!

(1)設立コスト(定款認証費用・設立登記の登録免許税等)

設立にかかるコストとしては定款と言う会社のルールブック的なものの作成費用や、法務局での登録免許税の納付等があります。

定款については公証人役場という所で公証人の認証を受けた上で法務局に提出しなければなりません。認証費用が5万円かかりますが、これは株式会社だけの話。合同会社については定款の作成は必要ですが認証は何と不要!つまり自分で作成すれば一切コストはかからないのです。

なお、定款には収入印紙を貼付けて4万円分の印紙税を納税する必要がありますが、電子定款という形で電子媒体での提出をすれば印紙税は一切かかりません。電子定款での提出をするためには司法書士や行政書士等の専門家に依頼することが必須となります。もちろん自分で電子定款の作成や提出を出来ないことはないですがシステム料金等さらに追加の準備コスト等が発生するのでオススメしません。。

また、法務局での設立登記の際に発生する登録免許税の金額は資本金額の7/1,000です。これには最低金額が定められており、株式会社の場合は最低15万円、合同会社では最低6万円。合同会社設立の登録免許税は株式会社の半額以下となります。

以上の費用の金額を合計すると、

司法書士等の専門家に依頼すればさらに数万円のコストが上乗せとなりますが、実費のみで14万円もの差があるのです。コスト面では圧倒的に合同会社有利と言えるでしょう。

(2)出資や意思決定

現在は出資すべき資本金の最低ラインは株式会社も合同会社も1円以上と定められており差はありません。そして、合同会社は、社員(=出資者かつ役員のこと)1名から設立可能であり、株式会社も役員である取締役1名から設立可能です。ちなみに『取締役』とは、会社の経営を株主から委任された役員であり、会社の登記簿にも取締役として登記されます。

さて、株式会社では『所有と経営の分離』として株主と経営者が別であるという考えが根底にある一方で、合同会社は所有する者と経営する者が同一です。しかし前述の通り株式会社でも、世の中の中小企業やひとり会社は株主と経営者が同一であるオーナー経営者が多数。以上の理由から、出資や会社の意思決定については株式会社も合同会社も大差ないと考えていいでしょう。

しかし、会社の意思決定については注意が必要!まず、株式会社では出資割合に応じて議決権が付与されます。出資割合とはどれくらいのお金を会社に拠出しているか、どれくらいの割合の株式を所有しているかという意味です。一番多く株式等を持つものにその分の権利が付与されます。ひとり会社やオーナー企業は100%社長出資であることが多く、仮に自分とは別の人間に役員として加わってもらったとしても全ての権利はそのオーナーである自分に帰属するので、会社の経営権を奪われる等の心配はほぼないでしょう。

ところが、合同会社の場合は話が異なります!出資割合に関係なく、社員一人につき1つの議決権が付与されるという完全合議制なのです。この点を考慮すると、安易に仲良し友達同士で起業したり、知人同士で会社を立上ることもオススメしません。仮に友達3人で合同会社を立上げた場合、意思疎通が取れず何かで意見の相違が生じてトラブルとなり、自分以外の二人に結託されて会社を乗っ取られてしまうなんてこともあり得ないことではありません。友人と一緒に何かに取組むのは素晴らしいことですが、趣味の集まりやプライベートのことならあまり問題はないものの、ビジネスとなると話は別なのです。

私はこれまでお金で揉めて事業解散等に至ったケースを数多く見てきました。それでもあなたが友人や知人と数人で起業するならば、株式会社として権限の割合を明確にした上でスタートした方が無難です!さらにこれからの時代一番オススメなのはお互いがひとり会社を立上げて企業同士の付き合いをしながらビジネス上の相乗効果を生み出していくというもの。お互いが独立した関係で縛られることなくビジネスを円滑に進められるかもしれません。

(3)代表者の名称

株式会社の社長の登記上の正式名称は『代表取締役』。一方、合同会社は『代表社員』です。その他の一般役員の名称はそれぞれ『取締役』と『社員』。

つまらない話かもしれませんが、言葉の響きが全然違うのです。(笑)皆さんは代表取締役になりたいのか?或いは代表社員になりたいのか?細かいことにこだわる人はじっくりと考えて頂きたいと思います。

(4)役員の任期

株式会社の役員には任期があります。『ひとり会社なんやから次期役員も俺や!』と言いたい気持ちはわかります(笑)。だがそうはいきません。『重任』という更新手続きが必要となり、登記費用もかかるのです。仮にこれを忘れて放置してしまうと『過料』というペナルティーを課せられるため注意が必要です。

この役員の任期は、最長10年までの設定が可能となっています。目いっぱい10年で設定することにより登記費用を節約することが出来ます。

ただし、もし親族ではない外部役員がいる時は要注意! 経営上の揉め事が生じた際でも任期が来るまでは役員として在任し続けることが可能。解任という強制的な手続きもあるのですが手間もかかる上に、謄本にその記録が残ってしまい会社の信用低下に繋がる可能性もあるのでオススメ出来ません。

一方で、合同会社には社員の任期はありません。つまり更新費用も一切かからないのです。以上のように、役員の任期に関しても合同会社が有利と言えるでしょう。

(5)株式の公開・決算の公告義務等

株式会社は株式公開が可能。株式公開とは証券取引所にて出資者=株主を不特定多数の人から広く公募出来ることを意味します。つまり上場することが出来るのです。

一方、合同会社はそもそも株式公開が出来ません。それ以前に世の中に広く流通させられる株式と言う概念がないのです。そのため上場等壮大な目標がある場合は、株式会社をオススメします。

また、株式会社には、実は決算書の公告義務があります。政府の機関紙である官報等で財務情報を開示する義務があるのです。一方、合同会社にはその義務はありません。しかしながら、実際は上場企業以外の中小企業で決算公告をしている会社は皆無に等しいのです。罰則ルールも一応あるのですが、未だ適用例がありません。

(6)税制面

株式会社と合同会社で税制面の違いはなく、税率構造等も全く同じ。税制面での有利不利はありません。

(7)社会的信用力

まだ聞いたこともないという人も多い合同会社ですが、導入された2006年当初と比べるとその設立件数は増え、随分世の中に浸透してきました。それでも稀に『聞いたことがない』という人もいます。実際にお客様の創業融資相談の際、ある金融機関の担当者に『合同会社って何?』と聞かれたことすらあります(笑)。結果的に融資審査が不利になったわけではありませんが、ひょっとしたら審査担当者のさじ加減次第では不利になることもあるのではないかと考えています。彼らも信用力がなさそうでイマイチ不安だと思うのでしょう。

しかし、アップルジャパンやグーグル、アマゾンジャパン等世の中の超有名企業の中にも合同会社が実は沢山あるということを覚えておきましょう。あとは個人の感覚次第ですね。

さて、以上の相違点等を知り、余計に迷ってしまった、という方も多いかもしれません(笑)、改めて参考になる判断基準をお伝えしておきます。それはコスト面と信用面を基準に考えることです。

いかがでしょうか?この判断基準を参考に決めて頂きたいと思います。なお、一旦合同会社を設立してから取引上どうしても不都合が生じた場合、コストはかかりますが、株式会社への変更も可能。そしてその逆も可能。ご安心下さいね!

ちなみにこのメルマガの著者である私自身、株式会社と合同会社を経営しています。株式会社はコンサルティング業務や大手の会社に対する企業研修業務がメイン。一方、合同会社では太陽光発電事業を営んでおりさらに今後は不動産賃貸業等も検討しています。コスト面と信用面を考えながらこの両者を使い分けています。是非参考にして下さい!

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image by:shutterstock

税理士YouTuberヒロ税理士この著者の記事一覧

大学卒業後会計事務所に入所。中小企業および個人の税務申告や経営サポートに携わる。その後、新日本アーンストアンドヤング税理士法人に移籍し、国際税務業務に従事。2005年ヒロ☆総合会計事務所を設立。2010年に株式会社ヒロ経営研究所を設立。税務・会計に関するサポートの他、起業・経営コンサルティングを行い中小企業の経営改革推進を行う。『税理士らしくない税理士』として専門用語を使わずに喋るセミナーは各方面で好評を受け、現在は税務のみならず起業や経営についての講演活動にも力を入れている。自身が運営する、登録者数約10万人超のYouTube『税理士YouTuberチャンネル!!』は初心者向けに税務や経営の問題をわかりやすく解説されており非常に評価が高い。

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