仕事で部下を持つ上司であれば、できる人材ほど扱いづらい、という悩みを一度でも抱えたことのある人は多いのではないでしょうか。仕事ができる優秀な部下ほどプライドが高く、上司の言うことを聞いてくれないものですが、何かうまく解決する方法はないのでしょうか。今回のメルマガ『金田博之の「出世したサラリーマンが絶対やらなかったこと」』では外資系IT企業の日本法人代表をつとめる金田博之さんが、そんな扱いづらいけど優秀な部下をうまく使う方法について、実体験を元にした具体例をあげながら伝授しています。
言うことを聞かない部下を動かす方法。信頼される上司のマネジメント術
課題背景
昨今、テクノロジーの進歩によって私たちの仕事のありかたは大きく変わろうとしています。
大手の量販店ではセルフレジが導入されるなど、機械化が進んでおり、人間の仕事がどんどん減っていることは普段の生活からも感じることでしょう。
そんな中でも、できる人材・優秀な人材というのは常に求められています。
変化する時代だからこそ、機械にはできない変化への柔軟さや、より高いパフォーマンスを追い求め自ら変化していく姿勢が必要だからです。
しかしながら、そのような優秀な人材ほどプライドが高く、上位の管理者の指示であっても素直に聞いてくれない場面が増えてきます。
仕事はできるが気難しく、扱いにくい部下に対して、上司はどのように接するのがいいのでしょうか?
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プライドの高い部下と、下手に出れない上司
これは前職の会社で大手メーカーとの契約がかかった重要なプロジェクトで起きた話です。
プロジェクトメンバーのY君は若手ながら非常に成績優秀で、その実力に期待されて先方と直接やりとりをする窓口係に抜擢されました。
しかし、いざプロジェクトが始まってからY君から具体的な進捗が上がらないまま時間が過ぎ、どうやらメールで少しやり取りした程度でほとんど進んでいない様子。
プロジェクトを任されていた上司(私が当時事業部長だったので、その部下で部長クラス)が少し急かすように、顧客のアポを取るように指示したところ、「もう動いてます」との返事はあるが、それから数日経ってもまだアポが取れていなかったのです。
Y君の動きの遅さに焦りを感じた上司はなんとか強引に急かそうと自らアポを取ろうとしたり、そのプロジェクト会議にも同席しようとしますが、どうもY君は「自分のペースでやりたい」「あまり仕事に干渉しないでほしい」といった様子で快く思っていませんでした。
結果、2人の間にはピリピリした空気が走り、これでは他のメンバーにも悪影響です。
優秀であるがゆえの、プライドの高い典型例とも言えるY君と、責任感が強いがゆえに部下にも強引な態度を示す上司。
このように、プライドが高い人間というのは非常に扱いにくく感じる人は多いと思います。
そして上司も立場があるので、あまり下手に出すぎるのもよくありません。
このジレンマを解決するにはまず、上司の方が部下へと歩み寄り、 部下の能力を評価して尊重してあげる ことが大切だと考えています。
優秀な人は自分のやり方に誇りを持っている
プライドが高く、優秀な人間というのは自分の仕事に大きな誇りを持っています。
他の人にはできない気配りや、細かい部分へのこだわり、誰にも負けないという熱意など、仕事への姿勢は真剣そのものです。
そういった背景があって、自分のやり方に固執してしまう、やり方を指示されるのを嫌うという面もあります。
なので上司の立場からは、当人のやり方に口を出すのではなく、本人のやり方を認めた上で プラスアルファの成果が出せる提案 をしていくアプローチが効果的でしょう。
Y君の例でいくと、
「このペースだと他社に抜かれちゃうから、すぐにアポ取りなさい」
と要件のみの指示だと、Y君は 自分のやり方が否定されたような気持ちになってしまう ため、上司へ反発する気持ちが生まれてしまいます。
少し目線を変えて、
「最近は競合もスピード重視になってきてるよね。Y君は現場だからそういうの強く感じるでしょ?」
「この流れだと先方もできるだけ即決したがるだろうから、こっちも早めにアポ取って詰めた方がいいんじゃない?Y君はどう思う?」
このように言うとどうでしょうか。
この場合、Y君のやり方は否定されていませんし、仕事できる人だということを認めた上で、指示ではなく意見を聞きたいという雰囲気で聞いています。
このような主導権を持たせるアプローチであればY君のようなプライドの高い人でなくても、 誰でも気持ちよく上司の意見に耳を傾ける でしょう。
また、細かな進捗を引き出したい場面ではどうでしょう。
こちらもやはりあまり干渉されたくないと思っているので、こちらが下手な聞き方をしても優秀な人は躱すのも上手でうまくはぐらかされてしまいます。
聞きづらいとは思いますが、責任の大きな仕事になればなるほど、上司のフォロー体勢も重要になってくるので、どうにか部下の方から報連相のアクションが欲しいところです。
その場合も、「報告しなさい」とか「なんで連絡しないの」といった手順を押し付けるような指示ではなく、少し目線を変えて、
「 あの件どうなってる?こっちで協力できることはない? 」
のような気にかけているスタンスで入っていくといいでしょう。
特にプライドの高い人になると、周りに相談しずらいと思っていて、本当は困っているけど自分から上司を頼れなかったりします。
そんなときに上司の方から「協力できることはないか」と受け入れる姿勢を示すことで心を開いて話してくれるでしょう。
相手を尊重できる上司は信頼される
さて、プロジェクトの話に戻りますが、期日が迫ってきてチームの緊張感が高まっていく中、やはりY君と上司は相変わらずでした。
そこで先程話したようなやり方で、上司がY君へのアプローチを変えてみたところ、なんとY君の方から上司へと協力をお願いするようになり、ギリギリの時間しかなかったにも関わらずメーカーとの合意を獲得することができたのです。
わずかな時間で合意に結びつけたY君の手腕はやはり優秀でしたが、その彼をうまく管理できた上司もさすがと言わざるをえません。
後日談ですが、一度は険悪だった2人ですが、このプロジェクトを協力して乗り越えたことで絆が深まり、今ではプライベートな時間も共有するほどの仲になったそうです。
このように、一見扱いが難しいような人というのは 一度信頼を築くとその関係は非常に強いものになります 。
また、プライドが高い人というのも気難しいように見えて、実はそのこだわりを認めてくれる存在を常に欲しているある意味孤独な人が多いのです。
上司はその一面にいち早く気づき、部下へと歩み寄る姿勢を見せることで、その部下の実力が120%引き出されることでしょう。
そして今回の目線を変えて相手を尊重するアプローチは、このようなプライドの高い人以外にも非常に有効です。
部下はあなたのために動く駒ではなく、同じ目的を持って一緒に働く大切なパートナーであるため、相手の考えややり方は常に尊重し、その中でベストな解決策を探せる関係づくりを目指していくのが良いのです。
今回の実践ポイント
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優秀な人ほどプライドが高く、仕事に口出しされることを嫌う。
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相手を尊重し、少し視点を変えた言い方をすることで相手の受け取り方は全く変わる。
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プライドが高い人ほど、認めてくれる上司を求めている。
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