もうすぐ2020年が終わり、2021年を迎えます。1月1日の元日はすべての人にとっておめでたい日ですが、その日が誕生日という方は年金で少々気をつけなければいけないことがあるようです。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、1月1日生まれの人の年金について解説しながら、さまざまな年金のケースについて詳述しています。
1月1日生まれの人で考える、年金でいう年齢到達日と税金
もうすぐ2021年を迎えますが、1月1日が誕生日の人っていつもどんなふうに元旦を過ごされてるのかなって時々思います。誕生日と元旦の両方おめでたい日をですね。
さて、元旦に誕生日というのはやや年金においては気を付けなければならない事が他の人よりもいくつか多いです(元旦に限らず、その月の1日生まれの人はやや考え方に気を付けないといけない)。
まず税金ですね。
年金(老齢の年金に限る)には税金がかかるんですが、すべての人に掛るわけではなく一定の年金額を貰ってる人に税金がかかってきます。その年金額は65歳前の人と、65歳以降の人とでは異なっています。
65歳前から貰ってる人は年金額が年間108万円以上貰える場合は所得税がかかってきます。65歳以降の人は年間158万円以上の年金が貰えると所得税がかかってきます。
なんで108万円とか158万円かというと、108万円の内訳は基礎控除が48万円と公的年金等控除が60万円なのでそれ以内なら課税されない。158万円は基礎控除が48万円と、公的年金等控除が110万円なのでそれ以内なら課税されない。
ところで、おおむね毎年10月頃になると扶養親族等申告書というハガキが課税対象者には送付されてきます。それを提出期限までに提出した人は、税額が計算されて翌年2月15日の年金振込額から源泉徴収税額を天引きして年金を支払います。扶養親族等申告書を提出しないと必要な控除が受けられないので、源泉徴収税額が高くなり、年金振込額が少なくなる場合があります。
まあ、令和2年分からは提出しなくても基礎控除が適用されるから、提出忘れた!といって高額な源泉徴収税額が天引きになる事は無くなりました。それまでは扶養親族等申告書出し忘れてた人は、2月15日振込額からの税金額が高額過ぎて驚いて相談…というパターンがよくあったものですけどね^^;未提出だった人はその後に提出されたら、徴収されすぎた税金を次回の年金振り込み時に還付という形を取ったりしました。年金受給者になっても、このように必要な手続きは毎年続くものがあります。
さて、源泉徴収税額というのは65歳前後で変わってくるのですが、その108万円基準から158万円基準に切り替えられるのが1月1日誕生日の人を使って考えるとわかりやすいです。なので今回は1月1日誕生日の人を使って、税金を考えていきましょう。
1.昭和32年1月1日生まれの男性(単純に見ると令和3年1月1日に64歳になる)
20歳になるのは昭和51年12月31日なので、昭和51年12月分から国民年金保険料納付義務が発生した。
—
※ 注意
誕生日は確かに1月1日ですが、新しい年齢に到達するのはその前日である12月31日。よって、12月が誕生月なので12月分からの国民年金保険料納付義務が発生する。誕生日の前日に新しい年齢に到達するというのは全員に共通する話。これは明治35(1902)年の年齢に関する法律で決められています。
—
自分の家の農家で働いており、昭和51年12月から国民年金に強制加入となった。昭和51年12月から昭和55年6月までの43ヶ月間は国民年金保険料を納付した。
昭和55年7月から都市部での民間企業に勤めるようになり、60歳到達後の年度末である平成29年3月までの441ヶ月間は厚生年金に加入する。なお、昭和55年7月から平成15年3月までの273ヶ月間の平均給与(平均標準報酬月額)は47万円とし、平成15年4月から平成29年3月までの168ヶ月間の平均給与(平均標準報酬額)は53万円とします。
ちなみになんで平成15年度前後で、平均給与を分けてるのかというと平成15年4月以降は賞与も年金額に反映するようになったから。
—
※ 注意
国民年金に強制加入は60歳到達日の属する月の前月までが強制加入。つまり、平成28年12月31日に60歳到達日が来るから、その前月である平成28年11月までが国民年金強制加入期間となる(昭和51年12月から平成28年11月までの480ヵ月間が国民年金加入。この男性は未納無しですね)。
—
さて、この男性は平成29年3月(まだ60歳の時)までの厚生年金期間がありますが、年金支給開始年齢は62歳(平成31年1月1日。つまり、平成30年12月31日に62歳到達)です。
62歳から貰える年金額を計算します。
・62歳(平成30年12月31日受給権発生し、平成31年1月分から年金が貰える)からの老齢厚生年金(報酬比例部分)→47万円×7.125÷1,000×273ヵ月+53万円×5.481÷1,000×168ヵ月=914,209円+488,028円=1,402,237円(月額116,853円)
年金は偶数月に前2ヶ月分支払うので116,853円×2ヵ月=233,706円
この男性は140万円くらいの老齢厚生年金を受給してますが、気を付けなければならないのは65歳未満の人で年間108万円以上の年金を受給してますよね。という事は所得税の課税対象者となる。
今までの源泉徴収されてた金額を計算してみましょう。毎年の扶養親族等申告書を提出したものとします(令和2年分において計算)。
源泉徴収税額を計算する時は基礎控除を計算する(基礎控除計算式は年金月額×25%+65,000円。僕はいつも2ヶ月分で計算します)。
・基礎控除→233,706円×25%+65,000円×2ヵ月=188,427円
(源泉徴収税を計算する場合の基礎控除は月額最低9万円の2ヶ月分なら18万円が使えますが、18万円以上なので188,427円を基礎控除として使う)
扶養してる配偶者などは居ないとします。
2ヶ月分の年金223,706円-基礎控除188,427円=45,279円
45,279円×5.105%=2,311円
2,311円を毎回の年金振込額から源泉徴収する。
まあ…源泉徴収税額は少ないですね^^;あんまり気にするほど源泉徴収される人はそう多くはないです。
さて、毎年送られてきた扶養親族等申告書(令和3年分)は令和2年にはなぜか届かなかった。もしいつも通り申告書を提出していた場合は、新しい源泉徴収税は令和3年2月15日から徴収が始まる。65歳未満の人で、年額108万円以上の人は課税対象者となるから、申告書を提出しなければならないはずなのにどうして申告書は送付されなかったのか?
結論から言うと、この男性は令和3年中に65歳を迎える人なので、令和3年中に158万円以上の年金を貰う見込みが無かったから。よって、この男性は令和3年は課税対象者ではない。
しかしながらこの男性は令和4年1月1日に65歳を迎えるから、令和3年中に65歳を迎えるというのはおかしいのではないかと思われますよね。でも、記事の冒頭でも言ったように新しい年齢は誕生日の前日に訪れるので、令和3年12月31日がこの男性が65歳に到達する日となります。つまり、令和3年中にギリギリ65歳の仲間入りになる人。令和3年中に65歳を迎えるから、令和3年分は158万円基準となりこの男性は非課税者となった。なので令和3年2月15日以降の年金からは源泉徴収税額は無い。
次に65歳になると老齢基礎年金も発生しますよね。その年金額を計算しましょう。
・65歳(令和3年12月31日到達し、令和4年1月分から年金が発生)からの老齢基礎年金→781,700円÷480ヶ月×480ヵ月=781,700円
老齢厚生年金(報酬比例部分)→1,402,237円
・老齢厚生年金(差額加算)→1,630円×441ヵ月-781,700円÷480ヶ月×437ヵ月(20歳から60歳までの国民年金同時加入中の厚年期間)=718,830円-711,673円=7,157円
よって、65歳からの翌月分(令和3年12月31日の翌月は令和4年1月)からの年金総額は、老齢基礎年金781,700円+老齢厚生年金(報酬比例部分1,402,237円+差額加算7,157円)=2,191,094円(2ヶ月分365,182円)
ちなみに65歳になると年金額が変更されて、158万円以上の課税対象者になりましたよね。源泉徴収税額を計算してみましょう。
なお、令和3年に出すはずと思ってた扶養親族等申告書はまだ65歳からの年金額になってないので、金額的に送付はされない人ですが令和4年2月振込の前日時点の年金額で源泉徴収するかどうかを判定します(2月の年金額確定の締日は前月1月20日ごろなのでその辺。判定時に申告書が送付される)。
課税対象者になるので源泉徴収税額を計算します。
・65歳以上の人の基礎控除→365,182円×25%+65,000円×2ヵ月=221,295円
ただし、65歳以上の基礎控除は最低月額135,000円使えるので、2ヶ月分だと27万円。よって27万円を使う。扶養親族は無しとします。
365,182円-基礎控除27万円=95,182円
・源泉徴収税額→96,182円×5.105%=4,859円
よって、毎回の年金振込額から4,859円の所得税が源泉徴収される。
※ 追記
65歳以上になると社会保険料(介護保険料、国民健康保険や後期高齢者医療保険など)、個人住民税が年金から天引きされる。なお、天引きされる社会保険料は社会保険料控除として税金を低くする。天引きされなかった社会保険料や、その他の控除が使える人は翌年の確定申告(厳密には還付申告)で精算する。確定申告と違って還付申告は源泉徴収された翌年1月1日以降5年以内ならいつでもできる。
image by: Shutterstock.com