緊急事態宣言の延長も決まり、さらなる苦戦が予想される実店舗型の小売業。この苦境を乗り切るためには、どのような施策が必要なのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、客数を増やすための戦略を詳しく、そして具体的にレクチャーしています。
客数を増やすための戦略
コロナが落ち着かなくて、お店も大変です。こんな時は、もう一度じっくりとお店の戦略を考えてみましょう。今までに行った作業と同じでも構いません。頭をリセットしてみてはいかがでしょう。
売上が減る原因
戦略をしっかりと進めているつもりでも、「抜け」が生じることもあります。それをなくすには、事柄を分類整理して考えると良いです。
例えば、売上が減ってしまうのには、さまざまな理由があります。コロナ、災害、天候不順、少子化といったこともその理由かもしれません。しかし、これらの問題はあなたのお店でどうすることもできません。
その一方で、こんな理由もあります。
- 販売商品に魅力がない
- 売場のレイアウトが悪い
- お店のことが、お客様に伝わっていない
- お客様との親密度が下がっている
これらの理由は、お店の方で何とかできることばかりです。何も手を打たなければ、お客様の数が減ってしまいます。ですから、手を打てば客数が増えて売上は増えていくでしょう。
では、どうすればいいのでしょうか。
- 魅力のある商品を揃える
- 売場のレイアウトを変える
- お店のことをお客様に伝える
- 親密な接客をする
これでも多少の答えにはなっていますが、具体的とはいえません。そこで、この質問にお答えする前に、次の質問にお答えください。
- 集客のために、どんなことをしていますか
- 年間の販売促進計画は立てていますか
- 最近の一年間の売れ筋商品とその売上高は
- 毎日、毎月の客数は分かっていますか
- お客様に買いやすい売り場になっていますか
- 顧客リストの整理、更新をしていますか
- SNSでの発信や返信を十分に行っていますか
これらの質問に答えていくと、お客様を増やす手立てが見えてきます。そして、あるお店がこの質問に答えてくれました。
打つべき手
ざっと、こんなお答えでした
- 毎月チラシを店頭で配っています
- 年間の販売促進計画は立てていません
- 月別の商品別売上データがあります
- 客数のデータは取っていません
- 買いやすい売り場にしているつもりです
- 顧客リストはありますが、何年も更新していません
- SNSが大事だとは分かっていますが、まだまだです
あなたの答えはどうだったでしょう。それはともかく、その後このお店とのヒアリングを通じて、いろいろな「打つべき手」が見えてきました。それを、販売戦略、商品戦略、販促戦略、顧客戦略、店頭管理、販売管理に分類して考えたのが以下のことです。
販売戦略
- 売上の多い商品の販売に注力して、売上を伸ばしていく
- 商品別年間売上目標を設定する
- 毎月の客数と客単価のアップ目標を設定する
- ネット販売を強化して、年商の20%を目標とする。
商品戦略
- 売上の7割を占める上位商品の品ぞろえを充実する
- 回転の速い必需品の品ぞろえで、顧客誘引につなげる
- お店独自の商品セットを考え、客単価のアップを図る
- 簡単な新商品の開発をして、差別化を図る
販促戦略
- 年間4回ほどの店頭イベントを開催し、客数のアップを図る
- イベントに合わせた折り込みチラシで新規顧客を取り込む
- 常連客には予告チラシを封筒に入れて、事前に手渡しをする
- 購入商品や配送商品に「お礼カード」を同封する
- 「当店流上手な使い方」などお役立ち情報をホームページやSNSに動画でアップする
顧客戦略
- 顧客リストを整理して、優良顧客へ重点的にアプローチをする
- SNSの発信をこまめに行い、若年層の顧客を増やす
店舗管理
- 売場レイアウトを変更し、顧客の回遊性向上を図る
- レジの位置を変更し、スペースの有効活用をする
販売管理
- 商品別月別売上目標表による販売管理をする
- 売上目標や実績数字を従業員全員で共有する
- 数年後の年商目標(中期計画)を決める
- 数年後のネット売上目標も決める
いかがですか。実際の具体的な品名や数字を示すことは出来ませんが、あなたのお店でも応用できることではないでしょうか。
戦略を引き出す
とはいえ、これらのことを全部一度に行うのは大変です。ですから、このお店にはまず、
- 売上の多い商品の販売への注力
- 商品別売上目標の設定
- 年間4回の店頭イベント開催
- イベントの折り込みチラシ配布
- 売場レイアウトの変更
から始めていただくように提案しました。そして、これらの具体的戦略を引き出すために必要なのが売上データです。過去3年分の商品別売上データがあれば、そこからいろいろなことが見えてきます。このお店でも、データから次のようなことが分かりました。
- 過去3年間の商品別売上推移
- 各年の商品別売上構成
- 売上の7割を占める上位品目
- 年間の月別売上構成比
- 季節による売上の変化
- 思ったより売れている商品、売れていない商品
- オリジナル商品の、売上・利益貢献度
- 日別、月別の客数予想
ここから引き出された事柄をベースにして、それぞれの「戦略」が考えられたということです。
さらに、売上を着実に増やすには、売上目標が必要となります。今年1年間の月別商品別売上目標を作っていただくようにお願いしました。この数字を毎月の実績と照らし合わせていく作業が必要です。その実績には、販促イベントやDMやチラシやSNSの効果が反映されます。
きっとこのお店は、お客様の数が増えて売上も増えていくことでしょう。もちろん、あなたのお店もそうした手を打っていると思いますが、もう一度じっくりと考えてみてください。
そして、戦略を考えるのも大切ですが、もっと重要なことをお伝えします。それは、もう一度お店の方針や目指す姿を、従業員の皆さんと確認することです。その上で、客数を増やしていきましょう。このコロナをのり越えていくのが、あなたの役目です。
■今日のツボ■
- 事柄を分類整理して考えると、「抜け」がなくなる
- 販売戦略、商品戦略、販促戦略、顧客戦略、店頭管理、販売管理に分類して考えると良い
- 売上データの分析をすると、戦略が導きやすい
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