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米軍「思いやり予算」年間2千億。再交渉でも拒否すべきバイデン政権からの増額要求

昨年中にまとまらず異例の越年交渉となっていた在日米軍駐留経費の日本の負担(いわゆる「思いやり予算」)は、日本側が提案した2020年度までと同水準の約2000億円を暫定的に1年延長することで妥結するようです。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、この交渉に関する東京新聞の記事を検証。5年毎に見直される予算の1年分が暫定となったことで、残り4年分の増額にアメリカ側が本腰を入れるとの見方を示し、その上でまったく逆方向の見直しの必要性を訴えています。

新聞は「米軍の駐留経費」についてどう報じてきたか?

きょうは《東京》から。6面に、米軍の駐留経費に関する記事が出ています。バイデン政権と米軍の駐留経費に関する記事は、「米軍」と「駐留経費」「バイデン」をANDでつないで検索すると8件ヒットしました。検索は「米軍 AND 駐留経費 AND バイデン」で。まずは6面記事の見出しから。

米軍駐留経費 1年延長
日本提案 バイデン政権容認

日米両政府は在日米軍駐留経費(いわゆる「思いやり予算」)を巡り、2021年度については暫定的な現行水準を維持、1年延長することで大筋合意。22年度以降については改めて協議することに。日本側の提案を米側が容認した形。21年度当初予算には暫定額として2017億円が計上されている。

●uttiiの眼

「思いやり予算」とは、在日米軍基地職員の労務費や基地内の光熱・水道費などを日本側が出してやるもので、防衛庁長官だった金丸氏が説明に窮して「思いやり」と言ったところから、批判の意味も込めて「思いやり予算」と称されるようになったもの。特別協定(3月末で失効)を根拠に支払われていて、地位協定にさえ違反した支出とも言われる。

2021年度以降については、増額を要求するトランプ政権(4倍あるいは5倍への増額要求か…)と合意できず、バイデン政権に先送りされていた。4月から始まる22年以降についての協議では「日米同盟の強化や、宇宙・サイバーなど新たに防衛分野での役割分担も議論する」とされていて、負担増を求めてくることは間違いない。

【サーチ&リサーチ】

*日米政府間の協議は、バイデン氏の大統領選勝利が確実視された11月、早くも開始されている。

2020年11月11日付
協議開始はワシントンで。現地時間9日と10日の両日実施されている。「在日米軍の活動に駐留経費が重要な役割を果たしていると確認し、日米同盟を一層強化していく方針で一致した」とされているが、「1年分暫定合意」の可能性を指摘する日本政府高官も。

*翌日、上記記事の内容を補足する記事が出る。タイトルは「米 巨額要求見送りか 駐留経費負担 初交渉」。

2020年12月22日付
交渉は年末に至っても妥結には至らず、政府は「現行協定の水準に 合わせた額」として2017億円を計上。

2021年1月30日付社説
この社説の中では、「思いやり予算」を含めた日本側負担全体の問題に言及。「日本の負担は米軍施設借料や基地交付金などを加えれば総額年間8千億円近くに達する。そもそも日米安全保障条約上、日本側に義務のない負担であり、今後の交渉では過重な日本側負担の実情を丁寧に説明したい」と。

●uttiiの眼

バイデン政権としても「増額」は至上命題なのだろう。時間切れで日本政府は暫定額を計上することになったが、新しい特別協定(5年ごとに結ぶ)は、最初の1年については暫定額とすることで合意し、新たに残り4年間分をじっくり議論しようという腹のようだ。今日の記事では「22年度以降」となっているのは、残り4年間の分という意味だ。

日米の安全保障を巡って「見直す」べきものは、この「思いやり予算」を含め、数多ある。特に、名護市辺野古の新基地建設は、あらゆる意味で「負の遺産」となりかねない。2兆5千億円以上の費用負担による「財政の破壊」、ジュゴンが生息し稀少なサンゴが息づく「自然環境の破壊」、度重なる地元の反対意思表明を無視してきたことによる「地方自治の破壊」。日米関係が真に「同盟」関係ならば、日本国民の現在と将来に回復不能とも思える深い傷を残す破壊行為を敢行することに、どんな意味があるのだろうか。

image by:EQRoy / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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