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ワクチンで高齢者1000人死亡の可能性も?池田教授が懸念する最悪事態

日本国内の医療従事者へのワクチン接種は、一部で2度目の接種を終えた人もいて、概ね順調のようです。しかし、副反応の割合が欧米のデータより高めと報告され、欧州ではアストラゼネカ製ワクチンの使用を一時中断する国があるなど、ワクチン接種に新たな不安を感じ始めた人もいるのではないでしょうか。メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』著者で、CX系「ホンマでっか!?TV」でもお馴染みの池田清彦教授も若干の懸念を抱く一人。副反応のデータやノルウェーでの接種後の死者数の報告から、「高齢者からではなく若い人からの接種にした方がいい」と私見を述べています。

新型コロナワクチン打つべきか打たざるべきか

医療従事者に対する新型コロナワクチンの接種が始まったが、自分の番が回ってきた時に、打つべきか打たざるべきか迷っている人もいるだろう。新型コロナワクチンにはいくつかのタイプがあって、まずはその辺りから説明したい。

日本で今、接種されているのはファイザー製のmRNAワクチンで、新型コロナワクチンのスパイク(新型コロナウイルスの表面にある棘のようなタンパク質で、これが標的細胞の表面にあるACE2というタンパク質を認識してここから侵入する)をコードするmRNAを脂質ナノ粒子に封入して、これを細胞に取り込ませ、細胞のタンパク質合成機能を使ってスパイクタンパク質を作らせるのである。

スパイクタンパク質は抗原として免疫システムに認識され、これに対する抗体が作られる。抗体は侵入してきた新型コロナウイルスのスパイクを攻撃するので、感染が妨げられるという仕組みである。ファイザー社のほか、モデルナのワクチンも同タイプである。これによく似たものに、アストラゼネカ社やジョンソン&ジョンソンが開発したウイルスベクターワクチンがあり、これはmRNAを運ぶベクターとしてナノ粒子の代わりに、人体に無害な改変ウイルス(主にアデノウイルス)を使うもので、それ以外の基本的な機序は同様である。

mRNAワクチンは低温で保管しなくてはならないので(ファイザーのワクチンはマイナス80℃~60℃、モデルナのものはマイナス20℃で6か月間保存可能)、取り扱いが面倒だが、ウイルスベクターワクチンは、マイナス30℃で2年間、プラス2℃~8℃で3か月間保存可能なので、小さな診療所でも接種可能である。ウイルスベクターワクチンの問題点は、何回か打っているうちに、ベクターのウイルスに抗体ができて、ワクチンが壊されてしまう恐れがあることである。

他にも組み換えタンパクワクチンというのがあり、ノババックス社やサノフィ社、塩野義製薬などが開発している。これは、新型コロナウイルスの遺伝子を大腸菌や酵母菌のゲノムに挿入して、新型コロナウイルスの遺伝子がコードするタンパク質を作らせ、これを投与してこれに対する抗体を作らせるもので、B型肝炎のウイルスに対するワクチンですでに実用化されている技術を使う。

伝統的なワクチンは不活化ワクチンで、ウイルスを不活化して無毒化したものを接種する方法である。新型コロナウイルスに対する不活化ワクチンは中国で実用化されており、アラブ首長国連邦などでも使われている。

こういった様々な種類のワクチンはどのくらい予防効果を持つのだろうか。ファイザーのmRNAワクチンは発症予防効果90%以上と喧伝されている。これは、接種した人の90%は発症しないということではなく、ワクチンを打たなかった人に比べて発症率が90%少なかったということで、発症リスクが10分の1になったということだ。

モデルナのワクチンも94.1%ということなので、効果は十分である。若い人の方が効果は高く、18歳以上65歳未満では95.6%、65歳以上では86.4%であった。モデルナのワクチンでは重症化を100%予防できるということなので、数字を信用すれば、すごいワクチンである。中国の不活性ワクチンもアラブ首長国連邦の数字では、予防効果86%であるということだが、それよりかなり低いというデータもある。他のワクチンの予防効果はまだあまり定かではないようだが、mRNAワクチンほどには予防効果は高くなさそうだ。ちなみに、インフルエンザワクチンの予防効果は60%~70%くらいである。

もちろん、いいことばかりではなく接種のリスクもある。生死にかかわることで一番心配なのは接種後のアナフィラキシー(強度のアレルギー反応)であるが、ファイザーのワクチンは20万人に1人、モデルナは36万人に1人とインフルエンザワクチン(100万人に1人)よりは多いが、大したことはない。それよりも、アナフィラキシー以外の副反応が思いのほか酷い。

ファイザーのワクチンもモデルナのワクチンも数週間おいて、2度接種することになっているが、一般に1度目よりも2度目の方が副反応は酷い。例えば、ファイザーのワクチンでは、米CDC(アメリカ疾病予防センター)による100万件の解析で、接種部痛(1回目67.7%、2回目74.8%)、倦怠感(28.6%、50%)、頭痛(25.6%、41.9%)、筋肉痛(17.2%、41.6%)、寒気(7%、26.7%)、発熱(14%、33%)であった。日本では接種例が少ないので、同列には論じられないが、160例のデータでは、接種部痛(1回目80%、2回目79%)、倦怠感(40%、60%)、頭痛(33%、44%)、筋肉痛(14%、16%)、寒気(25%、46%)、発熱(14%、33%)であった。

日本では医療従事者の次に、高齢者に優先的に接種する方針らしいが、持病のある高齢者はしばらく様子を見てからの方がいいと思う。ノルウェーでは接種を受けた高齢者4万3740人のうち、1回目の接種後短期間で23人が死亡して、そのうち13人はワクチン接種との関連が疑われているという。死亡した人の多くは持病があったとのことで、持病がある人は本物のCOVID-19ばかりでなく、ワクチンを打っても死ぬ可能性があるということのようだ。

2009年に新型インフルエンザが流行したとき、2009年10月19日から12月21日までの間に1500万人にインフルエンザのワクチンが接種され、107人の死亡例が報告されているが、そのうち98例は65歳以上の高齢者で、ほとんどは接種後4日以内に死亡している。

インフルエンザワクチンに比べて、アナフィラキシーもそれ以外の副反応も遥かに強い新型コロナワクチンを、現在3500万人もいる高齢者の約3割の1000万人に接種すれば、1000人くらい死ぬかもしれないと私は懸念している。それでも、強いアレルギーを起こしたことがない人や、持病のない人はワクチンを接種した方がいいかもしれない。私見では、若い人から接種した方がいいと思う。

多くの人は、ワクチンは自分の身を守るために接種すると思っているだろうが、実はワクチン接種の最大の目的は、集団免疫を確立させて、社会生活や経済を正常に戻すことにある。そのためには、なるべく短期間になるべく大勢に接種して、抗体を持っている人の割合を増やし、実効再生産数(1人の感染者から何人に感染が拡がるかを示す値)を1より低く抑え続ける必要がある。実効再生産数が1よりどんどん小さくなっていけば、いずれパンデミックは終息する。

ただ、懸念材料がいくつかあって、一つは供給できるワクチンが不足していることだ。そうなると、集中的に多くの人に接種することができずに、五月雨式に接種することになる。天然痘のワクチンのように終生免疫ができれば、少人数ずつ接種しても、そのうち接種者全員に免疫が付くので問題はないのだが、免疫の有効期間が短いと、接種をした人も暫くすると、再び感染する可能性が出てくる。

今のところどのくらい免疫が持続するかは不明のようだが、最短で4か月くらい、長くても1年に満たないかもしれない。折角接種したのに、免疫が切れた人が感染し、その人からまた感染が拡がると、元の木阿弥になりかねない。もう一つの懸念材料は、変異型の新型コロナウイルスに対して、免疫の有効性が多少落ちることは免れないということだ。(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』より一部抜粋)

※この記事は、メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』2021年3月12日号より一部抜粋したものです。全文はメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』をご購読するとお読みいただけます。この機会にぜひご検討ください。

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