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なぜ日清食品は「残ったスープを固めるパウダー」を開発したのか

3月末、日清食品が自社のオンラインショップで対象商品を買った人に、「カップヌードル 残ったスープ固めるパウダー」をプレゼントするキャンペーンを実施。好評により1週間で予定数に達したことを受け、急きょ追加で実施するほど成功し話題となりました。今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では、発行人の理央周さんが、SNSをきっかけにオンラインショップ経由でパウダーを手に入れ、自身もSNSで情報を発信し得た反応などを紹介。小林製薬との共同開発の背景を解説し、今後の展開に要注目と伝えています。

なぜ、日清食品はスープを固めるパウダーを出したのか~その背景と仕掛け、今後の展開を予想

日清食品と小林製薬が共同で、「カップヌードル 残ったスープ固めるパウダー」を開発しました。とても便利なもので、カップヌードルを食べ終わった後の、残ったスープにこの固めるパウダーを入れて混ぜると、その残っているスープが固まり、容器と一緒にして、燃えるゴミに捨てることができる、というものです。

固めるテンプルなど、あまった油を固める物はありましたが、個々の食事を固める、というものは、今までにあるようで、なかったので、新鮮です。

私もオンラインショップで購入し、実際に、カップヌードルにこのパウダーを入れて、スプーンでくるくるとかき混ぜていると、10秒ほどで固まります。固まる、と言っても、がちがちな固形になるのではなく、薄い茶色で、見た目がシャーベットアイスのような、ざらざらな感じに固まります。

確かに、カップヌードルは、基本的にお湯さえあれば、どこででも食べることができる、ユーザーからすれば、場所を気にする必要がありません。一方で、自宅やオフィスなど、キッチンや流しが有るところであればまだしも、ちょっと公園で、とか、キャンプなどで食べると、食べ残したスープを最後まで飲み干さないと、捨てる場所などに困ります。

今回の、日清食品と小林製薬では、このように場所によっては、スープを捨てるところがなく、困る人たちが多い、という点に目をつけたのでしょう。固まったスープを捨てるときは、市町村の区分に従う必要があるそうですし、カップヌードルの商品ラインアップなどの、対応商品以外への使用は、原則的にNGとのことです。しかし、それを考えても便利なモノです。

日清食品グループ オンラインストアでは、対象商品1食購入ごとに、「カップヌードル 残ったスープ固めるパウダー」1包をプレゼントしていましたということです。数量は1万個の限定だそうで、予定数量に達した時点で終了するとのことでした。

私も購入したのですが、もともと、動画SNSサイトのティックトックで、アップされていたのをみつけたのがきっかけでした。これは、面白いと思い、その動画をTwitterで投稿したところ、フォロワーの方で、富山県で中華料理屋さんをやっている方が、さっそく反応されて、「町中華としては、スープまで完食なさるお客さんには、本当に感謝しています。しかし、ご本人の健康を考えると、どうしても塩糖脂の摂り過ぎが心配。健康と環境に優しい手段が生まれて、廃棄の方法が多様化するのは、とてもありがたいです」ということでした。

確かに、ラーメンってスープも美味しいですが、塩分や脂がきになるところなので、廃棄が簡単になることに加えて、健康面においても、良さそうな感覚がします。

先日もこのメルマガで取り上げた、コカコーラの100%リサイクルのペットボトルなどもそうですが、環境に配慮した製品の周辺のものが増えてきました。日本だけではなく、全世界でこの動きが増えてきているので、会社やブランドとして、環境に配慮している、というイメージがあると、「同じカップラーメンなら、やっぱり日清だね」となることも多くなります。

ブランドを差別化する際に、このように、市場環境の変化によって、消費者が受け取るイメージが好転することが、よくあります。このプロモーションは、そのイメージ好転に、寄与しています。今回のこのパウダーに関しては、数量限定での、どちらかといえば、販売促進のためのキャンペーンに見えますが、その意味でも、ユーザーの興味をひく、とても面白い仕掛けです。

実際にオンラインストアで買わなければもらえませんし、買う場合には会員登録も必要です。多くの人が買って、このパウダーをもらっているようで、「固めて可燃ゴミになるから、とてもありがたい」「このスープ、飲み干せないので困っていた」と、多くのツイートが見受けられます。その意味で、話題作りにも成功しているので、日清食品にしては、成功したキャンーペーンでもあります。

また、これだけ話題になると、小林製薬の方は業務用などでの生産も、考えにいれているでしょう。大量生産ができるようになると、安く販売できるようになって、広く市場に流通できようになります。

話題性もあり、消費者の隠れた悩みにも対応でき、さらに、環境にもいいESG経営もアピールできる、この固めるパウダー、今後の展開を注目していきたいところです。

image by:Wacharin Soponthumkun / Shutterstock.com

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