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京大教授が猛批判。緊急事態宣言の延長で「重症患者が逆に増える」不条理

菅首相は7日、当初は11日までを予定していた緊急事態宣言の期限を、5月末まで延長すると会見で発表しました。その効果については様々語られていますが、「害悪しかない最悪中の最悪の感染症対策」と酷評するのは、京都大学大学院教授の藤井聡さん。藤井さんは自身のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』で今回、そう判断せざるを得ない4つの理由を挙げるとともに、この程度の理屈が理解できない専門家の能力に疑問を呈しています。

(この記事はメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2021年5月8日配信分の一部抜粋です。続きはご購読の上、お楽しみください)

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「緊急事態宣言・延長」が如何に不条理なのかを、解説します

緊急事態宣言の延長が、正式に政治決定されました。

もうそうなるだろうとは予期していましたが、改めてその決定を耳にすると、心の底から残念な思いをしています。

今国民の多くは、「正にいま医療崩壊が進行しつつある。感染者も高止まり状況だ。緊急事態宣言は解除して貰いたいが、こうなれば延長は致し方無いだろう」と考えています(TV局でニュース解説等しておりますと、街頭インタビューで実に多くの人々がそう話しています)。

そんな中、当方は、実証的、論理的、合理的な根拠を示しながら「延長はすべきでない」というメッセージをネットやSNSで配信しているのですが、案の定「コロナを楽観するような藤井はダメな奴だ!」「藤井は他のテーマについては納得できるが、コロナについては滅茶苦茶だ!」と、道徳的にも知性的にも藤井はダメな奴だという、激しい批難が差し向けられていました。

これはもう、まさに、不条理なポリコレ、全体主義の暴走現象。連日のTVコロナ報道に翻弄された多くの国民が思考停止に陥り、常識でものを考える事をやめてしまったことで、コロナ対策についてまともな判断が出来なくなってしまったのです。

ついては改めて、本メルマガ読者に向けて、「今回の緊急事態宣言」が如何に不条理であるのかを、簡潔に解説して参りたいと思います。

1)東京の医療崩壊のリスクは小さく、緊急事態宣言は直ちに求められる状況でない

今回の緊急事態宣言の継続を求める人々が一番気にしているのが、「医療崩壊」の危機の回避です。実際、大阪では重症者が増え、病院で対応仕切れなくなっており、それがコロナ被害を拡大してしまっています。

しかし、東京は状況が全然異なります。重症者病棟の使用率は3割程度に留まっています。今後さらに増えていく見通しではありますが、今後、緊急事態宣言をしなければ10割を超えてしまうのだという説明は一切されていません。

実際、今、東京は既に新規感染者数の増加が止まり、減少しつつある可能性も指摘される状況になっており、医療崩壊が危惧されているわけではないのです。

今の東京で緊急事態を発出する意義そのものが明確には見当たらないのです。

そして、同様のことが、明確に医療崩壊のリスクを迎えている大阪以外の宣言対象地域において見られるのです。

つまり、大阪以外の多くの地域において、緊急事態宣言で自粛や時短、休業をどれだけやったとしても、別に医療崩壊リスクの回避という行為に繋がるわけではないのです。そもそもそんなリスクそのものが明確に存在しているわけではないのですから。

逆に緊急事態宣言を出すのなら、大阪のように、明確に医療崩壊のリスクが危惧される(あるいは実現している)エリアに限定すべきなのですが、そういう限定を図ろうとする動きは、我が国には存在していないのです。

これはまさに、「副作用の強い劇薬を、病気でない状況でも念の為に処方しておきましょうか」という恐ろしい処置がおこなわれているようなものです。実に恐るべきコロナ対策が今、まかり通っているわけです。

2)今更、緊急事態宣言を延長しても、大阪の医療崩壊リスクはさして減らない

じゃあ、大阪なら延長するのが合理的なのかといえば、一切そんな事は言えません。

そもそも「大阪は医療が崩壊しているのだから、緊急事態宣言の延長は仕方ない」というのが、松井・吉村氏らを始めとした、人々の認識ですが、緊急事態宣言を延長し、仮にそれによって感染者数を抑止できたとしても、それが重症者数の推移に影響を及ぼすのは、過去のデータを見ると5~6週間後の話し(なぜなら、陽性者数のピークの約3~4週間後に重症者数のピークが来ているからです。で、陽性発覚と感染の間に2週間のラグがありますから、約5~6週間のラグがあるのです!)。

じゃあ、その頃、医療崩壊が続いているかと言えば、その可能性を完全に否定することもできませんが、そうではない(医療崩壊はまだ続いていない)可能性も十二分に考えられる、というか、そちらの可能性の方が圧倒的に高いのです。

まず第一に、そもそも新規感染者ピークは、現時点において既に過ぎている可能性が高く、ピークは4月下旬~末日あたりであると考えられます。

ということは、重症者数ピークはその5~6週間後ですから、6月上旬くらいになります。で、今日の「延長」が影響を及ぼすのは、5月11日から約5~6週間後の中旬ということになりますから、重症者数のピークを迎えてからおおよそ10日前後後ということになります。

したがって、仮に延長が将来の重要者数を減らす効果を持っていたとしても(というか、実際そんな効果は無いということが別途示されているのですが、それをさておくとしても)、その効果が出てくるころには、重症者病床が満杯になっている状況から少し余裕が出てきた頃である可能性が考えられるわけです。

しかも、今、吉村氏は、必死になって対応病床を拡大しようとしています。それは大変に結構なことですが、そうすることで、「延長の効果が出始めた頃の、病床の余裕」はさらに拡大する事になります。

こうした事を全て勘案すると、大阪の医療崩壊を回避するために(仮に大阪の緊急事態宣言に、重症者を減らす効果があったとしても)、大阪での宣言延長は必ずしも必要がない、と予期されることになるわけです。

3)「今の緊急事態宣言」をどれだけ延長しても重症者はさして減らず、むしろ増える

感染者の多くは今、非高齢者です。にも関わらず、重症者・死者の大半が高齢者です。

最近、変異種は若年層の重症率は上がったなどとも言われますが、こうした傾向にほとんど影響はありません。相変わらず、重症と死者の大半が高齢者なのです。

で、今問題となっている「医療崩壊」を防ぐには、非高齢者の感染者をどれだけ減らしても、高齢者の感染者を減らさなければほとんど何の意味がないのです。

したがって、医療崩壊を防ぎたいのなら、

  1. 高齢者の(高感染リスク)行動の自粛
  2. 非高齢者の、高齢者に移す(リスクの高い)行動の自粛

の二つを徹底すればいいのです!

にも関わらず、今の緊急事態宣言では、1.2.は全く触れられておらず、兎に角、自粛だ時短だ禁酒だとやっているわけです。

その結果、今、「高齢者施設の感染症対策」がおろそかになっており、三密空間やマスクのない会食や飛沫を飛ばし会う会話などが横行しているのです! その結果、高齢者施設のクラスターが頻発し、それが医療崩壊を導いているのです!!

何と言う愚かな政府なのでしょう…。

自粛だ時短だとやって経済を崩壊に導き、高齢者対策を怠って医療を崩壊に導いているのです。

アホという他ありません。

だからやるべき高齢者クラスター対策をやらずして、無駄な自粛や時短のみを要請する緊急事態宣言など、単に経済を痛めつけるだけの帰結しかもたらしていないわけですから、とっとと止めてしまえばいいわけです。

4)しかも、緊急事態宣言で人の動きを止めたからといって、収束するわけじゃない

それでもまぁ、もしも緊急事態宣言をやって、それによって医療崩壊リスクは減りも何もしないとしても、一応は、感染者数や重症者数、死者数が減るのなら、それはそれでいいじゃないか…とも思えますが、実に残念なことに、そういう効果は特に見られてはいないのです。

この問題は当方は、この1年間様々な学術研究を蓄積してきており、一貫して「少なくとも日本では、感染収束に自粛は寄与しない」という実証知見を得続けているのですが、ここでは、この「第4波」に絞って、如何に自粛が感染収束に関係無いのかについて解説してみたいと思います。

例えば、コチラのグラフは、この第4波の東京における「自粛率」と「感染増加率」(感染日ベース)のグラフ。

ちなみに、西浦氏達の感染症モデルに基づけば(というか、感染症学の常識に基づけば)自粛率が高まれば、感染増加率が下落する筈なのです。

※ というか、自粛率は、感染者数の下落に直接貢献するのではなく「感染増加率の下落」に貢献するのです。自粛率が感染者数の下落に及ぼす影響は、感染増加率の下落を介した「間接的影響」なのです……というと難しいかもしれませんが、学術的に言うならばそう言う他有りません。この点については、下記動画でゆっくり話ししていますので、ご関心の方は是非、ご覧下さい。

【緊急配信】緊急事態宣言は不要だった?現役京大教授が教える超簡単シミュレーション法

…という話しはさておき、上記グラフよりおわかり頂けますように、両者の連動性はやはり存在していないのです。

具体的に言うなら、(3/28の週にかけて)緩和しつつあった自粛が強化し始めた頃(3/28の週~4/4の週)に、もしも「自粛すれば感染者数の増加率が下がる」のなら、増加率は「下落」する筈なのに、「拡大」しているのです。これは、「自粛すれば感染者数の増加率が下がる」という、皆が当然の様に考えている現象とは「逆」の減少です。

さらには、一方、4/4の週から4/11の週にかけて、自粛率がほぼ変わってないにも関わらず、増加率は激しく下落しているのです。これもまた、「自粛すれば感染者数の増加率が下がる」という考え方が正しくない事を実証的に示しているのです。

つまり、「自粛しても感染拡大は止まらないし、自粛しなくても感染拡大が止まる」という現象が見られているのです。

これと同じ事が大阪でも起きています。というか、大阪の方が、より明確に「自粛なんて、感染収束に寄与しない」ことを示しています。

こちらのグラフをご覧下さい。

2月末の緊急事態宣言解除以降、大阪の自粛率は「低下」し続けており、人々の動きは一貫して3月下旬まで活発化してきたのですが…それにも関わらず、3月中旬に感染者数の増加率はピークアウトしたのです。

つまり感染増加率ピークアウトには「自粛」なんて必要なかったのです。

で、こうして増加率がピークアウトしていけばその内、拡大率は1を下回り、感染者数それ自身が自ずと減っていくことになるのです。

で、実際、4月下旬頃には、感染者数そのものも減少に向かっていったという次第です。

以上いかがでしょうか?少々ややこしい話しもありましたので、なかなか一般の方にはご理解頂きづらいことなのですが、本メルマガの読者ならなんとかお読み頂けるのではないかと思い、少々詳しく解説さし上げた次第です。

いずれにしても、西浦・尾身等、専門家達はこの程度の事分からない筈がないのです。というか彼等は朝から晩まで、こんな話しを何十年もやってきたのですから、この程度の事が分からなければ完全なるバカとしか言いようがありませんから、一応どっかの大学でてるんだから、この程度のことは分かって当然なのです。

で、以上を纏めると、こうなります。

1.緊急事態の延長は、医療崩壊を回避するっていうのが最大の目的の筈だが、東京はじめとした、病床に余裕がある地域ではそもそも医療崩壊リスクがないから必要ないのに、やっちゃった。

2.大阪を中心とした医療崩壊がヤバイ地域でも、そろそろピークアウトして、そのうち重症病床も空きが出てくる見通しが明らかになりつつあるので、今更、緊急事態を延長したところで、間に合わない。だって、今延長しても、それが重症者数に関係してくるのは5-6週間後で、その間に、病床に余裕がでてくることがほぼ明らかになりつつあるから。だから、今更、「延長宣言だ~」なんていったって、医療崩壊を緩和刷ることに何の貢献もしない。医療崩壊回避にとって、単なる無駄な宣言延長なわけです。

3.っていうか、今の緊急事態宣言をいくらやっても、高齢者のクラスター対策はほとんど何もやってないから、重症者はほとんど減らない。タダ単に、若者の行動が抑制され、飲食店が倒産し、失業が増えて、挙げ句に自殺が増えるだけ。単なる政治的パフォーマンス以上の何ものでもない、単なる無駄な宣言延長だって言わざるをえません。

4.っていうかさらに言うと、今の緊急事態宣言やったって、重症者が減らないどころか、若年層の感染者数だってさして減ってない。無駄中の無駄な対策が、今の政府の緊急事態宣言だ、ってことが明白になってるわけです。

…ということで、あらゆる角度から考えて、今の政府の緊急事態宣言の延長なんて、な~~~~~んの意味も無いどころか、害悪しかない最悪中の最悪の感染症対策なのです。

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京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員,東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論.文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。著書「プライマリーバランス亡国論」「国土学」「凡庸という悪魔」「大衆社会の処方箋」等多数。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。MXテレビ「東京ホンマもん教室」、朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、KBS京都「藤井聡のあるがままラジオ」等のレギュラー解説者。2018年より表現者クライテリオン編集長。

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【著者】 藤井聡 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 土曜日

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