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カギは「同じ敷地内」。ニトリがコロナ禍に外食産業へ打って出た目論見

インテリア業界最大手のニトリホールディングスが仕掛ける新業態「みんなのグリル」が話題を呼んでいます。コロナ禍で飲食業界の苦戦が伝えられる中、なぜニトリは外食産業へ進出するのでしょうか。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』では著者でMBAホルダーの理央 周さんが、同社の狙いを詳細に分析。そこから浮かび上がってきたのは、昨今の厳しい不況を乗り切ることを可能にする「売り伸ばしのヒント」でした。

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なぜ、ニトリはこの時期に外食産業に進出したのか? ~その勝算と目論みは?

今号の特集は、「なぜ、ニトリはこの時期に外食産業に進出したのか?~その勝算と目論みは?」です。

緊急事態宣言も延長になったこの時期に、なぜ?と思っている方も多いようです。その辺りを踏まえて、外食事業に参入した理由を、マーケティングの視点で考えていきます。

家具販売と外食という、一見全く関係のなさそうな業界に、ニトリはなぜ進出したのか?この外食店舗を起点にどう売り伸ばすのか?また、長い目で見た時の勝算は?について、ニトリの事例から学んでいきましょう。

ニトリダイニングのメニューは?

ニトリの外食店舗の名称は、「ニトリダイニング みんなのグリル」です。まずは、東京都の足立区と、神奈川県の相模原市に1店舗ずつを出店しました。いずれも、ニトリの家具・雑貨店に併設する形での、出店です。

メニューは、「お、ねだん以上」というキャッチコピーの通り、美味しそうな上に、お値打ちな価格設定になっています。

ホームページをみると、まず出てくるのは、美味しそうな「チキンステーキ」です。“グリル”というだけあって、あつあつの鉄板にチキンステーキがのっている画像です。「皮はぱりっ、肉汁がジュワッ」と書いてあって、ますます美味しそうに感じます。それが240グラムで500円、ワンコイン、というお値段です。ニトリが、このメニューを“いち押し”にしたい、という意図が、ここに見て取れます。

外食店舗では、多くのメニューがあったとしても、それらを並列に、同じ大きさで書いてあったりします。そう書かれていると、見る側のお客様に、インパクトを与えることができません。しかし、このニトリダイニングのように、イチオシのチキングリルが大きく載っていると、これが看板メニューだと分かるし、もし、今日これを食べなくても、記憶に残れば、また次回食べよう、となって、再来店につながる可能性も出てきます。

他にもチキングラタンも500円、パイ生地にアイスクリームと「ラズベリーソース」がかかっている、ダッチベイビーという食後のスイーツも200円と、いう低価格に設定しています。

メニューの大半は、鉄板に乗って出てくるグリルもので、一番高いリブステーキ&チキンステーキが1,200円なので、通常のファミリーレストランよりも、お値打ち感のある価格設定になっています。「ご家族でも、おひとり様でも、気軽に楽しめる美味しさを」ということで、ファミリーレストランに近いコンセプトのお店です。

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なぜ今この時期に、ニトリが外食産業に進出するのか?

このコロナ禍の時期に、飲食店さんの多くは苦戦をしていますが、なぜ、ニトリは飲食事業に進出したのでしょうか?2店舗とも、ニトリの家具・雑貨店舗と同じ敷地内に出店しているところに、カギがあります。

家具・雑貨店舗に来たお客様が、どうせなら食事もしていこう、という相乗効果が期待できます。家族で来る、となると「新しいテーブルを買いに行こう」となり、「どこで買おうか」と考える時、「ニトリダイニングでランチを食べた後に寄れるから、ニトリにしようか」といった具合に選ばれる可能性が高まります。

また、ニトリは、これまで家具の企画から、生産、そして販売までを、自社で行ってきました。これは、アパレルのユニクロと同じように、製造小売業、SPAという仕組みです。バリューチェーンの間に、問屋などの中間流通が入らないので、コストと手間が省けることで、仕入れて販売する小売業よりも、低価格を実現してきました。今回の外食事業においても、食品メーカーから直接仕入れる、と報道されています。なので、家具で培ったこの製造小売業のノウハウを生かして、低価格で美味しいメニューを実現したい、と考えているのでしょう。

また、一般に小売業では、お客様の滞在時間が長ければ長いほど、お客様の購入額があがります。家具や雑貨を買いに来るお客様は、購入するとすぐに帰ってしまいますので、このように、飲食店にいてその後で買い物、ということになれば、ニトリ全体に滞在する時間も長くなり、売り伸ばしが期待できます。

また、小売業では、お客様が来店する回数(=頻度)が多ければ多いほど、売り上げが上がります。家具や雑貨を買う頻度は、それほど多くはありません。実際に、私も多くても年に数回行くか行かないかくらいです。なので、飲食店も併設していれば、ランチのついでに寄ってみる、という具合で、来店する回数も増えることを狙っているのでしょう。

考えてみれば、IKEAの店舗には、レジで支払いを終わって出たところに、飲食店舗と食材売り場があり、そこで休憩したり食材を購入したりできます。また、銀座にある無印良品は、1階に生鮮食品売り場があり、地下にはカフェがありますし、名鉄百貨店にもMUJI Cafeがあります。IKEAも無印良品も、同じように来店する回数を多くしたいため、このようなことを展開しているのです。

ニトリは当然、長い目で飲食事業を考えているでしょうから、今回の路面店だけではなく、無印良品のように、イオンモールなどにもいくつか店舗を出店している、「ニトリ デコホーム」という雑貨販売店にもニトリダイニングを併設してくるでしょう。また、東京の新宿南口にある5階だての店舗の一部にも、ダイニングを入れてくることを想定しているはずです。

お客様の来店頻度を上げたり、滞在時間を伸ばしたりする工夫は、厳しい今の情勢の中でも、売り伸ばしをしていく良いヒントになります。その意味でも、このニトリの取り組み、今後に注目をしたいと思います。

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image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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ビジネス・仕事に大事なのは、情報のキモに「気づき」どう仕事に「活かす」かです。トレンドやヒット商品には共通する「仕掛け」と「思考の枠組み」があります。このメルマガでは、AI、5G、シェアリングなどのニュースや事例をもとに、私の経験とMBAのフレームワークを使い「情報の何に気づくべきか?」という勘どころを解説していきます。現状を打破したい企画マン・営業マン、経営者の方が、カタくなっている頭をほぐし情報を気づきに変えるトレーニングに使える内容です。

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