MAG2 NEWS MENU

名門とシャープが手を組んだ。ライカ初「スマホ進出」の紆余曲折

ドイツの名門カメラメーカー・ライカがお披露目した初のスマートフォンが、世界的人気を呼びそうです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、シャープの「AQUOS R6」がベースモデルとなったライカ「Leitz Phone 1」を紹介するとともに、今のところ日本国内のみの販売であるにもかかわらず、各国から製品紹介動画にアクセスが殺到していることから、海外でも売上が期待できるのではと分析。さらにライカとシャープが、「Leitz Phone 1」の製品化にGoサインを出せた裏側についても明らかにしています。

スマホ最新情報から裏事情まで、石川温さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

ライカが初のスマートフォン「Leitz Phone 1」を発表――当面は日本でソフトバンク独占販売。海外展開はあり得るのか

ライカは初のスマートフォン「Leitz Phone 1」を発表した。国内でソフトバンクが独占的に扱う。ベースモデルはシャープ「AQUOS R6」となっている。

AQUOS R6はレンズやカメラの画質においてライカの技術協力を得ている。Leitz Phone 1はカメラのみならず、ユーザーインターフェースにおいてもライカが監修しているとされている。

価格は18万円と高価であるが、タッチアンドトライで実際に製品を触ったメディア関係者からは納得の声が聞かれた。AQUOS R6とは違った雰囲気に仕上がっており、ライカのこだわりも随所に見られるなど、「ライカのデジカメ」と思えば、18万円は妥当な価格設定というわけだ。

外観の質感や仕上がり、カメラ画質において、シャープの開発者は相当、手を焼いている模様だ。メディアに向けた新製品発表に関しても、ライカという企業名は一切、明かされず、ソフトバンクから「スマートフォンの新製品が発表される」ということしか知らされなかった。カメラ関係のメディアには「ライカが何か出すらしい」という案内のみであり、相当、ドイツから箝口令が敷かれた状態で発表にこぎ着けた感じであった。

ただ、その甲斐あってか、事前には一切、世間には情報が流れなかったのは大したものだろう。

ライカにとってみれば、もともとはファーウェイがパートナーであったが、トランプ政権による禁輸措置で、シェアが下落。サムスン電子やソニーと組むのは難しいし、LGエレクトロニクスは撤退してしまった。残るはOPPOやXiaomiだが、ファーウェイからすぐに乗り換えるのも許されそうにない。そんななか現れたソフトバンクとシャープはまさにライカにとって渡りに船であったろう。

シャープとしても、カメラでの差別化に悩む中、ライカというパートナーはベストな相手だったのではないか。

いまのところは、日本国内のみの販売のようだが、発表されて以降、やはりYouTubeの動画には海外からのアクセス(インド、タイ、台湾、マレーシア、フィリピン、ベトナムなど50カ国以上)が殺到している。ライカは日本のみならず、ドイツ、アメリカで人気とのことなので、このあたりの国で売ればそれなりに売れるのではないか。

総務省の意向もあって、Leitz Phone 1はSIMフリーで販売される。もちろん、ソフトバンク回線を契約してない人でも購入が可能だ。ひょっとすると、海外への転売目的で購入する人が続出するのではないか。

そうした転売を防止するという意味でも、ライカとシャープは積極的に海外展開すべきだし、そこに関しては、ソフトバンクも後押しをして欲しいところだ。

スマホ最新情報から裏事情まで、石川温さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

キャリアがいるからこそ、個性的で革新的なデバイスが生まれるのではないか――端末と通信の完全分離は時代錯誤の政策でしかない

Leitz Phone 1の発表で意外というか驚きだったのが、ソフトバンクが企画の発端だったという点だ。2019年7月にソフトバンクがライカカメラ社主のアンドレアス・カウフマン氏と直接面会しプロジェクトがスタート。すぐに開発パートナーとしてシャープが参加して、製品化にこぎ着けたという。

ソフトバンクというキャリアがいたからこそ、ライカならびにシャープとしては製品化にGoサインを出せたのではないか。さすがに、キャリアが採用する前提がないことには、シャープとしてもライカモデルを作ることはなかっただろう。

こうした個性的なスマートフォンが登場するという土壌は日本ならではだ。やはり、キャリア主導の市場だからこそ、製造を担当するメーカーも攻めた製品を作ることが可能になる。

キャリアとしてもiPhone、XperiaやAQUOSなど、3キャリアで同じラインナップが揃うとなると、他社と同一化してしまう。製品ラインナップも、キャリアの競争軸であるわけで、ここで個性的なスマートフォンをそろえるかが、結果としてキャリアの魅力につながるはずだ。

にもかかわらず、総務省はなぜラインナップ競争を否定するような政策ばかりを展開するのか。

キャリアにSIMフリー前提で売らせ、回線契約をしていないユーザーにまで販売を強要する必要は必ずしもないのではないか。

iPhoneやXperia、AQUOSなどマルチキャリア展開しているスマホであれば、SIMフリーで売らせ、回線契約をしていないユーザーに売らせてもいいだろう。

一方で、Leitz Phone 1やauのTORQUE、NTTドコモ・Galaxy S21 5G Olympic Games Editionなどは、キャリアが企画をしたり、独占的に扱っている端末なのだから、SIMロックをかけまくり、非回線契約者に売る必要はないのではないか。

「このスマホを使いたい」と思うユーザーが、そのキャリアにわざわざ乗り換えるというのがあってもいいし、これこそが真の競争ではないか。

総務省はキャリアに対して、単にユーザーに通信回線を提供すればいいと思っているのか。その発想こそが、4キャリアの画一化を産み、結果、横並びにつながるのだ。

端末と通信契約の完全分離からはイノベーションは起きない。キャリアがリスクをとって、端末の開発や企画を行い、メーカーに製造してもらい、ユーザーに販売するという構図があるからこそ、技術的に攻めることができたり、これまでの常識にとらわれない革新的なデバイスが出てくるのではないか。

端末と通信契約を完全分離すれば、当たり障りのない、つまらないスマホが一列に並ぶだけにしかならない。

Beyond5G、さらに6Gに向けては、ネットワークと端末の役割分担が重要になってくる。ネットワークはすべての端末を受け入れるというよりも、端末とネットワークが、それぞれ状況に応じて処理が変えてくるのが当たり前になるはずだ。

アップルは5G対応のiPhone 12をつくるにあたり、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクとネットワーク関連で共同開発したという。もはや、端末と通信は切っては切れないものになっているのだ。

なぜ、総務省は端末と通信の完全分離にこだわるのか。5Gにおいて完全分離は時代錯誤であることに早く気がついてもらいたいものだ。

スマホ最新情報から裏事情まで、石川温さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

image by: Bjoern Wylezich / Shutterstock.com

石川 温この著者の記事一覧

日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 石川温の「スマホ業界新聞」 』

【著者】 石川 温 【月額】 初月無料!月額550円(税込) 【発行周期】 毎月 第1土曜日・第2土曜日・第3土曜日・第4土曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け