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変わらない日本の政治と政治家に“ファッションの力”が効くワケ

今秋には必ずやってくる衆議院議員総選挙。コロナ対応での菅政権のドタバタを見ていても、野党に政権を任せようというムードにはならず、政治そのものの手詰まり感だけが漂ってはいないでしょうか。本来、政治はもっと面白くカッコイイものであるはずと、ファッションやデザインの手法でアプローチすることを提案するのは、メルマガ『j-fashion journal』著者で、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さん。ユニフォームやシンボルマークを採用するなど、政党や政治家がコンセプトを「見える化」するだけでも政治への関心度が格段に上がると、持論を展開しています。

ファッションで政治は変わるか?

1.政治理念の見える化

最も変わらないものこそ、ファッションの力で変革しよう。たとえば、日本の政治は変わらない。野党が与党になっても、与党の役割を演じるだけだ。野党は、次々と新党を結成し、分裂したり、統合したり。本当に何をやっているのか分からないし、そもそも彼らのビジョンやコンセプトを感じることができない。最早、国民は明確な政策を既存政党に期待しなくなっている。

もし、政党がその政策を服装に反映してくれれば、より分かりやすくなるだろう。例えば、大企業を背景にしているのであれば、上質なスーツを着用する。労働者を背景にする政党は、必ずデニムを着用する。ITなど先端的な企業を背景にする政党は、クリエイティブなデザイナーズブランドでキメる。服装と政党のイメージが一致すれば、国会中継も分かりやすくなる。

あるいは、各政党にユニフォーム着用を義務付けるのはどうだろう。各政党が、政党と契約するデザイナーを毎年選ぶイベントがあれば、政治とファッションの距離は縮まる。政党のマニフェストとブランドコンセプトは似ている。それをビジュアルに表現するかしないかの違いだけだ。

現在のマニフェストの問題点は、読まないと何も分からないということだ。読まなくても、その政策のイメージが伝わるようにして欲しい。政見放送ではなく、各政党が短い番組を作るように義務づけるのはどうだろうか。例えば、各政党は10分の番組を作り、それを政見放送と共に流す。あるいは、YouTubeに番組をアップしてもいい。それだけで、政治への関心が高まるはずである。

2.服装の統一とガバナンス

人間は、自由を求める欲求と、集団に所属したいという欲求を併せ持っている。集団への所属欲求の満足には、ユニフォームが有効だ。集団が同じ格好をすることで、視覚的に一体感を感じることができるし、集団の中に自分が溶け込んでいるようなイメージを持てる。あまりに画一的なユニフォームは全体主義の印象を与えるが、政党毎に服装コードを決めて、緩やかな連帯を主張するのは悪くないだろう。

1983年、ドイツの「緑の党」議員、28名は背広を着用せず、カジュアルな服装のまま、手には花束や枯れ木を持ってドイツ議会に登院した。枯れ木は「酸性雨問題」を、花束は「環境=緑」を象徴していた。この事例は、国民にとって非常に分かりやすい主張だと思う。ある意味で、政策が「見える化」している。

日本では、大多数の国会議員はスーツを着用している。与党も野党も何の区別もない。議員本人は品位ある無難な格好をしているつもりだろうが、一部の国民からは特権階級の象徴と思われているかもしれない。スーツを着用するにしても、政策を象徴するようなカラーを決めて、服装の一部にそのカラーを入れることを奨励するのはどうだろうか。

海外では選挙キャンペーンでカラーを活用することが多い。カラーを決めれば、支援者はその色のTシャツを着用することで、一体感とパワーを感じることができる。こうしたことで、議員と党員の一体感を演出することが、政党全体のガバナンスにつながるのではないだろうか。

3.政治家のアイデンティティ

政党のアンデンティティをカラーで訴求するとすれば、政治家のアイデンティティを視覚的に訴求するにはどうすればいいのだろう。政治家は個人なので、何らかのシンボルやキャラクターを設定するのはどうだろうか。これは、個人ブランドのロゴであり、キャラクターになる。そのデザインで政治家個人のイメージが決定するのだから、十分な投資を行うべきだし、意匠登録も行うべきだと思う。

政治家がイメージやデザインに無関心なのは、世襲議員が多く、直接有権者に働きかける必要がないからでないか。その証拠が、国会議事堂で販売している総理大臣グッズだ。本当にひどいデザインばかりで、田舎の旅館ならいざ知らず、国会議事堂で販売して良いレベルではない。昔なら、地方から陳情に上京した人がお土産に買ったのだろうが、現代もそれでいいのか。議員個人のイメージ訴求という視点を持って欲しいものだ。

そう考えると、選挙のポスターもひどいデザインばかりだ。選挙におけるポスターは非常に重要であり、ブランドロゴ、旗艦店のデザインに等しい。当然、一流のデザイナーを起用すべきと考える。選挙のポスターは街の景観の一部となる。街を美しくするために、ポスターのデザインも美しくデザインしました、という候補者がいれば、少なくとも私は投票する。

4.政策の大分類、中分類、小分類

政治で最も重要なのは、政策立案であり、立法である。しかし、一つ一つの政策を短い言葉で説明するのは難しい。様々な立場があり、様々な反論があるに違いないのだ。各政党のマニュフェストも似たような内容が多く、単純なスローガンが並ぶだけで、現実性が感じられない。

マニュフェストについて語られるのは選挙期間中だけであり、国会が始まれば、週刊誌の後追いスキャンダルなど、瑣末な問題ばかりに集中し、最も重要な法案は何の議論もないままに通過してしまう。

マニュフェストで差別化できないのだから、イメージで差別化するべきではないか。但し、各政党が大手広告代理店に丸投げしてしまえば、イメージまで同質化してしまうだろう。そこにファッションの手法が役に立つのではないか。

例えば、政党をブランドと考える。ファッションはシーズンテーマを設定し、テーマに基づいて個々の作品をデザインする。政治の場合は、シーズンテーマが政策テーマとなり、その中に個々の政策が提唱される。

政策が大分類、中分類、小分類のように整理されれば、世界観をイメージすることができる。大きな構造を明らかにせず、目先の人気取り政策ばかりを出しているのは、売れ筋後追い型のアパレルに似ている。それでは、ブランド価値は高まらない。政策のストーリーが構築できれば、イメージ訴求の動画を制作することもできるだろう。各政党がその世界観を軸に競い合うようになれば、政治への関心も高まるはずである。

編集後記「締めの都々逸」

「詰まらぬものと 卑下して隠し 身内で利権 回してる」

現在の政治家は恣意的に政治をつまらないものにしているのではないでしょうか。国民が関心を持てば、意見も出てくるし、その調整が面倒になる。国民にはスキャンダルに関心を集め、議員にはどうでもいいようなことを議論させ、重要なことは官僚が決めていく。この体制を維持するには、政治が面白くてはいけないのです。

でもね、本当は政治ほど面白いものはないと思います。我々の生活に直結しているし、経済にも直結している。我々の未来にも直結しています。

ぼくは、政治を面白くしてほしいし、もっと政治に参画できるような仕組みをつくってほしい。そして、日本の政治をカッコ良くしたいんですよね。カッコイイ政治でカッコイイ国を作る。そうすれば、世界のカッコイイ奴が集まってくるし、そこに投資が集まると思うんですよ。(坂口昌章)

image by: Shutterstock.com

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