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日米軍事一体化の布石か?活発化する護衛艦いずも「空母化」の動き

日本が導入を決定している最新鋭ステルス戦闘機「F35B」の発着を可能とし、その訓練実施の検討に入った護衛艦「いずも」。憲法上、「攻撃型空母」の保有が許されないとされている我が国にあって実質的な空母化が進む「いずも」を、これまで新聞はどのように伝えてきたのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、1年以内に読売新聞が同艦を取り上げた記事をピックアップし分析。そこから見えてきたのは、「日米軍事一体化が進んでいる証左」でした。

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F35Bによる発着訓練を行おうとしている海上自衛隊の護衛艦「いずも」を新聞はどう報じたか?

きょうは《読売》から。

海上自衛隊の護衛艦「いずも」(事実上の「空母」)にF35Bによる発着訓練を行おうとしているとの記事。「いずも」で《読売》のデータベースを検索すると、サイト内には見つかりませんでしたが、1年以内の紙面掲載記事で14件ヒットしました。しかし、自衛艦の「いずも」とは無関係のものや自衛隊内の人事の記事を除くと4件のみ。

【フォーカス・イン】

まずは今朝の《読売》4面記事の見出しから。

米F35B いずも発着訓練
対中念頭 日米 作戦能力向上
年内にも

以下、記事の概要。政府は、事実上の「空母化」に向けて改修してきた海上自衛隊の護衛艦「いずも」で、米軍のF35B戦闘機の発着訓練を年内にも実施する検討に入った。対中国を念頭に、「日米が戦闘機の燃料補給で協力を進め、航空作戦能力を高める狙いがある」という。

政府はF35Bを導入し24年度から運用開始する方針だが、現在はまだ保有していないため、米軍岩国基地に配備されている米海兵隊保有の機体を使用して訓練を行う。

「いずも」は海自最大級の護衛艦で、短距離離陸と垂直着陸ができるF35Bが使えるよう、甲板の耐熱塗装などの改修をほぼ完了したため、改修状況のテストを行う。

「政府は中国を念頭に、F35Bを活用した米軍との共同作戦も展開したい考えで、自衛隊のF35Bが米艦船で発着することも視野に入れる」という。併せて、「いずも型」の「かが」も同様の改修に入る。

●uttiiの眼

「いずも」を筆頭に、海自の護衛艦は南シナ海での日米共同訓練や他海域での米軍に対する「武器防護」活動を行っていて、いわば「日米軍事一体化」の最先端に位置する船。記事が描いているのは、米軍の空母と自衛隊の空母「いずも」と「かが」が協調して行動し、どちらの空母も日米双方のF35Bの発着艦として機能しつつ、対中の軍事活動を行っている図。

偶発的であろうとなかろうと、米軍が行う軍事行動に、自衛隊が自動的に参加していく体制が、装備面を含め、完成しつつある。

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【サーチ&リサーチ】

* 《読売》の昨年10月4日付社説では、「防衛費概算要求 新たな領域の能力向上を図れ」として、「宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域」に対処すべく、「着実に防衛力を整備すること」を求めている。他方、高額な最新鋭戦闘機F35Bの購入費666億円や、「いずも」の改修費なども計上されたことについては、「日本周辺の安全保障環境は厳しさを増している。だが、財政事情が悪化する中、高額な装備を際限なく揃えるのは無理だ。政府は優先順位を定め、計画的に導入を進める必要がある。装備を見直し、効率化を図ることが不可欠だ」と言っていて、あまり乗り気ではないようだ。

* 同じく、10月9日付では、例年秋に行われている自衛隊の観閲式や観艦式が、新型コロナウイルスの影響で「無観客」(今年度と来年度)となるという。2015年の観艦式では隊員約8,000人と「いずも」など艦艇約40隻が集められたが、「現場の部隊の運用にしわ寄せが出ていた」といい、「3自衛隊の幹部からは「首相の観閲を受けるだけであれば、一般客を呼ぶ必要はなく、省内で簡略化してできる。コロナの収束も見通せず、廃止を検討する時期ではないか」との声が強まっている」と。

* 今年2月4日付の記事は、安全保障の日英連携に関する内容。当時のメイ首相が来日した2017年8月、メイ首相は護衛艦「いずも」に乗艦。「安全保障共同宣言」を行った。

●uttiiの眼

観艦式は廃止した方がいいのではないかとの話。確かに、儀礼的、恒例行事的なことは必要ではないのかもしれない。しかし、自衛隊ならではの活動がどんどん縮小され、日米共同の軍事行動に全隊がのめり込んでいく有り様が目に浮かんでくるようだ。中でも「いずも」は、観艦式などで遊んでいる暇はない、ということなのかもしれない。そこまで、日米軍事一体化が進んでいる証左でもあろう。

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image by: viper-zero / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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