MAG2 NEWS MENU

失敗や怒られるのが怖い人へ。公認心理師が勧める「無理への挑戦」とは

誰もが失敗は怖いもの。ただ、さまざまな失敗をすることで対処法やリカバーする方法を習得し成長していくものです。それが、絶対に失敗しない道ばかりを選んで生きてきたとしたら、新たな環境に身を置いたときに「失敗が怖くて辛すぎる」という悩みが生じるようです。そんな読者の相談に答えるのは、メルマガ『公認心理師永藤かおるの「勇気の処方箋」―それってアドラー的にどうなのよ―』著者で公認心理師の永藤かおるさん。永藤さん自身が失敗を忌避していた時期があり、そんな考え方を「衝撃的に変えられた」体験を伝え、大人になったからこそできる「挑戦」をお勧めしています。

ちょっと御相談がありまして:「失敗が怖すぎてつらい」

皆様からお寄せいただいたご相談や質問にお答えしたり、一緒に考えたりしていきます。

Question

子どもの頃から、ネガティブ思考ばかりしてしまいます。常に「失敗したらどうしよう」「間違えたらどうしよう」「怒られるんじゃないか」「嫌われるんじゃないか」ばかり考えてしまい、とても疲れます。

両親ともにとても慎重な性格で、自分はひとりっ子ということもあり、とても大切に育ててもらったと思います。転びそうなときや勉強についていけなくなりそうなとき、いつも助けてもらった記憶があります。

多分、私は大きな失敗や挫折をしたことがないんだと思います。高校受験も合格圏内の私大の付属校を選んだし、大学は内部試験で入学しました。就職でもさほど苦労もせず、伯父が役員をしている会社に入りました。

今考えれば、本当は行ってみたい高校や大学もあったのに、身の丈に合わない挑戦をして失敗するのが恐怖だったからだと思います。部活も、本当はマンガを読んで憧れたバスケ部に入りたかったのですが、下手だと言われたり、コーチや先輩に怒られたりするのが怖くて、体験入部すらしませんでした。

今いる会社で、役員だった伯父は退職し、特に後ろ盾はありません。そして、人事異動で、ちょっと怖い上司の下につくことになりました。ほかの人はその上司のことはそんなに嫌がっていなさそうですが、私は怖いのです。このままの気持ちでいることがとてもつらいです。

【永藤より愛をこめて】

そうですかそうですか。おつらいですね。とても客観的にご自身を捉えた、冷静な文章をお書きになる方だとお見受けしました。「多分、私は大きな失敗や挫折をしたことがないんだと思います」というのが、一番端的にご本人のことを表していらっしゃる、そしてその経験がないまま大人になり、そして今、それが恐怖の対象になってしまっているのでしょう。

普通、なにかのトレーニングや練習や修行であれば、「スモールステップから始めましょう」ということで、そのチャレンジの第一歩を踏み出すのですが、あなたの場合、その上司に「ちょっと嫌われてみる」とか、「ちょっと怒られてみる」とか、「ちょっと仕事を間違えてみる」とかって、まったく意味がないことだと思うのです。それにそんなことわざわざしたくないですよね。

じゃあどうしたらいいか。ひとつの、個人的な経験からのお答えで恐縮なのですが、「確かにこれは考え方を衝撃的に変えることができた」ことをお伝えします。それは、「1回でいいから、“とてもじゃないけど太刀打ちできない”ことをやってみる」ということ。

私自身、ある程度の年齢まで、失敗を全力で避けようとしていましたし、完璧主義者的、カッコつけ女でもあったと思います。失敗を失敗と認めない頑固さもあったし、なによりもみっともない姿をさらしたくない人間でした。

そんな私ですが、30代半ばに、サーフィンに挑戦したことがあります。海も好きだし、泳げるし、サーフィンできたら楽しいだろうな、程度の気持ちでやってみたのですが、まああああ、できない。笑っちゃうほどできない。波に乗るどころか、もみくちゃにされ、洗濯機の洗濯物かってほどにぐるんぐるん回され、サーフボードも身体や顔にゴンゴン当たり、全身あざだらけ砂まみれでボロボロぐちゃぐちゃになったのです。

失敗とか、そんなレベルではなく、信じられないくらいどうにもできなかった。砂交じりの海水を思いっきり飲んでしまい、死ぬかと思うほどむせたことも。でも、自分でも驚くほど、ものすごく楽しかったのです。

波という、絶対に勝てない相手に挑んでいくことも、ボードに立つなんてこともままならずひっくり返されてもみくちゃにされているドヘタな自分も、なにもかもが面白く、そして「なんだ、私、何にもできないじゃん」ということが、これほどにも清々しいものなのだ、とその時思えたのです。そして圧倒的な自然への憧憬と畏怖の気持ちから派生したのが、「できなくたって、ダメだって、楽しいじゃん」「仕事や人間関係で失敗したって、殺されるわけじゃないじゃん」という気持ち。

もうあなたは大人です。学生時代の勉強や部活だったら、失敗を怒られる恐怖もあったかもしれませんが、今「身の丈に合わないかもしれないなにか」にチャレンジしたとしても、怒鳴られたりすることもないでしょう。ちょっと仕事とは離れたところで、スポーツでも、芸術でも、興味のある勉強でもいいかもしれない、自分の心惹かれる「無理めの」ものにチャレンジして、打ちのめされ体験をしてみるのはいかがでしょう?そうすると、世界の見え方がちょっと変わってくるのではないかと思います。

image by: Shutterstock.com

永藤かおるこの著者の記事一覧

有限会社ヒューマン・ギルド 取締役研修部長 公認心理師(登録番号: 29160号) 。日本アドラー・カウンセラー協会認定シニア・アドラー・カウンセラー。日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメント・ファシリテーター 平成元年 三菱電機株式会社 入社。その後、ビジネス誌編集、語学専門学校専任教師など、20年以上にわたるビジネス経験を経て、自身が働く中で壁に当たった際に出会ったアドラー心理学を修得。 現在、日本におけるアドラー心理学の一大拠点であるヒューマン・ギルドにて、アドラー心理学研修講師(企業・自治体、教育機関、個人等)、カウンセリング、書籍執筆などを担当。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 公認心理師永藤かおるの「勇気の処方箋」―それってアドラー的にどうなのよ― 』

【著者】 永藤かおる 【月額】 ¥440/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 第2金曜日・第4金曜日

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け