空港へ行くと、多くの飛行機が止まったり、離着陸を見ることができて胸が躍りますよね。メルマガ『ファンキー過ぎる家族がいてもマジメに生きてる娘の話』で、著者のミーミーさんの地元にも20年前に新しい空港ができました。今でもミーミーさんの記憶に残る父親のヤンチャなエピソードをお楽しみください。
プロペラ機にビビる
20年くらい前でしょうか。
私たちが住んでいた県に神戸空港までピンポイントで飛行機がとぶA空港ができました。
父は大喜び。
その飛行機に乗って神戸に遊びに行くというのです。
「新しい飛行機に乗ってみたい!しかも1万円やって!1万円!!」
どうやら父は就航記念で特別価格だった、神戸までの旅費1万円に惹かれていたようでした。
「こんなことなかなかないから一緒に行こうや!」
父からお誘いを受け、A空港の新しい飛行機に乗っての旅に同行することになった私。
軽い気持ちでOKしたものの、
旅程表を見て、ちょっと不安になりました。
A空港が離れた場所にあるため、まずそこに辿り着くまでに熊本空港に行き、飛行機でA空港まで移動して、そこからまた飛行機を乗り換えて神戸空港まで行くらしいのです。
「ちょっと、これさ、神戸まで行くのに飛行機乗り換えすることになってるよ。時間かかるし面倒だよ。普通に新幹線で行った方がはやいよ」と、
父に説明するも、
「2回も飛行機に乗れるのに1万円やって!すごいわぁ!お得やん!」
と言ってききません。
出発日当日。
予想以上に面倒なことが待っていました。
熊本空港まで車で行くのにも1時間くらいかかります。少し時間に余裕をもって出発しましたが渋滞していたためギリギリの時間に空港に到着。
父と2人でヨタヨタしながらA空港行きの飛行機を探すと…
ビックリするくらい小さな飛行機が待っていました。
搭乗待ちのロビーで小さな飛行機が見えた時、
「おい!見てみぃ!あんな小さい飛行機があるんやー。どこに行くんやろ?誰が乗るんやろ!個人の飛行機やろか?」と、大はしゃぎしていた父でしたが、
その小さな飛行機は私たちがA空港に移動するためのものだとわかり、
父は「えっ…」と言って、おとなしくなりました。
考えてみれば同じ県の空港から空港に移動するだけの飛行機です。人数もそんなにいないでしょうし小さいのは当たり前です。
しかし、父には驚きだったようで、
その小さな空港間移動用の飛行機に乗り込む瞬間まで
「うそやん、うそやん」と小声でぶつぶつ言っています。
父はぶーちゃんでしたから、小さくて狭い機内も不安だったようです。
車で空港に向かうだけでも渋滞していてクタクタになったのに、
小さな飛行機に乗って更にA空港まで移動。隣には急に不安がる父。
私は既に疲れていましたが、
父が目を輝かせて
「でもな、A空港からの飛行機はな、新しくて格好ええでー!!」
と言います。
「へぇ。なんで知ってるの?」
と聞くと、
「チラシに載っとった!クジラかイルカの絵が描いてある飛行機、格好良かったわ!」
無理矢理自分を鼓舞しているようにも見えました。
嫌な予感しかありません。
A空港に着き、神戸空港まで飛ぶ予定の飛行機を見てまたビックリ。
そこにはイルカが描かれた可愛いプロペラ機が。
私はプロペラ機が珍しかったので少し胸が弾みましたが父はいよいよ不安なご様子。
「ほら!絵もバッチリ描いてあるね!私、プロペラ機に乗るの初めて!!」
できるだけ明るく話しかけても父は不安でうわの空。
「39人乗り」というそのプロペラ機の、あろうことか私たちの席はプロペラがバッチリ見える位置にありました。ある意味、当たりの席です。プロペラ機好きの人にとっては特等席と言っても過言ではありません。
しかし、プロペラ機に怯えている父にとっては…
狭い機内、丸見えのプロペラ。そして地方色を生かしたA市の方言でのアナウンス。
真剣な顔で「何かあった際の避難器具の使い方」を聞き入る父。それまで見た父の顔の中で1番真剣で青白かったです。
離陸の時。
ビュンビュン回るプロペラの音と、がたがた揺れる機内に驚いた父が
「あかーん!!!!!」
と叫びました。
心配して来てくれたCAさんに、
情けない笑顔で「この飛行機、大丈夫?」と聞いていた父の顔が忘れられません。
私としてはプロペラ機がどうこういうよりも
大騒ぎする父のお世話が大変でクッタクタに疲れた…苦い思い出です。(帰りは急遽新幹線に変更になりました)
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