普段、私たちが何気なく口にしている食品も、モノによってさまざまな温度管理が工夫されています。さて、加熱処理することなく食べられる食材のうち、なぜコンビニのおでんは煮詰めても腐らないか、回らない寿司はなぜ美味しいのか、考えたことがありますか? 今回の無料メルマガ『食品工場の工場長の仕事』では著者の川岸宏和さんが、食品を扱う工場長ならではの豆知識を公開。私たちの生活にも役立つことを教えてくれています。
RTE(Ready To Eat)について知っておこう
コンビニのおでんはなぜ腐らないか
RTE(Ready To Eat)とは、加熱調理すること無く、直ぐに食べられる食材をいいます。
RTEも何時までも食べられる訳ではなく、室温にしばらく置いておくと、カビが生えたり、腐ってしまうため、それぞれの食材に応じた、適切な保管方法が必要になります。レタスなどは、茶色く変色してしまい、ケーキなども、クリームがだれてしまい、商品価値がなくなってしまいます。
RTEの食材を煮ている、コンビニのおでんは、なぜ、腐ったりしないか考えた事がありますか。コンビニおでんは、煮詰まってカピカピになっても食中毒を起こすことはありません。常に60℃以上を保っているため細菌が増殖しないのです。凍結する、冷蔵する、乾燥させるなど、RTEの食材を保管するためには、理論、理屈が必要なのです。
カウンターの寿司はなぜ美味しいか
美味しい寿司は、温かいシャリに限ります。座っただけで高そうな寿司屋の寿司は、シャリが人肌で、ネタも握る前に切り身の状態で室温に戻してから口に入れるとほどける強さで、握ってくれます。
しかし、この美味しい寿司も、「お土産にするから」と言うと、シャリを冷やしてから固く握ってくれます。回転寿司のシャリは、25℃程度まで冷やして、ネタは冷たいまま握ります。
スーパーの寿司は、売り場自体が15℃と冷えているので、シャリのおいしさが伝わりづらいものです。
どのように保存すれば、RTEの食材を美味しく、安全に食べる事が出来るかを科学的な考え方で説明できる事が大切です。
■教育のポイント
- RTEの取り扱いの注意点を説明出来る
- RTEの適切な保存温度を説明出来る
- RTEを室温に放置した場合の注意点を説明出来る
潜在的危害は、菌だけではない
いつもは問題無いのに
小学校でジャガイモを食べて、食中毒になったと言う報道を聞きます。自分たちで植えたジャガイモを掘り、調理して食べたところ、下痢をすると言う例です。ジャガイモは、太陽が当たると表面が青くなり、天然毒素を生成してしまい中毒になります。
ジャガイモの芽は天然毒素があると言うことは知っている方が多いのですが、表面が青いジャガイモ、緑色のジャガイモは、皮を剥いても毒素が残っている(編注:諸説あり)と言うことを、家庭科の先生たちが知らないことに、びっくりしてしまいます。日本では当たり前の様に、透明な袋にジャガイモを入れて、日光の当たるところで販売していますが、表面が青くなると、毒素を生成しています。
鰹などの青魚は、保管温度が高くなると、ヒスタミンを生成し、食品アレルギーと同じような症状を発症します。一度、ヒスタミンを生成した魚は、加熱しても分解しないので、流通経路で保管温度が上がってしまった物は、食することは出来ません。
食べてはいけない物もある
刺身のツマに季節感を出すために、秋は紅葉の葉を添え、初夏はあじさいの葉を添えたとします。間違えて紅葉の葉を食べても問題はありませんが、あじさいの葉を食べると嘔吐する場合があります。毒キノコ、ふぐのきも等は有名ですが、ニラと間違えて、スイセンを食べてしまう事故などは、毎年報道されています。道の駅で間違えて販売してしまう事も報道されています。
身近なスズランの赤い実も猛毒を持っています。季節感を出すために、庭に咲いている季節の花、葉を盛り付けに使用する場合は、間違えて食べても問題無いものを使用する事が大切です。
鯖、アジ、秋刀魚、鰹などには、寄生虫がいる可能性があります。しめさば、わさびなどでは、寄生虫は死なないので、刺身で提供する場合は、鮮度のいい物を提供し、注意して調理することが大切です。
■教育のポイント
- 天然毒素の生成について例を挙げれるか
- 食べてはいけない、身近な植物の例を挙げれるか
- 刺身で食べるとき、注意が必要な例を挙げれるか
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