先日掲載の「北京五輪に『全面ボイコット』の可能性浮上。テニス選手不明事件で広がる中国不信」でもお伝えしたとおり、その迅速な解決が求めてられている、中国の女子テニス選手ポン・シュアイ氏失踪問題。人権侵害も甚だしいこの事件が各国に与えた衝撃は、近年まれに見るものと言わざるを得ません。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、そもそも中国の人々は当問題をどう捉えているのか、そしてポン・シュアイ氏の無事を確認したという国際オリンピック委員会へ世界はどのような眼差しを向けているのかについて、海外紙の報道を引きつつ探っています。
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中国政府とオリンピックを揺るがす女子プロテニス失踪問題
中国の女子プロテニス選手、ポン・シュアイ(彭帥)さんの失踪問題は沈静化するきざしをみせません。
中国の元副首相からの性的暴行から始まり、愛人関係となり、それを告発するインターネット投稿をした後で行方不明になる、という始まりで、世界中の注目を集める要素をもっています。まして、当人は3度のオリンピックに出場した世界のテニス界の超有名人です。
その後、共産党系のメディアからでてきた彼女の「自分の事はそっとしておいて」という不自然なメールや元気な姿を映した動画は、世界中の疑惑をさらに高めることになりました。
そもそも告発をした当人が「自分をそっとしておいて」などというでしょうか?
この問題、どういった形で各方面にインパクトを与えているのでしょうか?外国の新聞報道から探ってみましょう。
【中国内での反応】
ほとんどの中国人はこの問題があることすら知らないとの意見もありますが、シンガポールのストレートタイムズ紙は以下のように言っています。
多くの人が検閲を回避する方法を見つけ、最初は元世界ダブルス1位のポン・シュアイの英語のイニシャルである「PS」を使っていました。
しかし、このイニシャルを含むメッセージはすぐに検閲されてしまいました。
その後「大きなメロン」や「あの人」などの暗号化された表現を用いて議論している(「メロン」は中国のインターネットの隠語で「ゴシップ」をさす。大きなメロン=大きなゴシップ=ポン・シュアイの意味)。
ウェイボーの「テニス」というトピックのページでは、一夜にして「ビッグメロン」が爆発的な人気を博した。
ネットユーザーの中には、検閲を避けるために「WTA(女子テニス協会)」の文字の一部に星印を付けている人もおり「*TAが中国でのトーナメントを中止する動きを見せたのは、あの人のせいではないか」と質問している人もいる。
中国人の友人に訊いたところ「VPN(仮想専用回線)を使って台湾のニュースサイトを読んでいる中国人はたくさんいます」との事です。
ポン・シュアイは中国で初めてテニスの金メダルをとった有名人ですし、まして女子テニス協会が大会の中国開催の中止を発表しましたから、情報統制にも限界はあるでしょう。
隠語を使ってでもネットに共産党への批判があふれるようになれば、中国政府はどうするのでしょうか?それは中国政府の現実の心配となってきています。
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【国際オリンピック委員会(IOC)への不信】
さて次にご紹介するのは、12月2日、ニューヨークタイムズの記事です(一部は12月4日香港サウスチャイナモーニングポスト)。
国際オリンピック委員会(IOC)は2日、ポン・シュアイ氏と2回目の電話会談を行ったことを明らかにした。
「我々は、他の多くの人々や組織と同様に、ポン・シュアイに対する懸念を共有している。そのため、昨日、我々のチームが彼女とビデオ通話を行った。私たちは彼女に幅広い支援を提供し、定期的に連絡を取り合い、1月に個人的に会うことにすでに合意している」との発表。
しかしながら、前回の電話会談と同様に、国際オリンピック委員会はそのビデオや記録を公開しておらず、水曜日の電話会談がどのように行われたか、誰が参加したかについても言及していない。
これに対して米国の超党派議員ペアは金曜日、国際オリンピック委員会が、中国当局がこの問題を隠蔽することに協力していると非難する決議案を提出した。
「国際オリンピック委員会が中国政府と協力して彼女への性的暴行と失踪の疑惑を隠蔽する役割を果たしたことは北京オリンピック・パラリンピックに参加するアスリートを保護する組織の能力と意思に疑問を投げかけるものである」としています。
解説
この問題に対応でバッハ会長が率いる国際オリンピック委員会はその信用を地に落としたと言えるでしょう。
現在、ポン・シュアイさんのスポンサー企業であるアディダスへの批判もでてきています。
「アディダスがこの中国人テニス選手の状況について沈黙をしているのは、中国市場を失うのが怖いからではないか、当然に中国政府に彼女の所在を問いただすべきではないか?」という批判です。
この世界的な批判がさらに高まれば、他のオリンピックのスポンサー企業へも波及する可能性があります。日本企業では―――(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』12月5日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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