先日掲載の「年商6千万を470億にまで伸ばした通販『やずや』絶好調のカラクリ」では、健康食品通販大手のやずやが業績を伸ばし続けている秘訣を考察した、Webメディア『ECのミカタ』元編集長で株式会社「team145」代表取締役石郷学さん。石郷さんは今回、自身のメルマガ『週刊145マガジン「腹割って話そうぜ!」まぐまぐ!出張版』で、やずやグループ未来館社長の西野博道さんと、女性マーケティングの第一人者として知られるHERSTORY代表取締役の日野佳恵子さんの対談内容を紹介しつつ、日本の通販が負け続ける理由を探っています。日本企業は何を「ないがしろ」にしてきたのでしょうか。
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※ 本記事は有料メルマガ『週刊145マガジン「腹割って話そうぜ!」まぐまぐ!出張版』2021年9月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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だから日本の通販は負け続ける
通販企業は商品企画から改めよ
「通販企業はCRMという言葉を口にはするもののCRMをやっている会社は殆どない」
その対談は、やずやの大番頭 西野博道さんの意を決した「パンチの効いた発言」から始まりました。そして彼の横にはHERSTORY 代表取締役 日野佳恵子さんがいました。
西野さんとは色々取材してきましたが、そのいずれもが売れる為の本質をついており、その一言が多くの通販企業を変えてきたのも事実ですが、今、敢えて「皆、手段ばかり議論していて、実際消費の9割の決定権を持つ女性の気持ちを理解していない」と。
下の図はその日野さんの著書にあった図で、世間のマーケティングと彼女のマーケティングの違いを示した図です。彼曰く、通販企業はその図で言うところの「情緒(感情)的価値」を理解して、商品を提供しているつもりだった。
でも実際は「便宜的価値」の「お得、値ごろ」の要素などを追いかけていたにすぎなくて、それで通販企業はライフ志向をわかったつもりになっていただけでしたと。
そう言って今の通販企業の多くが陥ってるのは「なんちゃってライフ思考だったのです」と語ります。
日野さんは女性マーケティングの第一人者。起業は30年前まで遡ります。当時を振り返り、「オーガニックにしても、それを語る人はいましたが、売り場では皆『売れるわけではないのに』と言っていました。でも一方で、その大切さを語る女性は年々増えていて、以後の経過を見ると一目瞭然、女性の声の方が間違いなく浸透しているんですよね」と話します。
つまり、女性の情報を知っておくと、社会の流れがどちらにいくか予見できると思ったと話し、当時としては珍しい女性のマーケティングを志し、今では多くの著書をなどして、活躍しています。
重要なのは女性はそういうことを無意識に言っているから、その理解が必要なんですよね。だから、西野さんはそのアプローチの仕方を通販に取り入れることで、手段に直結する起点から見直しして、理論を再定義したいと考えたわけです。
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マーケティングが既存と全く違う日野さんの手法
日野さんはこう例えました。
「この夏にオレンジ色の服が売れたとします。その売れたものは商品を扱う側(お店)からすれば『襟がついていて』『丈が短くて』といった具合にこれらは全部、売れる要素としてスペックの情報で捉える傾向があります」
それで「こういう(スペックの)ジャケットが売れているから、その商品でSEOの効果を上げよう」という具合に、売れている事実を捉えて対策を打つのですけど、インサイトインタビューをすると、女性たちはこう話すのだといいます。「コロナでネガティブ気分が重いので、明るめなものに目が行くんですよね」って」。んん??スペックではない。
「無意識にピンクの傘を買っちゃったり、オレンジの服を買うんですよね」と続けるわけです。
すると「このインサイトは何かというと、自分たちの置かれた環境が今ネガティブな雰囲気を持っている中で、気持ちを上げたいと考えているという事になるんです」と日野さん。
オレンジであることよりオレンジに至る気持ちの方に注目しているわけです。
そこに「プラスアルファ」として何かがある。要はここの部分が先ほどの図と関連して、それが「情緒(感情)的価値」。
それを理解していないのが今の通販業界、なんちゃってライフ思考です。
続けて、日野さんはそれを取り入れて躍進したワークマンの話をしました。これまでもキャンプに行く人用のジャンパーは置いてありました。
それらはほとんどが全面のチャックで開け閉めをするタイプ。作業着としての雨風が入らないようにするための「こだわり」で素晴らしい。
でも、女性キャンパーが木の丸いボタンに変えて欲しいなといい始めて、それを具現化したら大ヒットしました。
なぜですか?
チャックは胸のあたりで止まっているタイプも多く、すると上からかぶらなければなりませんが、女性はそもそも髪の毛が崩れることを拒みます。
ファスナーの機能性には理解を示しつつも自然の中で“メタル感のあるパーツ”は優しさや素朴さではない“人工的な違和感”が出てしまう事が気になるわけです。
女性の立場も踏まえつつ、精神的に落ち着きが持てるようにする母性のようなものが見えます。
でも「そんなこと?」と通販企業においては「理解できない」と諦めてきた部分はないでしょうか。
でも危機感を持って受け止めなければならない事は日野さんのマスクに関する話でよくわかります。
日本が海外に負け続ける現状
実は今「血色マスク」というのが通販を中心にヒットしていますと。男性であれば、マスクは通常、高機能で99%ウイルスを防御など、高度なレベルのマスクで…という事になるでしょう。
しかし、女性の場合は最後の最後、もう一つ付け加えて顔の映りをよくする要素が決め手となって「血色マスク」を選びます。
皆、日本人も買い始めているんですけど、危機感の理由は作っているメーカーの殆ど全てが韓国なんです。
こういう部分で売り方、ページの作り方は日本は非常に遅れていますと。なぜかといえば、消費者の声を聞く場所に女性を入れていないから。
女性社員にインカムつけてもらって、オペレーターという形で、労働者として活用していることはあっても実は消費の決め手となる意見を発言する場にいない、というのです。
なるほど。あの時、オーガニックに冷ややかな目をしていた人に、今、読者であるあなた自身がそうなってませんか。
女性の発想は周りとの関係を維持し次世代へと継承していく考えが強いから、一過性ではなく、商品企画においても先駆けであり、かつ定着しやすいのです。女性マーケティングの強さはここにあるのでしょう。
手段は大事。けれど提供する商品の発想からメッセージに至るまで受け手の人をどれだけ理解していますか。そこを見直さないと日本は取り残される可能性が大きいと思います。
※ 本記事は有料メルマガ『週刊145マガジン「腹割って話そうぜ!」まぐまぐ!出張版』2021年9月20日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込962円)。
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image by: Hadrian/Shutterstock.com