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90%の日本国民が超貧困層に。衰退確実の我が国に求められる「整備」とは?

先日掲載の「右派にも左派にも責任。日本がここまで衰退してしまった『5つの原因』」では、日本が転落の一途を辿ってしまった理由を挙げ、その責任は保守・革新の両者にあると指摘した、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。しかし津田さんはその戦犯が誰であれ、この国が沈没してゆくのを手をこまねいて見ているわけにはいかないとも言います。そんな津田さんは今回、自身のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で、さらなる衰退を見越し日本政府が取り組むべき環境整備の具体案を提示。その上で「為政者が持つべき覚悟」を記しています。

【関連】右派にも左派にも責任。日本がここまで衰退してしまった「5つの原因」

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日本衰退を見越した環境整備

移民政策を打たないと、日本の衰退は決定的になる。その場合、どのような準備をしておくべきかの検討をしよう。

日本は分岐点にいる。経済衰退か経済大国への復活かであるが、オミクロン株で外国人原則入国禁止で、岸田政権の支持率が上昇している。

この支持率上昇は、高齢者を中心に、移民に対して拒否感が強いからであるが、その上に、その拒否感を説得するような変革マインドを持った政治家もいない。ということは、今後も日本の衰退は止まらない。

このため、岸田政権も14業種への家族同伴での外国人長期滞在を認めたが、議論をしないで、こっそりと許可して、移民政策への転換という非難を避けようとしている。

しかし、今後超円安になり、賃金レベルが韓国や台湾、欧米諸国に比べて見劣りする日本には技術者や資格者は来ないという。すでに移民緩和が遅かったのである。

その結果、労働力不足と消費不足から日本が貧しくなるのは確定的になり、それでも幸せを感じられる国家をどう作るのかの方向に検討をシフトするしかないようだ。

この一番の原因が、人口減少の加速だ。直近10年では、人口減少は100万人程度であり、それほどの人口減少にはなっていないが、今後、人口減少の本番を迎える。

70歳~74歳の人口は、968万人もいる。1945年から1950年までの団塊の世代であり、後5年後には80歳から75歳になり、1年間で200万人弱もいる。0歳から4歳児は450万人であり、生まれる数は1年間90万人弱であり、5年後から、人口は年間100万人強の減少となるはずである。

100万人が年間240万円消費していると、消費額の減少は2.4兆円となり、その消費財の生産過程の生産倍率が3回転としても、7.2兆円ほどのGDPが減ることになり、年間10兆円の減少となる。GDP500兆円で年間2%づつ減少することになる。

10年もすると、20%以上の減少になることで、日本の衰退は決定的になる。このようなことは人口統計を見ればわかることである。もう、GDP縮減の埋合せの積極的財政出動もできなくなる。

勿論、毎年100万人以上の移民を入れば、人口的にはトントンになるが、それを許す国内世論や賃金水準の状況でないなら、衰退は確実に起こることになる。

この国力衰退で、何が起きるかというと、優秀な若者は、英語力を身に着けて、海外で活躍するしかないことになる。優秀な若者は、米国のハーバード大やMITや英国のケンブリッジ大で学ぶことになる。

そして、卒業後は海外企業で働くしかない。日本企業で働くとしても、日本企業自体が日本から飛び出して世界でビジネスしているので、日本企業の海外駐在員となる。

中間クラスの若者も日本の大学に入ったとしても、英語で教育することになり、日本企業の世界展開需要を満たさないといけない。小学生時代から英語力を付ける必然性が出てくる。

日本の大企業は、日本市場がやせ細るので、日本離れを加速してくるからだ。このため、日本は衰退するが、日本企業の株価は上昇する可能性もある。日本の大企業の力と日本の国力とは大きな差が出てくる。企業は日本から離れて活躍するので、飛躍の可能性もある。

日本にいるのは、日本語だけしか使えない人たちであり、この人たちの賃金はインフレでも上がらず、貧しいが、それでも生活ができ、充実した人生を送れるように、日本政府は準備することである。

ということで、海外企業や日本の大企業の社員とそれ以外の日本人では、歴然とした年収の差が出てくる。日本国内いる5%の金持ち層と海外にいる日本人5%と、残り90%の貧乏人の2極分化状態になる。もし、日本いる5%の人たちに高額な税金をかけると、この人たちは、すぐに海外に逃げ出すことになる。

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ということで、選挙権のある90%の日本に住む貧乏な日本人の国家で、その人たちにサービスを行うのが、政府の仕事であるから、日本衰退の準備をする必要があるのだ。その見返りとして90%の国民からも税金を取るしかない。

まず、衣食住を十分に準備することと、エネルギー確保となる。この準備が衰退時でも必要になる。円安で海外の産物価格は高騰しているので、国内産業の再構築が必要になる。

住は、人口減少になり中古住宅は、今後ともに余ってくるので、リノベーションして住むことだ。木材価格も上がり、新築は相当な値上がりになる。木材も日本材が中心になる。

このための林業活性化が必要になり、山の所有権を統合して、大きな面積で事業ができる、採算が取れなるようにすることだ。このため、個人所有を禁止してもよいかもしれない。企業所有でない山林の国有化を行うことも視野に入れた再生策が必要になる。

衣は、リユースである。この分野が充実してきている。古着屋が江戸時代には相当数あったが、その時代が再来している。この証拠にハードオフや、セカンドストリート、トレジャーファクトリーでも店の中心は衣料品であり、買っている人も多い。ユニクロやワークマンも買う人が多いが、そこより安く、いい物がある。

そして、食であるが、国内食糧が中心になる。超円安で海外のものが高くなり、国内産で生きるしかない。そうすると、その中心は、コメであるが、米粉にしてパンや麺などにして食べることになるのであろうが、栄養的には不足する。

栄養的には玄米が重要なことになる。ここでも江戸時代に戻ることになりそうだ。一汁一菜に戻る時には、玄米が栄養的にはベストになる。

肉も牛・豚は高くて、庶民が口にできるのは、鳥、ジビエになるのであろう。海産物も徐々にシフトしてくる。世界が食べないタコやイカや深海魚などになるしかない。冷凍技術が進み、海産物で今まで捨てていた物まで商品化できるようになるし、するしかない。

その他、たんぱく質の補給に、昆虫食も出てくる。蜂の子の漬物など、今後どこかで製品化することになると思う。

一方、マグロやブリなどの高級魚は、輸出品となる。果実も輸出品となり、日本の外貨獲得に貢献することになり、庶民が口にするものではなくなる。庶民が口にできるのは、規格外の果実などである。

この国内食糧生産の農業と太陽光発電の土地の取り合いが起きることになる。その法律を整備しておくことが重要である。国民の食糧確保と同時に安価なエネルギー確保も重要な政府の仕事になる。

エネルギーは、太陽光発電が中心であろう。東北の日本海側と北海道の留萌周辺では風力発電が採算に乗るが、東京までの電力線整備が必要になる。石油など化石燃料は、新規の投資がされないことで、今後価格高騰が続くことになる。再生可能エネルギーへの転換は国策になる。

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そして、政府は、今後、10年から20年後の日本衰退時のあるべき姿を描き、それに向けて国内整備を今のまだ経済余力がある内に、整備して置く必要がある。

赤字路線になるような新幹線整備などの無駄な工事ではなく、衰退時に必要になる産業構築と世界に飛躍する企業支援に予算を充てるべきである。企業が世界で活躍すると、法人税が入るので、日本の衰退時でも大きな財源となる。

その整備なく、衰退すると地震や台風などの災害で飢饉になり、大きな人的被害を起こすことにもなる。その結果は、より大きく日本衰退を起こすことになり、衰退を加速させてしまう。ということで、江戸時代の東北諸藩と同じような国になりはしないかと心配になっている。

もう、日本は発展途上国の心配と同レベルの心配をしないといけなくなる可能性があり、為政者は覚悟が必要である。

また、国防に大きな予算を割けなくなり、国際情勢でも、日本は受動的対応に終始することになる。世界もいやな時代になるのに、日本は、その時代を丸腰の状態で迎えることになりそうである。

保守派政権で、無為に過ごした10年間、日本は移民政策もせず、企業支援もせず、ただ、財政出動で過ごしたことで、日本は衰退を確定的にしてしまった。その反省からでしか、日本の存続は成しえないと思う。

さあ、どうなりますか?

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image by: Shutterstock.com

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