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習近平の止まらぬ暴走。クリスマス禁止令で世界を敵に回した隣国

国民に対する締め付けをエスカレートさせる習近平政権ですが、ついに先日、一部の地域に「クリスマス禁止令」が発令され、世界中で大きな話題となっています。この信じがたい政策を「大きな過ち」とするのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で今回、中国当局による「宗教的であるため」という禁止理由が致命的とし、その根拠を記しています。

中国の【クリスマス禁止令】が致命的ミスである理由

習近平の暴走が止まりません。なんと中国で、【クリスマス禁止令】が出されているのです。「読売新聞オンライン」12月25日を見てみましょう。

中国でクリスマスのイベントを禁止する動きが広がっている。25日までに、河南省など少なくとも6つの省・自治区の小中学校で、「我が国の伝統文化に打撃を与えている」として、保護者や児童らにクリスマスの行事などを一切行わないよう求める通知が出された。

「我が国の伝統文化に打撃を与えている」から禁止だそうです。もう1つ理由があります。

通知では、クリスマスを「宗教的な色彩を強く帯びた西側の祝日」だとし、関連イベントの開催を禁止した。クリスマスメッセージのメール送信やプレゼント交換の禁止も求めた。
(同上)

クリスマスは「宗教的な色彩を強く帯びた西側の祝日」だから「禁止」なのだそうです。この「宗教的だからダメ!」という部分は、とても重要です。

共産主義は宗教を禁止する

中華人民共和国は、ユダヤ系ドイツ人カール・マルクスの「共産主義」をベースに建国されました。

「共産主義って何?」

若い世代の皆さんは、おそらくそんな感じでしょう。「共産主義」について説明すれば、一冊本が書けてしまいます。

などなど。そして、共産主義理論の重要ポイントの1つは、

こと。

宗教者は、「神が人間を創った」と考えます。しかし、共産主義者は、「人が神を創った」と考えます。要するに、「神様というのは、人のファンタジーだ」と。まあ、それは「考え方人それぞれ」で良しとしましょう。しかし、共産主義の為政者たちは、しばしば「神様を信じる者は、殺さなければならない」と考えます。

この言葉は、「大げさ」でしょうか?実際、世界初の共産国家ソ連では、ロシア正教の神父が大虐殺されました。共産中国で、もっとも迫害されているのは、チベット人とウイグル人です。人民解放軍は、チベット人を120万人殺したといわれている。ウイグル人については、現在100万人が強制収容所にいる。そして、ウイグル女性は不妊手術を強制されている。つまり、「民族絶滅政策」が行われている。なぜ?そう、チベット人は「仏教徒」で、ウイグル人は「イスラム教徒」だからです(もちろん、理由は「それだけ」ではありませんが)。

そして、今回、「クリスマス」に、中共の「鉾先」がむいた。なぜ?「宗教的な色彩を強く帯びた西側の祝日」だからです。そう、クリスマスは、キリスト教の開祖イエス・キリストの誕生を祝う日。だから、禁止しなければならないのです。

際立つ異常性

記事にはつづきがあります。

習近平政権は、欧米の文化を排除することで子供に愛国心や中国共産党への忠誠心を植え付ける狙いがある。だが、インターネット上では、「クリスマスは中国の若者には当たり前のイベントなのに、どう拒絶できるのか」と疑問視する声があふれている。
(同上)

たしかにクリスマスは、「イエス・キリストの生誕を祝う日」です。間違いありません。しかし、キリスト教徒以外の日本国民もクリスマスをお祝いします。「家族一緒においしいものを食べる日」あるいは、「彼氏彼女とロマンチックなデートをする日」ぐらいの意味でしょう。中国の若者にとってもその程度の意味であり、「神様とイエス・キリストを完全否定する中国共産党打倒を決意する日」ではありません。

中国の「クリスマス禁止令」。日本でいえば、「クリスマスは、神道、仏教を伝統とする日本の国体を破壊するから禁止しよう!」というのと同じくらい異常なことです(かつて、スペイン、ポルトガルはキリスト教会と組んで、植民地を獲得していきました。江戸幕府はそれを警戒し、キリスト教を禁止した。当時は、「意味あること」だったでしょう。しかし、現在のキリスト教は、大国の「植民地獲得の道具」ではありません)。

世界宗教を敵に回す中国共産党

というわけで、習近平がクリスマスを放置していても、中国共産党の脅威にはならないでしょう。しかし、「クリスマスを禁止する」のは、習政権にとって大問題になり得ます。なぜでしょうか?

キリスト教徒の数は、世界人口の3割を占め、現状「世界最大の宗教」です。キリスト教は、主に「カトリック」「正教会」「プロテスタント」に別れますが、「クリスマスを祝う」ことは共通しています。世界人口の3割を占めるキリスト教徒たちは、「中国政府がクリスマスを禁止した」と聞き、「やはり、中国は神の存在否定を強制する異常な国だ」と考えるでしょう。

さらに、中国はイスラム教のウイグル族を大虐殺している。イスラム教徒の数は、約19億5,000万人。世界人口の25%を占め、現状世界2位の巨大宗教です。つまり、習近平は、世界1位、2位の宗教、世界人口の55%を敵に回しているのです。これは、重要なことでしょうか?重要なことです。「ウォールストリートジャーナル」2020年12月24日付は、こう記しています。

中国のキリスト教徒の大半は都市部に住み、高学歴で、世界の情報網とつながっている。このため、キリスト教徒に厳しい圧力をかけることは、チベットや新疆、あるいは香港で起きたことよりもはるかに大きなダメージを中国の国際的立場に与えるだろう。共産党がキリスト教徒を迫害しているとの報道が広がれば、米国の世論への影響は甚大かつ長期に及び、米中関係の改善はおろか、安定への期待さえ消滅しかねない。

習近平、3つの過ち

リアリスト・鄧小平は、「自分が神になること」に、まったく興味がありませんでした。それどころか、「個人が神になること」を禁止したのです。彼は、「個人崇拝」「終身国家主席」を禁止。「集団指導体制」に移行した。

ところが、習近平は、「自分が神になること」以外、興味はないようです。しかし、指導者としては、毛沢東並にお粗末で、現状大きな間違いを3つしています。

1つ目は、「戦狼外交」。どの国に対しても強気でいくのです。最近、バルト三国の旧ソ連国リトアニアに、台湾大使館が開設された。中国はこれに激怒。環球時報は、リトアニアについて、「ゾウの足の裏にいるネズミかノミ!」と表現しました。中国は、毎回こんな感じなので、どんどん敵を増やしています。

2つ目は、「共同富裕政策」。意味は、「みんなで金持ちになろう」です。しかし、実際は、「金持ちから金を奪って貧しくしよう」運動になっています。習近平は、「マンションは住むためのもので、投資するものではない」と歴史に残る迷言を吐き、それによって中国のバブル崩壊を引き起こしました。

3つめは、過剰な宗教弾圧です。「クリスマス禁止」という馬鹿げた政策で、世界人口の3割を占めるキリスト教徒は、「中国ではキリスト教徒が迫害を受けている」ことを知るでしょう。「中国の異常性を世界の人が知ってしまう」という意味で、「クリスマス禁止令」は致命的です。

というわけで、中国は「偉大な」指導者のおかげで、衰退の道を爆走しているのです。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2021年12月27日号より一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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