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自分の目標は他人が決める。日産が奇跡のV字回復をした「タニモク」とは

自分の目標は自分で決めるのが当たり前だと思ってはいませんか? 実は、あえて他人に目標を決めてもらうことで成長できる場合もあるようです。今回のメルマガ『尾原のアフターデジタル時代の成長論』 の著者で、マッキンゼー、Google、リクルート、楽天などの多くの企業で新規事業と投資を歴任してきた尾原和啓さんが奇跡のV字回復を成し遂げた日産の会議方法に倣った「タニモク」という方法を 紹介しています。

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自分の目標は他人に決めてもらったほうが意外と面白い

今日は、「自分のことを計画するために、自分が敢えてやらない方法」というお話をしたいと思います。

これは日産が奇跡のV字回復をした驚異の会議方法の応用で、「タ二モク」と言って、敢えて他人が目標を決めるやり方です。

「せっかくだから、1時間くらいみんなで集まってWebで飲み会しようよ」って感じでやっていただければです。

日産の驚異の会議方式とは?

「日産の驚異の会議方式」って何かと言うと、カルロス・ゴーンさん(後節をおかしな形になっちゃったんですけど…)が日産に持ち込んだプロセスマネジメントです。これがとてもすばらしくて。

彼は、会議の問題の当事者が途中でいなくなることで、よりよいアイデアが生まれる会議方式を持ち込みました。

会議って、問題の当事者が「こういう問題があるから、みんなで問題のいい解決策を考えようよ」みたいなことを言うわけですよね。

当たり前ですけど、問題の当事者が一番深刻だから、「いやこれってさ、こういうことなんだけど」って口を挟んじゃう。周りの人間も、「本質的な課題ってたぶんこうなんだろうな」って思うけど、当事者がずっと思い悩んでるから配慮しちゃって本当のことが言えなくなるんですよね。

この『日産 驚異の会議』という本、すごく分厚い本なんですけど、途中にチャートで2枚だけのページがあります。そこに真髄が全部含まれているので、ぜひ興味のある方は読んでいただければです。

● 『日産 驚異の会議』漆原次郎 著/東洋経済新報社

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今日は、その中の一番のエッセンスを説明します。まず、会議においてポイントは3つです。

会議のポイント①

会議をやる時、解決策のアイデアを出してもらうのに、アイデアを出せそうなふだんとはちょっと遠い部の人に集まってもらう。

近い人は煮詰まっていて、なかなかブレイクスルーが出ないから悩んでいることがある。むしろ多様な人たちが集まったほうがいいから、少し遠い人が集まる。

会議のポイント②

途中で発議者がいなくなる。

本人が「今回の課題ってこういうことなんだよ」って説明をして、ちょっと本人とは遠いメンバーの人たちから前提条件を聞いたら、「じゃあ、俺いなくなるから。みんなからのアイデアが出る2時間くらいは帰ってこないね。何かあったら呼んでね!」と言っていなくなる。

そうすることによって、残りのメンバーは「俺だったらこうする!」「俺だったらこういうことまでやっちゃっていいんじゃないの?」というふうに、本人に遠慮せずに自分の視野から見た問題を照らすことができる。自分の観点からしか見えていなかった問題を、いろいろな角度から見てみることで意外な解決策が出る。

会議のポイント③

アイデアが出たら、「やったときにインパクトが出そうか?実際に実行しやすいか?」というところでプロットをしていく。だいたいの優先順位ができたところで、初めて発議した人に戻ってきてもらう。

本人からすると「なるほど、みんなこういうふうに思ってくれてるんだ」という話になるし、みんなが一番インパクトがあって、やりやすいと言っていることも「ごめん、これは取引先のこういう事情があって、やりづらいんだよね」という話になったりする。

一つひとつのアイデアを当事者が実行するってなったときに、「こっちの観点からやればできるんじゃない?」というかたちで「どうやれば当事者の呪いが外れて、より実行に向かうか?」を、インパクトが高い順から話していく。

そうすることで、「わかった。俺頑張ってこれやる!その代わり、ここってお前のアイデアが大事だから協力してくれる?」みたいにコミットができる。場合によっては「これ、どうしても無理だから外すわ」みたいなことをやっていくことで、本人の視野から外れたものもアイデアとして取り組む。その中で、協力者を見つけながらやっていく。

というのが、日産の驚異の会議方式のおもしろいところなんです。これ、リアルの場でやるとすごく有効なんですけど、ぜひおすすめしたいのが「タニモク」です。

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「タニモク」の進め方

これは何かと言うと、自分の1年の目標や自分が何をやるべきか?を無責任に他人に決めてもらうことです。「日産の会議方式」と同じで、やることは簡単です。

1.まず、3、4人集まる。集まった中で、自分の状況を簡単に説明する

自己紹介、経歴、最近取り組んでいる仕事、プライベート、その他自分が注力することなどを説明する。5分とか時間を決めて短くやる。

2.1.の説明に対して、他の人から本人に質問をする

今年どうしたいのか?など目標を聞いてはいけない。あくまで聞くのは状況だけ。状況を聞いて、自分たちも同じ前提条件を理解する。

3.他の人が(A4 1枚で)「私があなただったらこうしますよ」と、本人の目標を黙々と書く

4.「僕があなただったらこういうことをやります」と本人にプレゼンをして、質疑応答をして、3人回す。本人はみんなの目標を聞いて、「僕はこうやりたいと思います」と言う

意外と自分には、経路依存(自分がこちらから歩んでいたから、こっちに歩まないといけない)という囚われがあります。

一回こういうふうに当事者を外して、無責任に「あなたの立場だったら、俺はこうする」みたいなことをやってみると、自分の目標が見えてくるということです。

というわけで

自分の目標を敢えて自分から語らずに他の人にやってもらうと、意外と自分というものの先が見えてくるよという「タニモク」のお話でした。

■参考リンク
他人に目標をたててもらうワークショップ「タニモク

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image by: Shutterstock.com

尾原和啓この著者の記事一覧

IT批評家、藤原投資顧問 書生 1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。 マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタート。 NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援を経て、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業立ち上げに従事。 経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。 現職は14職目。シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリスト。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。

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【著者】 尾原和啓 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 月・木曜日 発行予定

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