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急増する「身内の不幸」への嘆き。3回目接種の遅れはなぜ起きたのか?

新型コロナの感染者数はピークを超えたとの見解が示されましたが、一方で死者数は2月15日に全国で236人と過去最多を記録。翌16日も230人とピークは見えません。この惨状にSNSには身内を亡くした人の嘆きの書き込みが急増しています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、健康社会学者の河合薫さんが、知人もその一人と書き込みを紹介し、家族と医療従事者の窮状を訴えます。そのうえで、高齢者の命を救うはずだったワクチンの追加接種が2ヶ月も遅れながら、「最大限の努力」をすると嘯く厚労大臣の言葉に怒りを滲ませ非難しています。

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見捨てられる「命」と10億円

コロナ感染拡大が高止まりの様相を呈する中、知人のお父様がコロナ感染で他界するという、悲しい出来事が起こりました。介護施設のスタッフから「高熱が続いている。コロナ感染の可能性がある」との連絡後、PCR検査で陽性が判明。そのわずか5日後、亡くなったそうです。

「面会制限で一年以上、会うこともできなかった。最後も亡くなる二日前にタブレット越しで顔を見れただけ。あっという間の出来事で、現実を受け入れられない。テレビに出ているコメンテーターたちは『オミクロンはインフルエンザと一緒。経済を回さないと』というけど、高齢者は死んでもしかたがないとでも思ってるのか。メディアが多用する『軽症』って言葉も気になる。介護現場は第一波の時から後手に回され続けている。違和感しかない」

知人はこう悔しさをSNSに綴っていました。改めてSNSの投稿を見渡してみると、知人と同じような悲しい経験を綴っている人が少なくありませんでした。高齢の親が施設でコロナ感染した、あっという間に寝たきりになった、会えないまま亡くなってしまったetc.etc…先週から急増していました。

コロナ感染で亡くなる人が急増している大阪では、「第6波」の死者のうち80代以上が7割を占め、昨年12月17日~今年2月5日の死者133人のうち69.9%が80代以上。60~70代も加えると96.2%を占めると報じられています。

また、厚労省の集計では70代以上の新規感染者は3週間(8日まで)で10万人超。高齢者施設でのクラスター件数は、1月10~16日62件だったのが、翌週の17~23日には136件に倍増。さらに、24~30日252件、31日~2月6日292件と1カ月で5倍に増えている。昨夏の第5波で最も多かった43件を大幅に上回る件数が、報告されているのです。

一方、「コロナで高齢者の死亡増加」を報じるWEBメディアの記事には、「コロナとは関係ない。高齢者はノーマルな状態でもこれくらいは亡くなっている」といったコメントも散見されます。問題の本質って…“そこ”なのでしょうか?

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オミクロン株が急速に拡大すること、3回目のワクチン接種が効果があること、軽症者が多い=重症化しないわけではない、ということは、先行して拡大した海外ですでに確認されていました。感染者が拡大すれば自ずと高齢の感染者も増加し、医療現場が逼迫することは、これまでの経験で学んだはずです。

実際、すでに多くの病院で看護師の負担が激増し、高齢者の“介護”に翻弄されています。寝たきりの高齢者のおむつ交換をしたり、床ずれを防ぐために体を動かしたり、食事の介助などで人手が足りなくなっている。たとえ病床が空いていても、現場の負担感は危機的な状態です。それでも救えない命がある。数字だけでは見えない「現場の力」の影で、救えなかった命に苦悩しているのです。

14日の衆議院予算委員会で、後藤厚生労働大臣は、高齢者施設の利用者や職員への接種を、「できるだけ早期に終えられるよう最大限の努力をする」と繰り返しました。

最大限の努力──。これまで何度も、何度も、本当に何度も、この言葉を聞かされてきました。なぜ、2ヶ月前にその努力をしなかったのか。

「インフルエンザと変わらない」と豪語する人たちは、何を根拠に「変わらない」とするのでしょうか。検査キットも足りない、経口薬も足りない、在庫がどうなってるかもわからない。かたや、8000万枚もの大量の在庫となったアベノマスクは「送料10億円」だのとサラリと報じられている。10億あれば、都内のクリニックでPCR検査を3万3300回分はできる額であるにも関わらずです。

日本人って…なんでこんなにも怒らないんですかね。これも全て税金なのに。

そもそも「経済を回す」というけど、日本の没落は、コロナ前からすでに始まっていました。コロナでパンドラの箱があいただけなのに、「コロナ」のせいにしているだけではないのでしょうか。「数字」では見えない物事を本質を、考える力が今の日本には欠けているのかもしれません。みなさんのご意見を、ぜひ、お聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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