上昌広医師が緊急提言。日本のワクチン追加接種を“後ろ倒し”にすべき理由

2022.02.21
by 上昌広
 

では、今後、オミクロン株の流行はどうなるだろうか。英オックスフォード大学が提供するデータベース「Our World in Data」によれば、第6波の感染者数(人口100万人あたり、一週間平均)は、2月9日の750人をピークに減少に転じている(図3)。14日の感染者数は683人で、今後、急速に収束するだろう。高齢者や基礎疾患を有する人を除いて、急いで接種する必要はない。

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現在、我が国で議論すべきは春夏の流行対策だ。日本を含むアジアでは、過去2年間、コロナは、春夏冬、年に3回の流行を繰り返してきた。図4をご覧いただければ、コロナの流行に季節性があるのが一目瞭然でお分かりいただけるだろう。我が国で、昨年の春の流行のピークは5月14日、夏は8月25日だった。今年も、同じ頃に流行すると考えた方がいい。過去2年間、夏の流行は、春より大規模だったから、春より夏の対策を重視しなければならない。ところが、2月に追加接種を受ければ、春の流行は兎も角、夏には効果は切れてしまう。

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この状況は第6波と同じだ。昨年、我が国で高齢者の接種が本格化したのは5月だ。多くの高齢者が夏までに接種を完了した。現在、それから半年以上が経過している。このころに接種を終えた高齢者の免疫は既に低下している。このことが、オミクロン株の感染が拡大し、少なからぬ高齢者が犠牲となったことに影響している。

世界各国は、次の流行への対応に余念がない。効果については懐疑的な意見があるものの、イスラエルでは4回目接種が始まっているし、米ファイザー・独ビオンテックはオミクロン株用のワクチンの臨床試験を開始した。これまでの、日本のワクチン確保状況を考えれば、今夏までに4回目接種を始めるのは期待できないし、ファイザーがオミクロン株ワクチンの開発に成功しても、他国との獲得競争を制して、入手することは期待できない。

では、今、何ができるだろうか。追加接種を有効に活用することだ。私は春夏の流行に対応するには、4、5月に接種するのが合理的と考えている。オミクロン株の流行が峠を越えたいまこそ、追加接種の時期については、冷静な議論が必要だ。

 

上 昌広(かみ まさひろ)
医療ガバナンス研究所理事長。1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

image by: umaruchan4678 / Shutterstock.com

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