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三幸製菓火災で6人死亡。食品工場で起きた悲劇は防ぐことができた

売上高560億円を誇る米菓業界No.2メーカー、三幸製菓の荒川工場(新潟県)で火災が発生し、6人が死亡するという大惨事が起きました。報道によると以前からボヤを出すなど問題も多かったというこの工場火災を受けて、メルマガ『食品工場の工場長の仕事』の著者である川岸宏和さんが、 改めて自らの工場の再点検を促しています。 

食品工場の火災を受けて

消火器の置くものと一緒に置いてある場合がありますが、できれば、壁に消火器と掲示し、その前に消火器を置くことで、消火器がずらされた時でも、気がつくことができます。さらに、天井から、消火器、三角の赤いものを下げるなどで、遠くから消火器の位置がわかりやすくなります。

消火器の次は、避難経路の確認です。どの部屋からも、避難経路が、二方向あるかどうか、確認し、非常ドアが開くか実際に開けて確認します。場所によっては、非常ドアの外にシャッターがあって、すぐに開かない構造のところ、非常ドアの周りに、ゴミ、不用物があって開かないところもあります。

スーパーの玄関などには、カートなどが置かれ、すべてのドアが使えない場合があります。一般的には、ドアの前に買い物カートを置きがちですが、避難時には、邪魔になってしまうかもしれません。

2階、3階建ての場合は、非常階段に何も置かれていないことを確認する必要があります。非常階段の踊り場にも、何も置かないことが大切です。スーパーなどでは、消防の検査の時だけ、非常階段を綺麗に片付け、日常的には、踊り場が、在庫置き場になっている場合を多く見かけます。

2階、3階の窓には、窓から逃げることができる、避難梯子が必要です。避難階段から火が回ってきた場合、窓からしか逃げられない可能性があります。避難梯子、避難ロープがあるだけで、助かる可能性が増えます。

火事が起きた前提で、あらゆる避難方法の検討が必要です。特に、外が暗くなってから、火災が発生し、停電した場合、避難する方向、非常ドアが、わからなくなる場合があります。

死亡者を出した、新潟の食品工場では、避難誘導灯の不備を消防から指摘されていたにもかかわらず、火災発生時、工場内が真っ暗になり、逃げることが難しかったと、報道されています。停電になっても、しばらくは明るくなる蓄光灯などで、避難経路が明確になっているかの確認が必要です。

報道では、防火シャッターが自動で降りたあと、避難するための、ドアがわからなかったとされています。日常的な訓練と同時に、避難経路は、ある程度の明るさが保たれる、蓄光の構造が必要だと思います。

今回も、避難経路が確保され、訓練ができ、明るさが保たれていれば、最悪の結果は、避けることができたはずです。

天ぷらを揚げるときに発生する天かすを、網の上にためて置くと自然発火することは、フライヤーを使用する方の中ではよく知られていることです。同じように、焼き菓子のクズが溜まっている、オーブンのそばでも自然発火の可能性は多くあるものです。

熱を蓄えたものが、しばらく置かれていると、自然発火する可能性があります。フライヤーから出た天かすなどは、廃棄する前に、天かすの上に氷を乗せ、完全にひやしてから廃棄する必要があります。

同じように、ダクトの中の汚れ、オーブンの角のカスなどは、定期的に清掃し、汚れを取り除くことは、基本の基本です。

新潟の工場では、過去に何回もボヤを起こしてしたとされています。大きな事故を起こす前には、何度も小さな事故を起こしているという法則から学んでいれば、ボヤのうちに対策を立てていたはずです。

ボヤが起きたとき、消防署のチェックで誘導灯の指摘を受けたときに、素直に対策を取っていれば、死亡事故は起こさなかったはずです。

工場運営、組織運営は、従業員の安全が、基本の土台です。従業員の安全すら管理できない組織は、品質管理などは、全く行えない組織だと思っています。

避難経路の確認、火災を起こすことの可能性のあるところの確認、さらに、避難した時の、全員の安全点呼をどう行うかの確認、従業員の家族への連絡体制の確認、早急に再点検を行なってみませんか。

(無料メルマガ『食品工場の工場長の仕事』2022年2月17日号より一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

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【著者】 河岸宏和(食品安全教育研究所 代表) 【発行周期】 ほぼ 週末刊

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