ロシアのウクライナ侵攻に、日本国内にも衝撃が走っていますが、どこかこの「戦争」は自国には関係ないことだと思ってはいないでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、 ウクライナ人のアンドリー・ナザレンコ氏がウクライナがたどってきた道と日本を比較し、他国に防衛を委ねている日本にメッセージを送っています。
ウクライナの衝撃──国の防衛を他国に委ねる危険性
ロシアがウクライナに侵攻し、国際社会に衝撃が走っています。この危機は決して日本に関係ないことではありません。
2013年から14年にかけ、親ロ派政権の成立に反発するウクライナ人の学生デモが国中を巻き込む危機に発展、ロシアによる国土侵攻を招いた際に18歳だったアンドリー・ナザレンコさん。祖国を惇倫された経験を持つナザレンコさんが語る日本社会へのメッセージとは。
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侵略という恐ろしい体験をしてきた私は、日本の方が次のような発言をするのを聞いて非常に驚きました。
「軍隊をなくして隣国の脅威にならなければ攻められない」
「どんな争いも、平和を訴え、話し合いさえすれば解決できる」
「集団的自衛権を認めたら、他国の争いに巻き込まれるから危険だ」
こうした主張をする方々には、ぜひウクライナの辿った道を学んでいただきたいと私は思います。
ウクライナは核兵器を放棄し、100万人の軍隊を5分の1の20万人に縮小し、大国の対立に巻き込まれないよう軍事同盟にも一切加盟しませんでした。
さらに、兵器をロシアに譲る代わりにブダペスト協定書という国際条約を結び、ロシア、アメリカ、イギリス、フランスがウクライナを守るという約束を交わしました。ところが、その当事者であるロシアによって侵略されたのです。
他国との条約がいかに当てにならないものであるか、そして国の防衛を他国に委ねることがいかに危険であるか。ウクライナの失敗が、このことをハッキリと物語っています。
条約が破られたら国際社会が何とかしてくれる、と期待している日本の方は多いようです。しかし、ウクライナが侵略を受けた時に、一緒に戦い、守ってくれる国は一切ありませんでした。当時のアメリカはオバマ政権でしたが、ロシアの侵略を口先で批判するばかりで、具体的な行動は何も起こしませんでした。
ウクライナばかりではありません。チベットもウイグルも香港も、侵略や弾圧によって人々の自由が理不尽に奪われていることに対して、国連は批判こそしますが、行動は起こしません。
尖閣諸島はアメリカが守ってくれるから大丈夫、というのも危険な考え方です。アメリカが追求しているのはあくまでも自国の国益であり、いくら同盟国の領土であっても、自国の国益に合致しない限り行動を起こすことはありません。
以前出会ったある日本の方は、自分の息子が戦争で亡くなるのは嫌だから、アメリカ人が戦えばいいとおっしゃっていました。しかし、戦いもしない日本人の代わりに、アメリカ人が血を流して戦わなければならない道理がどこにあるのでしょうか。
(※ 本記事は月刊『致知』2021年5月号 連載「意見・判断」より一部を抜粋・編集したものです)
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