楽天モバイルが新CEO、新社長の就任を発表しました。新執行体制による狙いと課題について、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが解説。人口カバー率96%を4年も前倒して達成させた矢澤氏が、総務省とのパイプを生かしプラチナバンド獲得に力を発揮すると見て、この3月からの「楽天モバイルの本気」に注目しています。
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タレック氏がCEO、矢澤氏が社長に就任──人口カバー率96%達成で楽天モバイルが本気を出してきた
楽天モバイルが2月25日に「楽天モバイルの事業に関する発表会」を開催。代表取締役の異動および新執行体制が発表され、タレック・アミン氏がCEOに、矢澤俊介氏が社長になることが明らかにされた。筆者はすでに2月28日からスペイン・バルセロナで開催される「MWC 2022」に向けて渡欧中ということで、リアルの会見には参加できなかったが、スペインのホテルで早朝、ネットでチェックした。
「そもそも、なぜMWC直前のタイミングに会見を開くのか」とも思ったが、タレック・アミン氏がCEOになると決まった状態でMWCに参加したかったのだろう。楽天モバイルというか、ネットワークプラットフォームを世界に売っていく楽天シンフォニーがMWCでイベントを開催する予定であり、CEO就任を名刺代わりに、世界に楽天シンフォニーをアピールしていくのではないか。
三木谷浩史会長曰く「楽天シンフォニーですでに数千億円規模の売り上げが期待できる」ということで、このタイミングで一気にRCP(Rakuten Communications Platform)」で勝負をかけていきそうだ。
新社長の矢澤俊介氏はもともと楽天市場で実績をつくり、楽天モバイルでは全国の基地局敷設に尽力。楽天モバイルでは当初、基地局整備を外注しようとしたが、あまりの工期の遅さと金額に早々に方向転換。自社で基地局整備をしていくということで、楽天市場や楽天トラベルの社員を異動させ、自力で交渉に当たっていった。
計画を4年前倒して、全国96%の人口カバー率を達成した功績が認められて、矢澤俊介氏が社長になったと思われる。山田善久社長はどちらかといえば会社の設立における「顔」としての存在が大きかった感があるが、矢澤社長は、楽天経済圏といかにシナジーを発揮させるかに注力していきそうだ。
これまでの楽天モバイルは、ユーザーを増やしたくてもKDDIへのローミング接続料がかさんで赤字が増えるというジレンマに悩まされ続けてきた。しかし、人口カバー率96%を達成後、ローミングを打ち切っていけば、赤字の減少に繋げることができる。この3月以降、契約者を一気に増やしつつ、楽天経済圏とのシナジーをユーザーに提供できれば、さらに収益構造を改善することができるのではないか。
また、楽天モバイルとしては今後、プラチナバンドをいかに獲得するかが生命線となってくる。その点、矢澤新社長はこれまでも総務省との交渉に当たってきた。社長というポジションを生かし、総務省と交渉しつつ、世間に「欲しい」というアピールもできる立場を両立できるのではないか。
昨年8月21日にBUSINESS INSIDERで「最終赤字654億円でも楽天・三木谷氏が本気を出すのが3月からの理由」という記事を書いたのだが、まさに楽天モバイルはこの3月から本気を出していくことになりそうだ。
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image by:Ned Snowman/Shutterstock.com